文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day29 汐見の指先でくるりと回された白銀に声を上げたのはフェルマーだった。
「ねぇねぇ、それってさ。ヒロミとお揃い?」
くるくると回る白銀に輝くボールペンを指の中に納め、汐見は笑う。
「流石ヴィン、目敏いな」
旧式の練習機が収められた第三格納庫、その場に居るのはフェルマーと汐見だけで。日によって空閑や篠原、高師も足を踏み入れ今は飛び立つ事すら叶わない練習機の手入れをしている彼らは今日、それぞれに頼まれた仕事によって散り散りになっている。「そろそろ渡航するってのに、人遣い荒いよね」とは空閑の談だ。
フェルマーによる乱雑な文字に補足するように流麗な汐見の文字が書き足されたチェックシートをペン先でこつりと叩きながら「ヒロミの誕生日プレゼントに買ったんだけどな。俺も欲しかったから同じやつもう一本一緒に買ったんだ」
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