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    粥のぽいぴく

    @okayu_umaimai

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    粥のぽいぴく

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    HA11にて無配で置いていた龍神パロヴィクガスのお話です!

    とーにょさん(X:@kaka_kuma02)
    のイラストを元に話を書かせていただきました!
    元イラストや設定→(https://poipiku.com/7183189/10731194.html)

    折本のページ数に収めようとしたために、説明不足だったり触りしか書けていなかったりしますがよろしければ!もっとがっつり書いてみたかった〜!

    龍心 Ryu-Zing「おお、どうした? 今日はやけにご機嫌だな」
     そう言いながら、周囲を飛び交う立方体に笑顔を向ける若い男が一人。優しげな目元に紅を引き、整った顔立ちで笑うその様子は、見る者全員の心を一瞬にして奪ってしまいそうな不思議な魅力があった。
     体格もよく、誰もが羨むような見目の男——だが、一点だけその男には普通の人間にはないものがあった。
     それは、男の頭頂部から生えた二本の角——龍に生えている角と同じものが、その男には生えていた。そう、この男は人間ではなく、龍神であった。
     男に生えているその角は細めではあるが、綺麗な線を描いて力強く伸びている。だが、右側の角は根本から少し伸びたところで折れてしまっていた。龍神にとって、角は強さ、権威の象徴と言えるものだ。それが、このように折れてしまったとあれば、この龍神の立場が決して良くないことは明らかだった。
     
    「そう言う貴方も随分と機嫌が良さそうに見えますよ、ガスト」
     
     そんな若い龍神の男——ガストに呼びかけた男もまた、その頭頂部に立派な角を生やしていた。白銀の長い髪を三つ編みに纏めて、上等な衣服を身につけた男は作りのいい椅子にゆったりと腰掛けてガストの様子を見つめている。
     その男も、ガストに負けず整った容姿の持ち主であり、不思議な魅力を纏っていた。ただ、その男の角はガストの持つものとは違い、傷一つない太く、逞しい立派なものだった。それは、この男が龍神として地位が高いことを証明するのには十分すぎるものだった。
    「……ヴィクター」
     立派な角を持つ龍神——ヴィクターに声をかけられたガストは、先ほどまで顔に浮かべていた笑顔をスン、と引っ込めてやや訝しむような視線を投げかける。
     その様子に、ヴィクターは困ったように眉を下げて笑う。どうやら、ガストはまだ心を開いてくれていないらしい。
    「私のことは、まだ信頼できませんか?」
    「……別に、そういうわけじゃねぇけど」
     素っ気ない返事に、ヴィクターはやれやれといった感じで小さくため息をつくと、優しく手招きをした。ガストはその行動をしばらくその場で見つめた後、おずおずとヴィクターのもとへと足を進める。
    「ほら、飾りが絡まってしまっていますよ。直すので大人しくしていてくださいね」
     そう言うと、ヴィクターは愛おしそうにガストのまだ折れずに残っている角を撫でた。ガストに残された角には、折れてしまった角の見窄らしさを打ち消すかのように、上等な作りの飾りが着けられている。この飾りは、ヴィクターがガストに与えたものだった。
     
     ヴィクターがガストに出会ったのは、ヴィクターが人の姿になって、地上の様子を見に来ていた時だった。
     角が折れてしまったために、力を上手く使えなかったガストは角を収めることができなかった。そんなガストが人間に見世物のように扱われ、売られ買われを繰り返されていたところをたまたまヴィクターが見つけたのである。
     ヴィクターはその様子を見て、いても立ってもいられず、売られているガストを買い取った。その時には、既にガストは人を信じるということに怯えきってしまっている様子で、同族のヴィクターに対しても警戒心が強かった。今でも警戒心は残っているのだが、当時に比べたらだいぶ良くなった方である。
     ガストはなかなか角が折れた理由を話してはくれなかったが、それはヴィクターがガストを祀っている祠の様子を見ていて知ることができたのだった。
     ガストが角を折った理由は、普段から祠の側で遊んでいる子供が熊に襲われそうになっているところを助けたのが理由だった。咄嗟に飛び出したために、角を出したままの姿で身を挺して子供を守ったのだ。熊の攻撃による衝撃と、その後地面に叩きつけられた衝撃で自慢の角は折れてしまった。
     その後しばらく痛みで動けなかった間に、気づけばガストは人々に捕らえられていたのだ。人を助けて、人に傷つけられた経験は彼の心に深い傷を残しただろう。
     だが、ガストが助けた子供は毎日祠に来ては感謝と謝罪の言葉を告げに来るのだ。ヴィクターはその言葉で一連の出来事を把握した。
     角が折れてしまったガストはこの先地位を築くことは難しい。しかし、誰よりも神として在るに相応しいとヴィクターは思っている。そして、人に虐げられても、力を使って攻撃しようとしなかったガストを同じ龍神としてとても誇らしく思っている。
     
     どうか、誰よりも人を思いやれる、優しいガストがまた人を信じられるように、たくさんの愛情を注いでいこうとヴィクターは心に誓うのだった。
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    粥のぽいぴく

    DONEHA11にて無配で置いていた龍神パロヴィクガスのお話です!

    とーにょさん(X:@kaka_kuma02)
    のイラストを元に話を書かせていただきました!
    元イラストや設定→(https://poipiku.com/7183189/10731194.html)

    折本のページ数に収めようとしたために、説明不足だったり触りしか書けていなかったりしますがよろしければ!もっとがっつり書いてみたかった〜!
    龍心 Ryu-Zing「おお、どうした? 今日はやけにご機嫌だな」
     そう言いながら、周囲を飛び交う立方体に笑顔を向ける若い男が一人。優しげな目元に紅を引き、整った顔立ちで笑うその様子は、見る者全員の心を一瞬にして奪ってしまいそうな不思議な魅力があった。
     体格もよく、誰もが羨むような見目の男——だが、一点だけその男には普通の人間にはないものがあった。
     それは、男の頭頂部から生えた二本の角——龍に生えている角と同じものが、その男には生えていた。そう、この男は人間ではなく、龍神であった。
     男に生えているその角は細めではあるが、綺麗な線を描いて力強く伸びている。だが、右側の角は根本から少し伸びたところで折れてしまっていた。龍神にとって、角は強さ、権威の象徴と言えるものだ。それが、このように折れてしまったとあれば、この龍神の立場が決して良くないことは明らかだった。
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    粥のぽいぴく

    MOURNING執事カフェのガとヴィの話
    CP未満ではありますが、そのように見えるかもしれません。左右は特に明記していませんので、その場合はお好きな解釈でどうぞ

    相互さんへの捧げ物でした☕️
    「お帰りなさいませ、ガスト坊ちゃま、アキラ坊ちゃま」
     ヴィクターが手伝いをしていると聞いたカフェに赴き、店内に足を踏み入れるとガストは聞き慣れた心地よい低音に出迎えられた。しかし、聞き慣れない呼び名で呼ばれたことに衝撃を受け、一瞬その場で動きを止める。一緒にやって来たアキラに横から声を掛けられるまでの短い間、確実に意識はどこか遠くへ飛んでいたようだった。
    「ははっ、ガスト坊ちゃまだってよ。似合わねーな」
    「言われなくてもわかってるって」
     アキラからの言葉に苦笑しながらそう返す。正直アキラも人のことは言えねぇだろ、とガストは思いつつも、自分の似合わなさと比べるとそこまででもないか、と思ったことを胸にしまった。ガストは事前にSNSでこのカフェの評判を見たことがあったが、そこにはヒーローが執事として給仕してくれる事への物珍しさを綴った感想や、対応の素晴らしさ、執事が格好よかった、可愛かった、お出迎えから虜にされた、なんて意見が多く見られた。実際にお出迎えを体験した今、なるほど、これは確かに威力があるな、なんてどこか冷静に先ほどの衝撃をガストは思い返した。執事をコンセプトにしたカフェなのだから、客もそのように扱われるのは不自然なことではない。むしろ、予想できることであったはずなのに予想以上の衝撃を受けてしまったことに、ガストは自分でも少し驚いていた。
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