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    粥のぽいぴく

    @okayu_umaimai

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    粥のぽいぴく

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    ヴィクリーンに幸あれ
    ジャクリーンちゃんに眠気というものが存在するのか謎…電源オフにしたら寝られるとは言ってたけど眠気についてはどうでしたっけ………?

     今が何時なのかすらわからない状態で、疲労を溜め込んだ体を引きずるようにヴィクターはノースセクター研修チームの部屋に足を踏み入れた。
     ニューミリオン上空に謎の大穴が空き、太陽が消えたその日からHELIOS研究部のメンバーは総出で寝るまを惜しんで対応に当たっている。突如出現した大穴についてはもちろん、一連の事件に巻き込まれ、意識を失ったまま目を覚さないヒーロー、セイジ・スカイフォールの対応と、不可思議な現象に立ち向かう彼らの心身は日を増すごとに共にすり減っていった。
     そして、ヴィクターもまたその一人だった。ショートスリーパーだと自負している彼だが、ここ数日の疲労は凄まじく、体は長い睡眠を欲している。自室のベッドまで足を運ぶことすら億劫で、リビングのソファーにでも雪崩れ込もうかと足を進めたそのとき、ソファーの上の小さな存在に気がついた。
    「………お転婆…ロボさん…?」
     ソファーの上にぽつんと佇んでいる丸いシルエットを確認すると、ヴィクターは疲労による見間違いだろうかと思いながらも、ゆっくりと目を凝らして近づいていった。
     ソファーにたどり着いたヴィクターは改めてその存在を確認する。そこには思った通り、お転婆ロボさんことジャクリーンが目を閉じて座っていた。ヴィクターは室内を見渡して、状況を簡単に確認する。部屋も暗く、チームのメンバーも寝静まっていそうな状況から今はおそらく深夜であろうと予想できた。マリオンの部屋にいるわけでもなくここにいるということは、マリオンもこの事を知らないのだろうか?どうしてこんな時間にここに?迷子にでもなってしまったのだろうか?疲れた頭でそんなことを考えながら、ヴィクターはジャクリーンに視線を合わせるようにしゃがみ込むと、無意識にそっとジャクリーンの頭部に手を伸ばした。そっと撫でると、それに気がついたジャクリーンの目がゆっくりと開かれる。
    「あれ、ヴィクターちゃま…?」
    「こんばんは、お転婆ロボさん。ここで何をしていたのですか?」
     ヴィクターは状況を読み込めていないジャクリーンに優しく問いかける。ジャクリーンはというと、数秒ヴィクターの顔を見つめた後、急に何かを思い出したように立ち上がった。
    「ヴィクターちゃま!ごめんなさいナノ!ジャクリーン、ヴィクターちゃまに謝らないといけないことがあったノ!」
     ヴィクターはその予想外の行動と発言に驚きつつも、ジャクリーンと視線を合わせたまま、再度優しい声音で問いかけた。
    「落ち着いてください、お転婆ロボさん。貴方は私に謝りたいことがあってここにいたのですか?」
    「そうナノ…でもちょっとウトウトしちゃってたみたい…」
     そう言ってジャクリーンは再びヴィクターの顔をじっと見ると、申し訳なさそうな顔でぽつりぽつりと話し出した。
    「あのね、ジャクリーン、ヴィクターちゃまのアイスクリーム…食べちゃったノ…」
    「アイスクリーム…ですか?」
     またしても予想外の内容に、ヴィクターは困惑するが、大人しくジャクリーンの言葉の続きを待った。
    「パパやヴィクターちゃまの差し入れにマリオンちゃまとジャックとハニートーストを作ってたんだけど、アイスクリームがとっても美味しそうだったカラ…ついパパの分をつまみ食いしようとして、ジャックに注意されちゃったノ…」
     ジャクリーンの話を聞きながら、ヴィクターは先ほど食べたハニートーストのことを思い出す。疲労困憊であったため、細かい見た目や味なんかは覚えておらず、ただ甘かったこととやけに量が多かったことしか記憶にないが、おそらくそれについての話なのだろうと推測した。
    「そしたら、マリオンちゃまがヴィクターちゃまの分のアイスクリームを食べていいって言ってくれて…ジャクリーン、嬉しくて全部食べちゃったノ…ヴィクターちゃまも疲れてて大変なのに、アイスクリーム…食べちゃってごめんなさいナノ…」
     そう言って目線を下げてしまうジャクリーン。犬や猫のように垂れることはない彼女の耳の部分が、心なしか垂れているように見える。ヴィクターはそんな彼女の様子をどこか温かい気持ちで見つめていた。
    「なるほど、そうだったのですね。ですが気にする必要はありませんよ。私にとってはアイスクリームが無いハニートーストで充分でしたし、甘い物を摂り過ぎるのも良くないですから」
     そう宥めるようにジャクリーンに声をかけると、下を向いていたジャクリーンの視線が再びヴィクターと合う。
    「ホント…?ヴィクターちゃま、アイスクリームが無くて元気がなかったりしない…?」
    「えぇ、大丈夫ですよ。それにアイスクリームまで乗っていたら完食が難しかったかと思いますので…むしろ助かりました。ありがとうございます」
     その言葉を聞いて、ジャクリーンの目が弧を描いた。
    「えへへ、それなら良かったノ!ヴィクターちゃまの元気がなかったらどうしようってずっと心配してたノ」
     ぱっと花が咲いたような笑顔で安心した様子を見せるジャクリーン、その笑顔にヴィクターの気持ちも自然と明るくさせられる。
    「ご心配いただきありがとうございます。それで、アイスクリームは美味しかったですか?」
     ヴィクターは元気を取り戻した様子のジャクリーンに優しく微笑むと、彼女にアイスクリームの感想を尋ねた。それにジャクリーンはぴょんと跳ねて返答する。
    「と〜っても美味しかったノ!アイスクリームを食べて、ジャクリーンたくさん元気が出たノ!!」
     その言葉を聞いて、ヴィクターの心はまた一段と温かくなる。
    「そうですか、ロボさんたちも今は色々と大忙しでしょうし、元気になっていただけたのならよかったです」
     そう言ってヴィクター慈愛に満ちた目でジャクリーンを見つめる。気恥ずかしくて口にはしないが、ヴィクターにとってはアイスクリームよりもこうして元気な彼女の姿を見る方が何倍も疲労が取れる心地がするのだ。

    「それではお転婆ロボさん、もう遅いですし、そろそろ寝ましょうか。申し訳ありませんが、今はラボまでお送りする気力がないので、このままこちらにいていただいてもよろしいですか?」
     ヴィクターは眼鏡を外し、眠気に耐えられなくなってきた体をソファーへと横たえると、今にも瞼が閉じそうなのを耐えながらジャクリーンに声をかけた。
    「はいナノ!ヴィクターちゃま、おやすみなさいナノ!」
     ジャクリーンは静かにそう言うと、そっとヴィクターの頭を撫でた。ヴィクターはその心地よい感覚に身を任せ、ゆっくりと眠りに落ちていった。
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    Replies from the creator

    粥のぽいぴく

    MOURNING執事カフェのガとヴィの話
    CP未満ではありますが、そのように見えるかもしれません。左右は特に明記していませんので、その場合はお好きな解釈でどうぞ

    相互さんへの捧げ物でした☕️
    「お帰りなさいませ、ガスト坊ちゃま、アキラ坊ちゃま」
     ヴィクターが手伝いをしていると聞いたカフェに赴き、店内に足を踏み入れるとガストは聞き慣れた心地よい低音に出迎えられた。しかし、聞き慣れない呼び名で呼ばれたことに衝撃を受け、一瞬その場で動きを止める。一緒にやって来たアキラに横から声を掛けられるまでの短い間、確実に意識はどこか遠くへ飛んでいたようだった。
    「ははっ、ガスト坊ちゃまだってよ。似合わねーな」
    「言われなくてもわかってるって」
     アキラからの言葉に苦笑しながらそう返す。正直アキラも人のことは言えねぇだろ、とガストは思いつつも、自分の似合わなさと比べるとそこまででもないか、と思ったことを胸にしまった。ガストは事前にSNSでこのカフェの評判を見たことがあったが、そこにはヒーローが執事として給仕してくれる事への物珍しさを綴った感想や、対応の素晴らしさ、執事が格好よかった、可愛かった、お出迎えから虜にされた、なんて意見が多く見られた。実際にお出迎えを体験した今、なるほど、これは確かに威力があるな、なんてどこか冷静に先ほどの衝撃をガストは思い返した。執事をコンセプトにしたカフェなのだから、客もそのように扱われるのは不自然なことではない。むしろ、予想できることであったはずなのに予想以上の衝撃を受けてしまったことに、ガストは自分でも少し驚いていた。
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    粥のぽいぴく

    MOURNING相手の気持ちを知った上で自分に本気になるなって言うヴィクが見たかった。その結果相手を焚き付けちゃう展開も見たかった。書けたのかはわからない。
    付き合ってません。一応ガスヴィクのつもりで書いてます。
    「おや、珍しいですね」
     ノースセクター研修チームのリビングにて、ローテーブルの上に置かれたワインボトルと、ワイングラスを手に持ったメンティーの姿がヴィクターの目に留まった。思わず声を漏らすと、その声に気がついた彼のメンティー、ガストはお酒が回り始めているのか少し高揚した様子でヴィクターの方を振り返る。
    「お、ドクター。今戻ったのか?」
     遅くまでお疲れさん、と労いの言葉をかけながら、ガストはソファに沈み込ませていた背中を起こし、手に持っていたグラスをローテーブルに置いた。ヴィクターはリビングの奥へと足を進めガストの側に寄ると、改めてローテーブルの上に視線をやる。そこにはぱっと見ただけでもなかなかに高価そうだとわかるワインボトルに、それが注がれた一人分のワイングラス、ボトルの中身がまだそれほど減っていないところを見ると、まだ飲み始めてからそれほど時間が経っていないように推測できる。時刻は既に午前一時を回っており、普段のガストならもうベッドに入っていてもおかしくはない時間だ。そうでなくとも、この時間帯に部屋ではなくこうしてリビングにいることは非常に珍しい。
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