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    EastBudTree

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    忘羨ワンドロワンライ「無邪気」より。
    座学後、雲深不知処渕炎上前です。

    一夜の苦難 どうしてこうなったのか、土砂降りの雨の音を聞きながら己の行動を反芻する。
     しかし、藍忘機には何も分からなかった。
     ただ一つ分かっているのは。
     本日、雲夢江氏の一番弟子と一晩この宿に泊まることになったと言う事実だけだった。

    1.

    「やはり私は外で野宿する」

    「なんでだよ」

     部屋から出て行こうとする藍湛に魏嬰は思わず静止をかける。
     魏嬰は扉の前で俯き何かを睨みつける藍忘機が固まったまま動かないのに首を傾げるが、そこから動かないのを確認すると肩をすくめて説得を試みた。

    「俺もお前も温氏の領地で困ってる人から相談を受けた。たまたま宿はここしかなくて、知り合いだと言ったら相部屋になった。それだけだろ」

     宿の部屋はさして大きいとは言えないが、二人が止まるに狭いというわけではない。問題はないだろう。

    「やはり私は野宿する」

     彼の一言一句変わらない科白に呆れて魏嬰はわざとらしくため息をついた。

    「せっかく屋根のある場所があるのに、わざわざ雨の中で野宿!俺が気にくわないのは分かるがいくら何でも正気を疑うぞ」

     そこまで言われて、ようやく藍忘機は無表情で魏嬰の方を見つめた。

    「君はそれでいいのか」

     じっと見つめる目に内心たじろぐも、何でもないようにおどけて見せる。

    「俺?まあそうだな。夜狩でタコ部屋に寝るのはよくある事だし、別に気にしないよ。江澄はいつも嫌がるけどな!」

     ははは、と笑う魏嬰に藍忘機はますます眉間にしわが寄ったが、それでも出ていこうとはしなかったので、魏嬰は気をよくして机をトントンと叩いた。

    「江澄たちがこちらに来るのはまだ時間がかかるし、外は雨でろくに調査も出来ない、せっかく座学ぶりに会うんだ、ゆっくり話でもしよう」

     そう言われてしまえば強く断ることも出来ず、藍忘機はしばし逡巡したようにじっとしていたが、魏嬰が叩いた机の方に数歩近づいた。

    「で、どっちが先に風呂入る?あ、それとも一緒に入るか」

     藍忘機はよろけて机に突っ伏した。




    2.


    「藍の公子様のために立派な風呂桶用意してくれてたみたいなのに、使わなくていいのか」

    「いい」

     藍忘機は風呂桶を運んできた宿の主人に丁重に断りをいれ、その代わり盥の湯と清潔な布で簡単に身を清めた。
     魏嬰もさすがにその横でゆったり湯につかることは出来ず、諦めて同じように布で身を清めることにした。
     その際、なぜか藍忘機が部屋の外に出てしまったので魏嬰は姑蘇藍氏はこれほど人との接触を嫌うのだろうかと、思わず関心をしてしまったのだった。
     しかしながら結局、話すといっても相手は藍忘機である、魏嬰がどれほど声をかけてもほとんどを無視で済ませるか、「ない」で済ませるかのどちらかである。
     最初はそれも楽しんでいた魏嬰であったが、次第につまらなくなり眠気が襲ってきた。

    「魏嬰、寝るならちゃんと寝台で寝なさい」

    「いや俺は床でいいよ。藍の若君が使えばいい」

    「そうはいかない」

    「なんで」

     どうやら真面目な藍忘機は自分だけが優遇されることが良く無いと考えたらしい。頑なに寝台を魏嬰に使わせようとし、自分はあくまで椅子で眠るという。
     魏嬰だとてそんな居心地の悪い睡眠は嫌だ。なにより藍の二公子と違って自分は酒に酔えばしょっちゅう床で寝ることもあるので、さほど気にはしていない。変な遠慮をされると此方がすこぶるやりずらい。

     あまりに頑固な藍忘機に頭を抱えたが、しばらくして此れはいいことを思いついたとばかりに魏嬰が唐突に藍忘機に微笑んだ。

    「それなら一緒に寝ればいい」

     藍忘機はまるでこの世の終わりのように顔を暗くして、はっきり、一音一音、正確に答えた。

    「ない」


    3.


     翌朝、気が付いたら魏無羨は寝台できっちりとした姿勢で眠っており、到着した江澄に起こされてようやく目が覚めた。

    「あれ?藍湛は?」

    「藍忘機?さあ知らないな」

     江澄は藍忘機の名前を聞いた瞬間、天敵を見つけたように声にとげがあったが、彼の姿を実際見ていなかったので正直にそう言った。

     乱れた髪を結いなおして魏嬰が部屋を見渡したが彼がいた痕跡をどこにも見つけられそうになかった。

    「あれえ?」

    「夢でも見たんじゃないのか、藍領から温領のここまではかなりの距離だぞ、奴が来るわけがない」

    「藍湛なら来るさ」

     それだけは分かる、という風に江澄にいうと魏嬰は寝台から飛び起き剣を握りしめた。

    「さ、出発するぞ。藍湛に先を越されちゃ意味がない」

     そう言って雨の上がった地を跳ねるように、魏嬰は藍忘機を追いかけた。





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