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    erosimeji

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    グランクレスト『業の研鑽』のネタバレがあります

    本編直後のディザイア背の高い草は朝露に濡れて刃のように光る。大きな図書館があるという街へむけ道なりに歩いてきて数日、交代で見張りをしながら夜を明かすのにも随分慣れたと思う。もっとも自分の魔法師はやはり研究者気質であるためか硬い土の上で眠ると体が痛いと時折零すので、少しずつ見張りをする時間を代わってやっているのだが、気付かれたらまた臍を曲げられてしまうかもしれないので配分を慎重に考えなくてはならないだろう。
    そんなことをぼんやり頭の隅で考えながら、焚き火のむこうに広がる平原の際で、空との境目がじんわりと白く滲むのを眺めていた。霧ばかりが乳を溶かしたように濃く、その向こうに太陽のわずかな白光と、夜の名残りの赤紫色が、薄く透けて見えるようだった。
    ふと、これとよく似た髪の色をした、邪紋使いの男のことを思い出した。死人のような肌と色素の薄い髪は、霧中の薄明によく似ていたように思う。
    (ああ、でも、そうか)
    それは真実、彼ではないのだった。彼は実際のところ燃える山の麓でとれる艶やかな黒石のような髪を持っていたし、肌の色も健康的な範疇で、自分が見たのは彼の人生にとって長い悪夢の中での姿に過ぎないのだった。
    (でも)
    そうと判ってはいても、やはり連想を止めることはできなかった。自分にとって彼はこの薄明の、霧の奥から薄ぼんやりとこちらを照らす光であり、厚く美しいが白く曇った磨り硝子であった。それが真実の彼でなくとも。
    焚き火のいちばん下で踏ん張っていた太い炭がぼくりと折れた。炎が弱まっていくのを感じながら、ゆっくりと目蓋を下ろした。その裏に描かれるのは、やはり白く、血の気の引いた、死人のような顔で快活に笑う彼であった。それが自然であると思った。
    我々は、悪夢の中で出会ったのだから。
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