「コーシくん……?」
柄にもなく弱々しく掠れた声で名を呼ばれ、誰もいない枕元に近寄る。
俺が一番乗りか。治じゃなくてごめんなと謝る。バレーの次に飯が好きな男が熱で食欲がないなんてかなりの重症。
「桃とりんごどっちがいい?」
買ってきたゼリーを両手で掲げて、そっちと指でさされた桃を、侑の熱っぽい額の上にわざと置く。
起き上がれないというので仕方ねぇなぁとスプーンで掬ったゼリーを食べさせてやり、美味しそうなので俺も一口ぱくり。
「うつるで」
「あ」
まぁうつせば早く治るっていうし。
「……うつしとけ」
俺は風邪薬とゼリーを一緒に口に含むと、病人の火照った唇の中にそれを流し込んだ。