🤕「キスする場所は都度ハコの中から与えられる?」
🔮「自分で決められないのか……」
🤕「まぁ他の連中の話を聞く限り、キス程度で済んで御の字だろ」
🔮は、苦々しい表情でチッと舌打ちをする🤕を見て、随分あっさりと受け入れたな、当然だけど意識されていない……盛大に拒否されるよりはマシか……と思う。
🔮「そう、だね。確かに🧲とかはもっと酷い……いや、彼の話は置いておいて……私が先に引こうか?」
🤕も、混乱し項垂れている🔮を見て、この幸運に僅か喜びを覚えた自身に罪悪感を感じる。
🤕「いや、俺が先に引く」
黒い函に🤕が手を近付けると、函の穴に手を入れるよりも先に中から紙片が舞い上がり🤕の手に収まった。そこに書かれた文字を見た途端、🤕はグシャリとそれを握り潰す。
🔮「🤕?」
🤕「……クソが……」
🔮「な、何て書いてあったんだい?」
恐々と訊ねてくる🔮に🤕が仕方なく口を開く。
🤕「"breast"」
🔮「胸か。まぁ、別に……」
🔮よりも頭一つ小柄な🤕は少し屈むだけで🔮の胸に唇を当てることができる。
無意識にフードを深く被り直した🤕は、質素な生地と寂しさを唇に感じた後、🔮から離れた。
🤕「次は🔮だな」
しかし🔮が函から紙を受け取ると、そこには部位の代わりに注意文が記されていた。
🔮「えっ」
🤕「なんだ?……キスは素肌に対して行うこと?」
🤕の口からは再び舌打ちが出る。
🔮「仕方ないね……ごめん🤕嫌だと思うけど」
🤕「いや、お前のせいじゃないし別に気にしない」
服の袷から現れた🔮の胸に生唾を飲み、慌てて咳払いで誤魔化した🤕が、再度🔮の胸にキスを施す。今度は安っぽい布ではなくしっとりとした人肌を一瞬だけ感じた。頭上から落ちてきた🔮の詰まった吐息に身体が焦燥する。
🤕から逃れるように襟を直した🔮が次のクジを引く。
🔮「fo,"forehead"」
良かった、変な箇所でなくて、と思う🔮。
🤕「額な」
特に躊躇もせずに🤕がそのフードを脱ぐ。ゲーム中にフードが脱げているところは何度も見たことがあったが、こうやって自らフードを脱いでいるところを見るのは初めてで、まだ何もしていないのにドキドキする🔮。
🔮「し、失礼します……!」
🤕「なんだそりゃ」
ガチガチの🔮にフッと🤕が笑う。🤕が笑った雰囲気に気が付いて、あぁ今の顔見ておけばよかった、と屈んで🤕の額に唇を宛がいながら🔮が思う。
🔮に続いて、🤕が函に手を伸ばす。
🤕「次は、と。……!!」
またしても、そして今度は鬼の形相で紙をひしゃげさせる🤕。
🤕「…………!」
ポトッと🤕の手から紙が落ちた。拾い上げた🔮が見れば、そこにあった文字は"botty"。
🔮「ヒエッ」
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(しばらく美味しい草をお楽しみください)
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「ははっ……」
「ハハ……」
二人共、もうどうにでもなれの気持ちである。
🤕「次は何処だ……」
🔮「今のよりはマシだよきっと。えーと、"hair whorl"」
🤕「旋毛?また頭か」
🤕の頭部が再度露わになるところを見て、やっぱりいい~!!となる🔮。
🤕は自分の頭にキスをするために少しだけ背伸びをする🔮を可愛いと思った。
🤕「……"eye"?」
🔮「目?目蓋ではなくて?」
🤕「そのようだな。衛生的に良くないが……」
「衛生」などとは言ってみたが、🤕は🔮の目を暴くことに動揺した。ゲーム中に一度だけ、一瞬だけ見たことがあるあの目。何故か先程よりも更に心臓が煩く痛かった。しかし、そんな🤕の胸中とは裏腹に、🔮はあっさりと目隠しを取り外した。
🔮「少しくらい大丈夫だろう」
🤕「……」
🔮「🤕?」
呆然と自分を見つめる🤕を心配する🔮。🤕はハッとして、自分の心臓を握り潰しそうな青を視界の端に追いやる。親指で🔮の目蓋を軽く押さえながら、舌で濡らした唇を刹那だけ触れさせた。
🔮「"cheek"」
またもや🤕が被り直していたフードを脱ぐ。
🤕「フードの中ばっかりだな」
🤕はこの状況下で自分の顔を見せたくなくて、しつこくフードを被っていた。
🔮「偏ってるね……」
🤕「?どうした?……さっきのと比べたらもうどうでもいいだろ」
🔮「そ、そうだね」
とはいえ、至近距離の🤕の顔にドギマギする🔮。額にキスした時よりも唇同士が近くて全身がゾワゾワするような緊張に襲われる。🤕も自分の唇の近くで鳴ったリップ音にピクッと肩を揺らした。
🤕「......"ring finger "」
🤕は🔮の手袋の下に指輪が無いことを知った。
🔮「”right palm”」
🤕「ん」
🔮は🤕の指先が存外冷たいことに気が付いた。
🤕「漸くラストか」
🤕がフーッと息を吐く。
そして、もう巫山戯たクジは引きたくない、という🤕の願いに反し、最悪の文字が紙面には踊っていた。
🔮「🤕……?」
先程より酷な引きなど無いだろうに、🤕の顔はグシャリと苦しそうに歪んでいた。
🔮「🤕、」
🤕「"lip"」
🔮がポカンとする。しかし、🤕から渡された紙片には確かに「唇」と書かれているのを見て、今から🤕にキスされることを理解した。
顔を酷く顰めている🤕を見て🔮はもうひとつ理解する。何が拒否されていなくて良かっただ、と。この状況では拒否できないだけじゃないか、と。
🔮「……🤕」
🤕「🔮……」
🔮「ごめんね。でも一度だけ、一瞬だけでいいんだ」
🤕「だからお前が謝ることじゃないだろ……お互い様だ」
そう言って、「何がお互い様だ」と自嘲しながら🤕は🔮にキスをした。5つのキスの中で、ほんの一瞬だが長いキスだったかもしれない。
🔮「……私だね。最後は……ハッ」
泣きそうな顔で嗤笑の息を吐く🔮が引いたクジには"lip"と書かれていた。
🔮「ごめん、もう一度だ🤕」
🤕「お互い厄日だな、今日は」
これでやっと終わりだ、と二人の唇が重なろうとした直前、
──ピーッ!ピーッ!ピーッ!
函から警告音のような音が鳴り響き、紙片が飛び出した。
🤕「あ?」
🔮「え」
*********************************
【エラー】
条件達成不可のためルールを変更。
対象者が相手にキスをしたい部位に重なりが生じたため、占い師の選択肢を追加。
*********************************
🤕「あ??」
🔮「え?」
相手にキスをしたい部位……?二人は困惑した顔を合わせる。
だがそして、自身が引いた「クジ」の内容を思い出せば、心当たりしかなかった。
🤕「……」
🔮「……」
お互いの顔がジワジワと赤くなっていくところを無言で眺め合うしかなかった。つまり、あれは、今までの相手のキスは。
🔮「つっいか選択肢って、何だろうね!?」
どもりながら大声で話す🔮。
🤕「6番目にキスをしたい部位とか?ハハ……」
無駄に笑って見せる🤕。
🔮「ハハ……」
そうでないといいのだが、きっとそうだろう。こうなった今変な部位が出て引かれたらどうしよう……と思いながら、ええいままよと🔮がクジを引くとそこには"groin"と書かれていた。ドッと汗が噴き出す🔮。
🤕「グロイン……グラウイン?何だ?」
あまり使う言葉ではないからだろう、🤕はこれがどこを指しているか分からないらしい。
🔮「あの、ぅあ、ごめんなさい……」
🤕「何処なんだ?」
🔮「その……」
🤕「……🔮、恥なら俺の方がかいたぞ」
あぅあぅと口ごもる🔮に🤕が己の傷口を差し出す。何と言っても🤕が引いたのは──キスしたかったのは尻に胸に左手の薬指だ。🔮が自分以上の恥を秘めていることはないだろう。
🔮「その、これは脚の……付け根のことで……」
🤕「あ、脚の付け根……?」
🤕は困惑しながらもトップスを捲り上げ、腰を晒す。
🤕「ここら辺か?」
🔮「えっ、と、その、もうちょっと下かな……」
🤕がパンツを少し下げる。が、🔮は首を横に振る。
🔮「すみません……」
🤕「何処なんだ、指さしてくれ」
🔮が震える手でそこ──鼠径部に触れた。
🤕「……際どいな」
🔮「……ごめん……!」
🤕「目ぇ瞑、らない方がいいか……」
あらぬ箇所にぶつかったり、あまつさえキスされては困る。🤕は両手でグッとギリギリまで下着ごとパンツを下げた。
🤕「これでいいか?」
🔮「ひゃいッ……!」
ちゅ……と少し濡れた唇と吐息が当たり、腰にゾクゾクしたものが走った🤕が耐えるように唸る。直ぐ様お互いに離れると同時に、キィ……と部屋の扉がひとりでに開いた。
🔮「……じゃっじゃあ、私部屋に戻、」
足早に逃げようとする🔮の腕を🤕が掴む。🔮が振り返ると、🤕はもう片方の手でフードを目深に被り直している。
🤕「キス」
🔮「へっ!?」
🤕「……ちゃんとしなくていいのか」
🔮「……!!し、します……!」
🤕は、コイツの肌ってこんなに赤く染まるんだな、と自分の顔の熱を無視して思った。
10のどのキスよりも長いキスが落とされる。
🔮の「鼠径部にキスしたい」は特に意味はなく、ただのフェチです。
きちんと付き合った後に🤕から吐かされます。
あと🤕は言葉を変えましたが、胸へのキスは"breast"ではなく"heart"と書かれていました。