赤い糸「運命の赤い糸って知ってる?」
後ろに並んだ少女たちの噂話に興味を引かれて、フィリップはぼんやりと耳を傾けた。
昼食を買いに出た帰り、書類の山に阻まれて事務室から出る事が叶わなかった彼が喜ぶだろうかと立ち寄った、テント前のポップコーンの店でのことだった。
どれだけ食べても食べ飽きないそれは団員たちからの人気も高い。キャラメルの甘い匂いが鼻を操り、同時に風に乗った話し声がフィリップの耳に届いた。
紙袋に流し込まれたポップコーンを受け取り、軽い挨拶を交わしながら事務室へと向かう。
面白い話を聞いた。
彼に話せばまたひとつ新たなアイデアが生まれるかもしれないと思いながら、上機嫌で見慣れた扉を開いた。
「フィリップ!」
1021