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    はこにわ!

    @pako_garden

    基本🦊右の雑食。書くのは9割👹🦊ですが🖋🦊、🖋👟、👹👟、🦁👟も好きです(もしかしたら書くかも)。対戦よろしくお願いします!!👊❤️‍🔥

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    はこにわ!

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    💜🧡
    ドースバースパロ
    ドースバースについて、支部辞典とかで調べてもらった方が分かりやすいです。

    ※捏造設定あり
    ※普通に喋る💜母います

    pass:4桁

    #shusta

    吸血鬼につける薬はない黒板をカッカッ、とチョークでたたく音が響き渡る。
    3つの人型が描かれ、その下にそれぞれ単語が並べられた。それは人々の生活に最も馴染みのある言葉
    で、授業の内容も皆当たり前に理解していた。くぁ、と誰かのあくびが聞こえる。

    「こらそこ。眠いのはわかるけど集中しなさい。眠気覚ましとして……15ページの頭から読んで」
    「はぁい」

    ガタリと椅子が鳴る。不真面目そうな出で立ちの女生徒が、再び大きなあくびをしてから教科書を読み始めた。ミスタもその声に合わせて文字の羅列を目で追っていく。


    ──人は男性・女性という2つの性別に分かれ、そこから更に性質の違いによって3種類に分類されます。

    「ドラッグ」「クランケ」「ノーマル」

    ドラッグは人を癒す能力が備わっており、体調不良の人を治すことが出来ます。
    クランケは病弱な体質で生まれ、不治の病に罹る人を指します。
    ノーマルは先天的な能力や体質を持ちません。いたって健常であり、人口比率のおよそ90%を占めます。


    「はい、ありがとう。……さて、皆もある程度理解してると思うが、タイプにはそれぞれ個人差がある。ドラッグだから偉いとか、クランケだから弱いなどと決めつけないこと。互いに尊重し、助け合うことが大切だ」

    先生が優しい眼で語りかける。つらつらと付随する説明はこれまた聞いたことのある内容ばかりで、耳から耳へ通り抜けた。やがてチャイムが鳴ると皆教科書を閉じ、ガヤガヤ騒がしく疎らに散る。そういえば、昼飯の時間だ。何を食べよう。購買に行くか、食堂に行くか……。ミスタがそう考えてると、先程の女生徒が目の前の席の男子に話しかけに来た。

    「ね〜さっき教科書で指切っちゃったぁ。治して?」
    「いいけど……最近多くない?気をつけろよ」

    そう言って男は女の指先に軽くキスをした。すると傷のあった箇所がみるみる治っていく。女は「すごーい!さすがドラッグ」と大きなリアクションで持て囃した。こんな光景はもはや日常茶飯事で、別段誰も気に留めない。ドラッグと公言する者ならば男も女も、どんな人種だろうとキスひとつで癒しを与えることができるからだ。その能力自体は本当に凄いものだと思う。そう、能力だけは。

    (あーあ、オレもあんな風にパッと使えたらいいのに)

    当たり障りない彼らのやり取りに、モヤモヤとした気持ちを抱いた。学校にいると、嫌でも自分の不甲斐なさを思い知る。素性を隠す前は力が使えないことを散々バカにされた。こんなの生まれつきであって自分のせいじゃないのに。
    もう今日はそういう気分じゃない。
    ミスタは重い腰を上げて、ある場所へ向かうことにした。


    「よ、シュウ」
    「ミスタ」

    上半身を起こし、ベッドで本を読んでいる少年に声をかける。ベッドは清潔に保たれ、部屋は天国のように白い。まるで病室のようだが、彼の家の一室だ。ミスタは彼の体調が大事ないか、毎日のように通って確認している。今日も彼が起きてるうちに来れてよかったと胸を撫で下ろし、その横に腰掛けた。

    「高校は?」
    「早退した。なんかこの辺りが痛くてさー」

    心臓の辺りをトントン指さし、自虐気味に笑う。シュウは何でもないように「ドラッグでも心の病は治せないんだね」と思ったことをそのまま放った。
    ま、オレは普通の体調不良もそんな治せないけど。心の中で密かに自虐がこぼれる。



    ミスタとシュウは少し年の離れた幼馴染だ。小さい頃はよく外を駆け回り、泥だらけの手を繋いで帰った。互いの家族も仲が良く、それこそ兄弟のようにいつも一緒だった。ミスタはシュウが好きだし、シュウもまたそうだったはずだ。しかし、とある事件をきっかけに彼の母親からこう言われた。

    『もうシュウは貴方と遊べないの。ごめんね』

    耳を疑った。でも心当たりが無いと言えば嘘になる。
    ミスタが10歳になった頃だろうか、やたら変質者に狙われるようになったのだ。どれも不潔で具合の悪そうな男だった。その中の一人、全く身に覚えのない男に"母の知り合い"だと上手く丸め込まれ、連れ去られた。とある事件とはこれのことだ。

    男は極度のオーバードーズ状態にあったという。目的はドラッグの血。ターゲットは道行く女子供。見た目だけでドラッグを判別することは不可能だが、彼は構わず犯行に及ぶ。だからこそ危険視されていた。警察もその行方を追っていた中、ミスタが誘拐された事件を最後にお縄になったという。それを捕まえた功労者はなんと、当時7歳のシュウだ。シュウが来てくれなかったらどうなっていたか……想像もしたくない。ミスタはトラウマを抱えながら、周囲の人々に支えられて生きてきた。その中でもシュウは一番の理解者だ。シュウに依存していくミスタの姿が、彼の母親にどう映ったか。ミスタは幼いながらに汚れた恋心を自覚していた。

    数年に渡りひっそり文通のみの交流をする内に、シュウの様子がおかしいことに気付いた。昔を思うと、今彼の元へ通えていることが奇跡のように思える。シュウはあの事件の日、病に罹ったらしい。実の所、シュウの母親がミスタを遠ざけたのもそれが理由だった。 たまに手紙に赤黒いものが付着していて、シュウの病状が窺えた。だからか、と思った。「遊ばない」ではなく「遊べない」。
    ミスタがシュウと再会できたのは、彼が初めての検査でクランケと診断されてからだ。クランケの病は特有のもので、感染することはない。ミスタにも問題なく会えるはずだ。そこでシュウは母親にあることを頼み込んだ。

    『ミスタがいてくれたら僕の体調は良くなるよ。彼はドラックだから』

    そうして会えたのだが1年前。久しぶりに見た彼の顔は酷く青白かった。黒い血のようなものを吐いた時は気が気じゃなかった。母親曰く、シュウはいつ命を落としてもおかしくない、らしい。「もう息子たちを会わせない」という約束は双方の母親の合意だった。仲良しだった我が子に悲しい思いをして欲しくないと、そんな計らいもあったのだと言う。それが明かされた時、シュウも理解を示したが当然納得は出来なかった。だからまたミスタに会いたいと思って行動してくれたのだ。ドラッグとクランケという関係が判明したのは良いきっかけだった。何より、ドラッグの能力で病が治るかもしれない。母親たちの意見は一つとなった。


    「ほい、あーん」
    「もう、ミスタってば。僕子供じゃないよ」
    「いいじゃん。オレがしたいだけ」
    「んん……それならいいよ」

    仕方ないな、とでも言いたげなシュウの口元へ暖かいスープを運んでやる。お湯を注ぐだけで作れるただのトマトスープだが、彼はいつも美味しいと喜んで食べてくれた。とろりとした赤い液体が彼の口内へ吸い込まれていく。

    「……」
    「ミスタ?」
    「あ、なに?」
    「ボーッとしてたけど大丈夫?僕のことはいいから、休んだら。早退したんでしょ」
    「やだ」

    もし、シュウが自分のいない間に死んじゃったら。その不安が拭えない。ミスタは彼の左手をぎゅっと握り、目を見つめた。

    「シュウの病気が治るまで、傍にいるって決めてるから」
    「それは……ありがとう」

    シュウは困ったように笑い、ミスタの手を握り返した。一般的にドラッグはこのような軽度の触れ合いで人間の体調不良を治すことができる。主に頭痛、吐き気などがそれに該当する。症状が重ければ粘膜接触が有効だ。キスやセックスも例に漏れない。ドラッグにとって、それら全て治療行為である。

    「シュウ、えと、その……」
    「うん、分かってるよ」

    ギシ、とベッドを軋ませシュウの近くに寄り添う。自分で満足に動けない彼のためにゆっくりと唇を重ねれば、シュウはミスタの頬を優しく撫でた。

    「……」
    「っ、」

    一分の隙もないように互いの粘膜を触れさせたら、しばらく動きを止める。恋人のようなキスとは違う、ただの治療だ。少なくともシュウはそう思ってるはず。そう言い聞かせて己の欲を出さないよう努めた。

    「ん。ありがとう、ミスタ」
    「ど、どう……?」
    「大分良くなった気がする」

    シュウはそう言うけれど、ミスタは知っていた。この行為に何の意味もないことを。効いた、なんてただの思い込みだということを。

    「あー……じゃあ、また来るわ」
    「うん、また。くれぐれも医者の不養生にはならないでね」

    再会した時よりは赤みのある頬で笑うシュウの顔を見て、何だかいたたまれなくなる。逃げるようにダダダッと自宅へ帰った。

    「ふぅ……はーっ」

    部屋の鍵を閉めて、そのままズルズルとしゃがみ込む。頰を両手で覆いながら先程の行為を思い出した。

    (なんでいつの間にオレより平気になってんだよ……年下のくせに!)

    悪態を吐きながらバタバタ暴れた。分かってる。分かってるけど悔しいのだ。あれは治療行為の一環であって特別な感情はないこと。邪な考えなんて、そんなものは一切ない……シュウに限っては。

    バレたらどうしよう。
    オレが出来損ないのドラッグだってバレたら。
    傍に居る理由も、意味も、なくなってしまう。

    自身の秘密を隠すため、今日もミスタは通販でトマトスープを買い貯めた。


    ****

    ドラッグは人によって能力の幅がある。例えば一ヶ月寝込むような病があったとして、平均的なドラッグはそれを1時間ほどの性行為で治すことができる。稀に「患部に触れるだけで癌を治せる者」もいて、そんなドラッグは国を上げて重宝される。一般的にドラッグとはエリートなのだ。一方、クランケは病床を巣食うだけの存在。社会のお荷物というイメージが根強い。実際、一昔前は深刻な社会問題にもなっていた。今は症状を抑える薬が普及しているからまだマシだ。それを飲めばノーマルと同等の生活を送ることが出来る。実はクランケだという人が学校にもいるはずだ。何より、本当はドラッグなのにノーマルだと偽っている存在がここにいる。ミスタは高校に入る前、ドラッグであることを隠していなかったが、そのせいで散々な目にあった。「ドラッグのくせに」という言葉がずっと頭から離れない。でもあいつらは忘れて今もどこかでのうのうと暮らしてるんだろう。不平等な世界だ。



    「あれ、トムおまえ食欲ないの?……ジェリーも?」

    足元で蹲る2つの毛玉が力なく尻尾を振る。何かを訴えるように視線を向けている気がして、彼らに目線を合わせた。

    「具合悪い?吐く?」

    そう聞くやいなや、フローリングの上に吐き出してしまった。苦しそうに唸る2匹を前に「どうしよう」と狼狽える。もう動物病院なんてやってる時間じゃない。かといってこのまま放っておくこともできない。

    「やる、か」

    ミスタは意を決し、洗面台へ向かった。棚から清潔な剃刀を取り、親指の腹にあてる。すっと刃を滑らせば、真っ赤な鮮血がじわりと滲んできた。よかった、上手くできた。失敗しなかったことにほっと胸を撫で下ろし、彼らの元へ帰る。

    ドラックに生まれて良かった。
    こういう時ばかりはそう思う。処置が完了すれば、2匹は何も無かったかのようにご飯を食べた。不調が治まった証である。本来血なんて使わなくても治療できるのが普通だが、ミスタはその"普通"が出来ない。ドラッグの力を使うにはそれなりの集中力が必要で、軽度の治療ですら頭が痛くなる。授業でも「能力には個人差が〜」などと言っていたが、それを認知している人はどれくらいいるのだろう。ドラッグは基本的に優秀だ。素性を明かせば即、持て囃される。だからこそ「自分は出来損ないなんだ」と気付いた時は辛かった。そして、シュウにそれを告げられていないことも。


    ****

    「なんか最近調子がいいみたいなんだ。体も重くないし、吐く頻度も減ったし」
    「へ、へぇ」
    「きっとミスタのおかげだね。ありがとう」

    空になったスープ皿を見つめ、シュウが目を細める。
    言えない……いつも治療するマネして己の恋心を慰めているなんて、口が裂けても言えない。

    「ミスタ?大丈夫?僕より顔色悪いよ」
    「え、あ……はは」

    どうして隠してしまったんだろう。罪悪が身を焦がす度、後悔という2文字が浮かぶ。しかしミスタが役割を果たせなければ、シュウは他のドラッグに治療されるはずだ。それは嫌だ、とシュウの体を抱き締める。彼は一瞬驚きながらも嬉しそうにミスタの頭を撫でた。気持ちいい。幸せだ。ずっとこうしていたい。でもこの関係はいつまでも続かない、それは分かっていた。

    「その……オレのおかげかは分かんないけど、嬉しい。シュウが元気になってくれて。良ければこれからも──」
    「ミスタ」

    シュウがいきなり見たことのない表情を向けた。ミスタの肩に手を置き、軽くグッと力を入れる。「え」「あ」とミスタが小さく漏らしてる内に、シュウはスタスタとドアの前まで行ってしまう。
    シュウが、歩いた……?

    「僕、通えることになったんだ」
    「は……どこに」
    「学校」

    シュウの病状はミスタの予想を遥かに超えて回復していた、らしい。本当はもう歩けるのに「ミスタを驚かせたくて」と、今日もベッドで待っていた。しかし、もうその必要はない。彼はミスタの手を取り、ほぼ同じ目線で微笑んで見せた。そんな茶目っ気を披露するくらい心の余裕もあるなんて。

    シュウが心底嬉しそうにこれからのことを語るのを、頭が真っ白になる思いで聞いていた。「おめでとう」の言葉より真っ先に、どす黒い何かが心を埋め尽くす。

    シュウのその「これから」に自分はいるだろうか。


    ****


    なかなかシュウに会えない日が続いている。放課後、彼の家を尋ねても居るのは彼の母親のみだった。

    「せっかく来てもらったのにごめんなさいね。あの子、最近忙しいみたいで」
    「いえ、むしろお邪魔してすみません。つい気になっちゃって……」

    早く帰ればいいのに、と自分でも思う。でも不安なんだ。シュウがどんな顔で学校から帰るのか。新しい友達はいるのか……想像しては怖くなって、気付けば足はここへ向かっていた。シュウの母も毎度よく迎え入れてくれるなと思う。その様はいつもどこか落ち着かず、ミスタを前に複雑な変化を見せた。

    「ミスタくん、その……あ、ありがとう」
    「え?」
    「ずっと言おうと思ってたの。あの子が元気になったのは貴方のお陰だから」
    「……オレは、何もしてないです。シュウが頑張った結果ですよ」
    「……う」
    「はい?」
    「違うの」

    シュウと同じ紫の瞳がミスタの目を捉える。彼女の焦燥感がじわじわと伝って、心臓の音がうるさくなっていく。漠然と嫌な予感がした。

    「私たち、ずっとあなたを騙してた。騙して、ドラッグの力を利用して……ごめんなさい」

    彼女は深く息を吐き、額に手をついて項垂れた。あまりに突然のことで思考が止まる。騙していた?なんの話だ。混乱する頭をフル回転させるが、いまいち思い当たることはない。

    「どういう……」
    「これを、読んで」

    ぐしゃ、と手のひらに何かを渡される。手紙だ。差出人はシュウ。宛先の名を見て戦慄した。その名は、数年前ミスタを襲った男のものだった。

    「はッ……な、なんで、アイツとシュウが」
    「ミスタくん、あの子は、本当は──」
    「母さん」

    懐かしい声がリビングに響いて、咄嗟に振り返る。そこには制服に身を包んだシュウが立っていた。唇をキュッと結び、怒っているような悲しんでいるような顔をしている。

    「ミスタには僕から伝えるから」
    「シュウ……?」
    「来て」

    シュウがミスタの手を取る。状況が読めず困惑するが、彼に引っ張られるまま後に続いた。

    ***

    見慣れた彼の家なのに、どこか別人の家のようだ。こんなところにドアなんてあっただろうか。ただの壁だと思ってたそこは重々しいオーラに包まれている。シュウはミスタを一瞥すると、ゆっくりその扉を開いた。

    そこは一面闇の空間だった。墨色の壁に床。窓はなく、照明もない。シュウがどこからともなく取り出したマッチに火をつけると、目の前にあっただろう燭台へ火を移した。ぼんやり浮かび上がったそこに生活感を感じられるものはない。床に何かの紋様と人型の紙がいくつか置いてあり、少々不気味だった。壁には写真が飾ってある。家族の写真だろうか、一人ずつ額縁に漢字の名が書かれている。

    「シュウ、この人たちは……?」
    「闇ノ家の歴代呪術師。一番右は母さんだよ」
    「ほんとだ……って、え?」
    「当たり前だけど、僕は母さんの血を引いてる。だから」
    「え、待って。じゃあシュウは……」

    心臓が痛いほどに鳴ってる。ドクドクと血液を送り出すそれはまるで生命の本能のようで、それをここまで怖いと思ったのは初めてだ。蝋燭の光で照らされる室内で、シュウは眉根を下げて小さく微笑む。何度も見たあの頃の笑顔だったけれど、どこか悲しそうに見えた。

    「隠しててごめん」


    ──呪術師は自身に辿り着いた者のみ、呪殺の依頼を受けつける。依頼主が信用にあたるか、対象が真に呪いを受けるべき人間か、いくつもの審査を経てそれは決行される。始まりはシュウの母が犯したミスにあった。

    「対象の取り違え」

    それは呪術師にとって最もあってはならない事態。呪われたのは、あの男のパートナーだった。二人はドラッグとノーマルでありながら惹かれ合い、男がオーバードーズになっても支え合って暮らしていた。母はその"薬"を呪い殺してしまったのだ。男の精神が狂うのにそう時間はかからなかった。

    「僕がミスタを守れたのは、母さんの動向を追っていたから。……彼は今も刑務所から僕らに怨恨の籠った文をくれてるよ。反省もしてるけどね」
    「そんな、ことが……」
    「彼は確かに罪を犯した。でもそのきっかけはこっちにある。僕らは彼の"呪い"を全て請け負うことにしたんだ」

    シュウはあの事件の日、呪われた。まともに歩けず、黒い血を吐いて、部屋に籠る毎日を過ごした。母親もそれなりに強いものを抱えたが、現闇ノ家の呪術師として耐えていたようだ。しかし、自分のせいで息子を巻き込んだことへの罪悪が募った。シュウがベッドに伏す姿はまるでクランケの不治の病。シュウも母親も、もう普通の生活には戻れないと覚悟したはずだった。……ミスタがドラッグだと分かるまでは。

    「ミスタ、僕は……クランケじゃない。不治の病だなんて嘘」

    ミスタは話を聞いて、静かに泣いていた。すべてを察し、自身のしでかしたことの重大さに気付いたのだ。

    「ッ……シュウ、きづいてた、の?」
    「うん」
    「きづいてて、のんだの?……オレの、血を」
    「……うん」

    クランケなら多少の血でも番契約は成立しない。しかし、ノーマルにとってドラッグの血は危険な薬だ。少量でも一発で依存状態になってしまう。

    「ミスタ、本当は治療が苦手なんでしょ。だから僕に血をくれたんだよね」
    「そ、そんな綺麗な理由じゃない……オレは、シュウが番になってくれたらいいのにって、一方的に……気持ち悪いよな、ごめ」

    音もなく触れた唇に言葉を失う。治療じゃない触れ合いなんて出来ないと思ってた。優しく暖かい感触に、また涙が零れる。

    「気持ち悪いわけない。僕、ミスタのこと好きだったんだよ。そうでなきゃ、ずっと気付いてない振りなんてしない」
    「……でも、いいの?シュウ、もうオレの血がないと生きていけなくなるよ?」
    「うん。実はミスタに会えてない間、結構辛くて。でも、もし君のトラウマを刺激したらって思うと……」

    もし、オーバードーズの状態で狂ってしまったら、あの男と同じようにミスタを襲うのだろうか。そんなシュウの懸念はミスタによってあっさり打ち消された。

    「なら、オレの血全部あげる。ずっと傍で治療し続ける。もうシュウと離れたくないから」
    「!……僕も同じ気持ち」

    一度すれ違ったはのず二人は強く抱き合った。一般的には誰にも祝福されない関係かもしれない。でも、ここに幸せがあるならそれでいい。

    「ミスタ。僕の呪いを、受けてくれる?」
    「言われなくても」

    蝋燭の火がゆらりと揺れ動く。次第にそれはじわっと消え、闇が二人を包み込んでいく。ミスタは自身の首筋に鋭い痛みを感じながら、うっとり目を閉じた。



    ****



    「母さん、ミスタに余計なこと言うつもりだったでしょ」
    「……だって彼、手紙の中身を見てないんだもの」
    「いいじゃない、もう済んだことは」
    「シュウ、呪術師は勝手に呪殺してはいけないのよ」
    「僕、厳密にはまだ継いでないよ。今の内にミスタを傷つけた奴全員洗わなきゃ」
    「あの人も呪ったのね」
    「うん。母さんも参ってたし、僕の呪いも消えたし、良いことしかない。でしょ?」
    「……?もしかして、体調が良くなったのは禍根を断ったから?」
    「……」
    「ねぇ、シュウ。ミスタくんの血は"薬"にならなかったの?」
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    kohan_saniwa

    DONE寝れない🦊と寝かしつけに行く👹の🦊👹
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    ⚠読んだ後の誹謗中傷は受け付けません⚠
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    ディスコードって、相手がメッセージ打ってると分かるようになってるんですよね。あれ便利
    今すぐいくね- 今すぐいくね -
    真っ暗な場所は嫌いだけど、真っ暗な自室は、嫌いとは違う感覚がする。
    配信を終えて電気を切った真夜中の部屋はしん、と静まり返っている。ベッドに転がって天井を眺めていると、カーテンの隙間から街頭や車のヘッドライトがちらちらと視界の端を照らしてくれた。ミスタはぼんやりとそれを見ていたが、やがて車の通りもなくなってしまうと、部屋は更に暗闇に包まれる。
    静かな部屋では、自分だけが音源だ。
    呼吸の音、寝返りのシーツの擦れる音、心臓の音
    、頭の中をぐるぐると巡る自分や他人の声。横向きになって、枕をギュッと抱き締める。
    暗い部屋は落ち着かない。落ち着かないから、ミスタはつい部屋の明かりをつけ直した。明るい場所で寝ることがあまり良くないことは勿論理解している。理解しているけれど、やっぱり嫌いなものは嫌いなのだ。明るくなったことで、心臓の音がほんの少しだけ小さくなった。頭にガンガンと響く心拍も、ミスタは嫌いだった。逸る心音を聞いていると、心が落ち着かない。ソワソワして、なんだかそこがなんともないのに怖い場所のように思えてたまらない。一人で部屋にいることを嫌でも理解出来て、どうしようも無い焦燥感に、ますます眠れなくなる。
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