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    minamidori71

    @minamidori71

    昭和生まれの古のshipper。今はヴィンランド・サガのビョルン×アシェラッドに夢中。

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    minamidori71

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    ビョルアシェ。春の出航に向けて、イェリングの市場へ買い出しに訪れたふたりの話。あいかわらず、同衾前提の話になっていますが、後半に一瞬出てくるのみなので、警告入れません。今回は、気の合うふたりの会話を書くのが課題でした。なお、固形石鹸の登場は12世紀だそうです。今回出てくるのは、あくまで過渡期のものということでひとつ。
    最後の部分が、現パロになっています。幸せなビョルアシェを愉しみたい方向け。

    #ヴィンランド・サガ
    vinlandSaga
    #腐向け
    Rot
    #ビョルアシェ
    byelorussia
    #アシェラッド
    asheraad
    #ビョルン
    bjorn

    君よ知るや南の国 冬の間、村を覆っていた雪の下から土と水仙の芽がのぞき、街道を往来する乗り物が橇から馬車に変わるころ、いつものように窓辺で頬杖をついたまま、彼が言う。「そろそろか」、と。
     彼とふたりで三ヶ月、巣ごもりするようにゴルム邸の離れで暮らす日々は終わり、出航の準備にかかる時が来た。名残惜しくないといえば嘘になるが、この準備のための小旅行を、毎年ビョルンは心待ちにしている。なにしろ行き先はイェリング、日の出の勢いのデンマーク王国の都だ。しかも春の到来を前にした今、イェリングの市場は俄然活気づく。遠方からやってくる異国の商人たちが増えはじめ、掘り出し物が見つかりやすいのもこの時期なのである。
     その日も朝から塩漬け肉やら干し鱈を買い込み、旅籠の奉公人に荷物の番を頼むと、ビョルンは市場にさまよい出た。アシェラッドはすでにふらりと姿を消している。昼食を食って村に戻ると決めているので、正午の鐘が鳴るまでは何をしても自由だ。
     まずは下履きと靴下の替えを買い、そのあとは気ままに、市場のあちこちをぶらぶらと歩き回る。船上の暮らしが身についたせいで、物欲などほとんどないが、とにかく観て歩くだけで愉しいのだ。食料はもちろんのこと、武具に鍋に衣類に装飾品、この市場で扱っていないものはないし、客も商人も、実にさまざまな顔ぶれを拝める。
     ――へえ、あいつらも早いな。
     頭にぶ厚くターバンを巻き、反りの深い三日月型の短刀を帯に差しているのは、東方から来るサラセンの商人たちだ。香辛料のほかにも、絹や毛のめずらしい織物を扱っていて、貴族の館にも出入りしている。夏の間はキエフを経由し、バルト海に抜けて来る者もいるが、今の時期にここまで来ているのは、おそらくイベリア半島回りの航路で来た者だろう。
     ――ノルド人のなかには、みずからイベリア半島の向こうまで乗り出していって、サラセンの連中と直接商いをするヤツもいるらしいが……。
     せいぜいフランク領のボルドーあたりまでしか行ったことのないビョルンにとっては、及びもつかぬ話だ。海はつながっているのだから、行こうと思えば行けないことはないのだが、正直想像が追いつかない。
     ――ことばはどうするのだろう。衣服は、食い物は? 
     そんなことをあれこれ考えていると、見慣れたあわい金髪の頭がターバンの向こうに見え隠れして、ビョルンは思わず歩みを止めた。
     見つめる視線に、アシェラッドもすぐ気づいたようだ。片方の眉だけ大きくもたげるいつもの笑みに、ビョルンは吸い寄せられるように人波を掻き分ける。彼がいるのは、やはりサラセン商人の店先であった。愛用の月桂樹の香油をいつもそこで購めているのは知っていたが、今彼が掌に載せてためつすがめつしているのは、乳白色の四角い塊である。
    「なんだ、それ」
    「石鹸だとさ」
    「石鹸? それが?」
     思わず大きな声を上げてしまった。
     ビョルンの知っている石鹸といえば、獣脂と灰を煮詰めて作る、どろりとした粥状のものだった。しかしアシェラッドが今手にしているものは、石ほどではないもののかなり硬そうである。しかもあの、鼻の曲がりそうな臭いもしない。ほのかに油っぽい匂いはするが、どうも牛の脂などとは別のもので作られているようだ。
    「どうです、驚くでしょう? あたしの故郷の街で最近作りはじめたんですよ」
    「あんた、故郷は?」
    「レバノンはサイダでさ」
     ビョルンの問いに、流暢なノルド語でサラセン商人が答える。レバノンがよくわからずにいると、アシェラッドが板の上に、指先で地中海の地図をおおまかに描いてみせた。東の端をとんとんと叩き、このへん、と言う。覗き込んでいた商人が、感嘆の声を上げた。
    「さすが旦那。よく知っていなさるね」
    「そりゃまア、オレだって船乗りだからね。しかしやはりあんたがたの国は、段違いに技術が進んでいるな」
    「いや、あたしらの故郷でも、石鹸といえば旦那がたもご存じの、あのどろっとしたやつなんですがね。ごく最近、こういうのを作りはじめた店があるんですよ。ただ、作り方は店主の秘密で、どんなに訊いたってやっこさん、絶対口割りゃあしません。しかも大量生産するには、まだ技術が安定してないそうで。でも旦那みたいにお目が高い方には、きっとお気に召すと思ってね。ちょっとだけ買い付けて、持ってきたって訳でさ」
     ――ずいぶんとまあ、口の達者なヤツだな。
     ビョルンは感心して、立て板に水の勢いで喋るサラセン商人の口上を聞いている。こんな北の果てまで、命を懸けて商売のためにやってくるのだから、肝が据わり知恵も回る男なのだろう。もしかしたら、アシェラッドはそんなところを気に入って、この商人を贔屓にしているのかもしれない。そういえば油断のない目つきや口調が、よく似ている気がする。きっといつもは、丁々発止のやりとりで値引き交渉などしているのだろう。
     しかし。
     ――今日はあんた、分が悪そうだな。
     ちらりと横目で様子をうかがい、めずらしい光景に思わずほくそ笑んでしまう。アシェラッドはあいかわらず、珍品だと商人が力説する、例の石鹸をひねり回していた。たかが石鹸にこれほど執着するのは、身だしなみに人一倍気を遣う彼だからこそなのだろう。だが、やり手と評判のサラセン商人の前で、こんなそぶりを見せるのは危険だ。案の定、向こうはとっくにそれを察知して、畳みかけてくる。
    「どうです? お気に召しましたでしょ」
    「まあ、ね。しかしもうちょっとこう、工夫をこらせばいいものになるんじゃねェか。たとえばほれ、あんたらの好きな沈香を混ぜるとか」
    「おっ、さすがは旦那、目の付け所が違いまさ。でもね、沈香はさすがに高価すぎて、小商いの石鹸屋には手が出ませんよ。ただ、月桂樹の油を使ってみようって話は出てるそうで。そう、旦那のお好きな月桂樹。もっとも油っていっても、精油じゃなくて実を煮詰めて採る油なんですけどね。それを使うと、石鹸がきれいな緑色になるんですよ。この石鹸はオリーブの油から作られてて、それだけでもじゅうぶん良品なんですが、月桂樹が入ると全然違いまさ。肌あたりがやわらかくてね」
    「……ほう」
    「大量生産に成功したあかつきにゃ、必ずイェリングにも仕入れて持ってきますよ。だから旦那が買ってくれると、あたしらとしちゃあ、大助かりなんですけどね」
    「よし、買ってやろうじゃアねェか。四個くれ」
    「毎度あり!」
     ――おいおい、言い値で買うのかよ。しかも四個も!
     今朝買った干し鱈の樽ひとつと、石鹸一個が同じ値段というのは法外にもほどがある。しかし値下げ交渉もせず、アシェラッドは気前よく銀貨を差し出してしまう。石鹸と一緒に、なにやらほかにも買ったものをまとめて革袋に入れて渡され、彼は店を後にする。上機嫌だ。
    「……あんたがこれほど、新しもの好きとはな」
     つい小言めいたことを言ってしまうと、彼はいつもの流し目をこちらにくれて、鼻で笑ってみせた。ビョルンがそんなことを言うのもお見通しといった様子である。
    「お堅いこと言うなって先生。この市場に来る楽しみっていやァ、目新しいもん探すことだろ。それにこれはオレの稼ぎで買ったものだ。お前に文句言われる筋合いはねェよ」
    「でも、ちと高すぎねェか」
    「未来投資ってやつだな。ま、オレが生きてる間に、この石鹸の値が下がることはないかもしれねェが」
    「だったら、なおさら」
    「もっと視野を広く、先まで持て、ビョルン。人間の歴史ってのは、そうやって続いてゆくもんなんだぜ」
    「……」
    「あのサラセンの連中は、ギリシアやローマの叡智を受け継いで、さらに洗練させている。退化するんじゃなくて進歩するなら、オレは大歓迎だね。いくらでも、応援してやろうじゃねェの」
     言いながら革袋から例の石鹸をひとつ取り出し、胸元に押しつけてくる。こんな高価なもん受け取れねェ、と困惑して言うと、いいから取っとけと無理矢理握らされた。
    「……もしかして俺、臭うか?」
    「考えすぎ。お前はいつも身ぎれいにしてるだろ。でも、最先端の技術に触れれば、視野も広がる」
    「そういうもんかねえ」
    「そういうもんさ」
     なんだか丸め込まれたようだが、悪い気はせず、ビョルンは手の中の石鹸に視線を落とした。
     石鹸の六つの面のうち、一つに刻印が押してある。銀貨に刻まれているものと同じ、みみずののたくったようなサラセンの文字だ。デンマークやイングランドよりもはるかに文明の進んだかの地。きっとことばだけではなく、気候も食い物もまるで違うのだろう。そう思うと、にわかに興味が涌き起こってくる。
    「なあ、アシェラッド」
    「んー?」
    「サラセンの地には、俺たちの知らねェもんがいろいろあンだろうな」
     ほう、と声を上げて、アシェラッドが歩みを止める。見上げる怜悧なひとみの奥に、小さな光がきらめいていた。
    「興味あンのか、ビョルン」
    「まァな」
    「略奪遠征には、ちと遠いぜ? それに連中の技術は進んでる。ノルドの海賊船なんざ簡単に蹴散らすような武器を開発しているかもしれん」
    「いや、そんなんじゃなくて」
    「じゃあ、なんだ。まさか商いをしてェとか?」
    「……悪ィかよ」
     アシェラッドは顎をひき、神妙な表情で、しばらくじっとこちらを見つめていた。
     柄にもねェ、と笑われるかと思った。しかし彼は、ビョルンの本心を見定めるように、黙している。彼のこの視線は恐ろしくもあるのだが、今日はなぜか背中を押されるような心持ちがして、ビョルンは意を決して口を開いた。今なら思っていることを、包み隠さず言ってしまえる気がした。
    「もし……ジジイになるまで生き延びて、戦場には出れねェが船には乗りたい、そんな気持ちになったときは……行ってみねェか、サラセンの国に」
    「……」
    「俺らだって戦利品を売って、銀に換えたりしてる。商いとまるで無縁だった訳じゃねェだろ。サラセン商人はきっと、ノルド人とは全然違う南方の世界を知ってるだろう。そういうヤツらと会って、話をしてみるのもおもしろいんじゃねェか。冥土の土産話くらいにはなる」
    「冥土、ね。ビョルンお前、ヴァルハラに行きてェのと違ったか?」
    「ジジイになってまでヴァルハラはねーよ」
     思ってもみなかったことばが転がり出て、ビョルンは驚いていた。アシェラッドも眼を丸くしているが、溢れることばはもう止まらない。
    「五十歳、いや四十五歳か。戦働きができンのは、せいぜいそんな年齢までだろ。もしその歳になるまで生きてたらよ、満足に剣も振れずにみっともねェ死に様晒すより、人生最期まで愉しんだほうがいい。あんた、行ったことあるか? サラセンの国」
    「いいや、ないね」
    「だったらこの際、行ってみようぜ。風景も、食い物もきっと全然違う。あんたの好きな月桂樹だって、実物を見られるんだぜ。どうだアシェラッド?」
    「……」
    「レバノンだっけ、あの商人の故郷。そこに行こう。それからバグダード? フスタート? あいつらの都にも行こう。その先にはあいつらが香辛料を買いつけてくる、もっと南の国があるはずだ。そういうところまで、世界の果てまで、……行ってみねェか」
     ――一緒に。
     にわかに気恥ずかしさが首をもたげ、最後のひと言だけは呑み込んでしまった。
     アシェラッドはあいかわらず、腕組みして大きく眼を見開き、こちらを見つめている。なんとも気まずくなって、ビョルンは視線を落とした。これから半日、彼とふたりきりで、馬車に揺られなければならないだなんて。……
    「……おもしれェ。乗ってやってもいいぜ」
     ――え?
     呆然と眼をしばたかせるビョルンの前で、アシェラッドがにっと歯を見せる。二の句が継げずにいると、彼はくすくす笑いはじめた。
    「なーに驚いてやがンだビョルン、言い出しっぺだろうが。お前があんなに熱心にまくしたてるもんだからよ、ついその気になっちまったじゃねェか」
    「……」
    「ま、今みてェな暮らしをしてて、四十五まで生きられるたァ、思えねェがな。だが万が一生き延びて、お互い航海できるほどまだ動けるんだったら、行ってみようじゃアねェの。レバノンでもフスタートでも、どこでも」
    「……マジかよ……」
    「おお、マジもマジ、大マジだ。それに向こうなら、アレも安くたっぷり手に入るだろうしね」
    「アレ?」
    「コレ」
     また革袋の中から別のものを取り出してきて、こちらに差し出してくる。紫色の、うっとりするような手触りの小さな絹の袋の中に、硬いものの存在があった。逆さにして振ると、家畜の骨か何かを削って作られた膏薬入れが掌の中に転がり出る。それはすでに、ビョルンがよく知っているものだった。夜更けや仄暗い森の奥深くで、彼の渇きを満たしてやるときにだけ使われるもの。
    「アシェラッドあんた、これ……!」
    「あいつらの国じゃ、男同士ってのは結構あることらしいぜ。とはいっても、対象は少年だそうだから、まさかあの商人も、オレがこれを使われるほうだとは思っちゃいねェだろうが」
    「……」
    「さ、村ァ帰る前に、なんか食ってこう。帰ったら忙しいぜ」
     世界の果てへ、行くためだろ。アシェラッドはさらりとそんなことを言って、ビョルンの背中を叩く。冗談とも本気ともつかないが、それでも胸の高鳴りを抑えることができない。
     しかし、先ほどのさりげないひと言が、ふと脳裏によみがえる。
     ――今みてェな暮らしをしてて、四十五まで生きられるたァ、思えねェが。
     時折、アシェラッドという男の考えていることが、わからなくなる。もう五年も傍にいても、深淵の底は見えぬばかりか、暗く深くなるばかりであった。もしかしたら彼は、ノルド戦士の生き方を嫌っているのではないか。その疑問は常にビョルンの心の片隅にあるが、どのみち答えなど出るはずもない。彼がこれ以上、本心を明かすことなどないのだから。
     ――叶おうが叶うまいが、どっちだっていい。
     彼と約束を交わした。そのよろこびに、今は浸っていたいのだ。



       **********



    「……そりゃまあ、確かに約束はしたけどよ」
    「おう、したした。まあ、千年前よりゃ格段に行きやすくなったが、今はちと難しいからな」
    「だからって、代わりに近所のレバノン料理店で済ませるってのはねェよ……」
    「ワリィワリィ、でもここ評判いいんだぜ。見ろよ?」
     言いながら、今はルカという名のウェールズ人になったアシェラッドが、左の眉だけをもたげて顎をしゃくる。店の奥のテーブルで大きな拍手が沸き起こったのが、それとほぼ同時だった。派手な身なりの中東系の顔立ちの一団が、乾杯の音頭を取っている。聞こえてくるのは、英語ではない別の言語だった。
    「レバノン人か、ありゃア」
    「結構いるらしいぜ。しかもポッシュなことに、ナイツブリッジがお気に入りときた。ここ数年、レバノンは状況悪ィからなァ。政府は機能不全だし、隣のシリアじゃ内戦続いているし。それとほれ、ニュースでやってたから憶えてるだろ? 一昨年、ベイルート港で起きた倉庫の大爆発」
    「……あー、あれな」
    「あれ以来、ベイルートの金持ちは国をほっぽらかして、海外に避難してンのさ。ロンドンやパリなんて、格好の逃げ場って訳だ。まったく、いい気なもんだねエ」
    「ほんとあいかわらずだよな、あんたのそういう、辛辣なところ」
     茶目っけたっぷりに片目をつぶって、ルカはほほえんでみせる。アシェラッドだったときよりもずっと素直で愉快そうな、心からの笑顔だった。
    「千年経とうが、人間そう変わらんもんさ。それは集団も個人も同じことだ。世の中は戦争ばかり、オレは人嫌いのエゴイストのまま。変わったのは名前だけ。だろ?」
    「変わったっていうか、本名に戻ったんだろ。ルキウス、愛称ルカ。前は絶対に教えてくれなかった」
    「……」
    「でも、あんたがあんたのままでいてくれたから、またこうして、めぐり逢えた」
     ルカ。いとしいルカ。
     かろやかな、愛らしい響きの名を想いをこめて呼ぶと、彼は咳払いをして視線を逸らす。伏せた長い睫の下に、初々しい羞じらいが滲んでいるのが見て取れて、胸の奥がくすぐったくなるような喜びが溢れてくる。
     ウェイターが、頼んだワインを持って来た。彼の髪と同じ、あわい金の液体が静かに注がれる。続けて色とりどりの前菜が小皿に盛られて、テーブルいっぱいに並べられる。思わず感嘆の声がこぼれた。
    「すげェな。本式だ」
    「そのうち、地中海の夕陽を愉しみながら、本場のメッゼを堪能しようや。今は状況が悪くとも、いずれきっと行ける」
    「……ん」
    「約束、オレだってずっと憶えてたんだぜ。結局お互い、四十五まで生きられなかったが」
    「そういう時代に、ああいう生き方をしたんだ。仕方ねェよ」
     くすくす笑うルカの眼の中に、あたたかな光が揺れる。なにを言わんとしているのか、ビョルンにはいつだって手に取るようにわかる。
     ――だから、あのときとは違うかたちで、あのときの続きを。
     千年恋い焦がれたひとからさしのべられた手を、今こそ取ろう。彼とふたりなら、どこへだって行ける。ベイルートも、カイロも、バグダードも。そしてその先の、この世界の果てまでも。
    「そんな訳で、またよろしく、ビョルン」
    「こちらこそ、ルカ」
     ワイングラスのふちを、そっと触れ合わせる。まるで少年同士がはじめて交わす、くちづけのようだった。



       了
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