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    shirataki_himo

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    shirataki_himo

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    りお(真名リジオン、さふご)の文章

    労働「お待たせしましたぁ」
     申し訳程度にブロッコリーが添えられた質素なオムライスを持つ指には無意味な絆創膏が巻かれている。どこも痛くない、怪我もしていない、なのに体が包帯で覆われているのは此処が病み系アニマルコンカフェだからだからだ。
     ねこ、いぬ、ひつじ……オーソドックスな動物から蛇だのウーパールーパーみたいな個性的な動物がここのキャストにはそれぞれに割り振られている。最近はいよいよネタ切れなのかユニコーンみたいな現実に存在しないものも出始めた、けれどユニコーンを貰えた子はラッキーだと思う。正直うらやましいとも思っちゃいそうだけど、自分に割り当てられた”うさぎ”を僕は気に入っている。
     仕事ぶりはぼちぼちといったところで、このまま売上が良ければ専用メニューを開発してくれる、と店長は言っていた。別に上手く行って欲しい訳でもなかったのに。様々な事情で売上を伸ばさないといけない子程、仕事はうまくいってないみたいだった。お客さんと繋がろうとしたのがバレて辞職。裏垢で悪口言ってるのがバレて辞職。お客さんを取り合いになって、複数人一緒に辞職。
     たまに入れ替わりが激しくなる職場だった。同僚間のいざこざをを傍観し続けて、可哀相だと思ったこともある。けれど何をしたらいいのか分からない。だから何もしない。
     お金が無くて困っている子を一度だけお世話したというか、家を使わせてあげたり食事を奢ってあげていた時期があったけど、結論から言って失敗だった。何度もありがとうって頭を下げられて、りおくんが居てくれて本当に良かったって繰り返されていく内にいい感じになった、セックスもキスもした。好きだって思ったし、このままで居たいと願った。
     なのにある日突然「お金は自分でなんとかする、だから二人で一緒にちゃんと暮らそう」と言い出されて、その瞬間なんか冷めてしまった。あの子がどうしてそんな考えに至ったのか、どれだけ考えても分からない。広い家に住もうね、親御さんに挨拶に行こうと言われても全然分からなくて、今の部屋じゃ足りないのか聞いた。そういう訳じゃないって言われたけどどういう訳なのか分からなくて、お互いに混乱した。なんか違う、と別れを切り出した。言ったら泣かれてしまったりおくんなんで、頭おかしいよ、とうつむくその子に対しては、ごめんとしか言葉が出なかった。
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    Replies from the creator

    shirataki_himo

    PAST恐怖!何年前かわからない文章
    るりちぇり 初夏、うんざりする程の日ざしが肌をじりじりと照り向ける。気付かぬ間に肌を濡らしていた汗が、防水性の絆創膏をするっと避けて流れ落ちる。まだ夏は本番では無いというのに、この調子では来月の自分がちゃんと生きているかすら、ひどく不安になってしまう。

    「ねぇ、どうしてこんなに暑いんでしょうかね…」

    「知らなぁい……」

     きっちりまとめられたヘアアレンジから長く伸びている蒼髪が風に吹かれて揺らぐ。頼れる相方のヤヨイが動きを止めて、それはそれは暑そうに手を団扇みたいにして動かす。我慢強い方である彼女が愚痴をこぼすのは珍しい、きっとこの暑さには勝てなかったのであろう。
     それでも絶対に休んだりしないのはいつも通りだ。魔法少女としてのこだわりが強い故に、見つけた仕事は全てこなそうとする姿勢にはちょっぴり尊敬するけど、本当に無理をしていそうに見えるときがあるから直してもらわないとそろそろ困る。自分ならめぼしい報酬の依頼だけ受けて、他は全部無視するのにヤヨイは対照的に片っ端から受けていく。人助けにやりがいを感じる程まっすぐな人間ではないからと流しているが、いつも一緒に行動する相方として少々肩身が狭い思いをするのは、少なくはない。
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