青い目の吸血鬼ドラルクの好きな色、黒と赤、青と紫、そしてかわいいマジロの色。
マジロ色は仕方がない。この完全なるマジロ色は世界でただ一つの丸だけが保有する色だからだ。
ロナルドくんの眼は赤い。爪も赤い。服装は畏怖い吸血鬼らしく黒尽くめだ。
紫は赤と青の間の色なので一旦置いて、だからつまり青さえあれば、ドラ公の好きな色コンプリートだ。
「それで君、眼を青くしちゃったのか」
「おう! うまく染まっただろ!」
「…確かにきれいな青色だけども」
ドラルクが手を伸ばして、ロナルドの頬に触れる。細くて低い温度がこそばゆくて、ロナルドはえへへと笑った。ドラルクの金色の虹彩が近くでよく見えるのが嬉しい。
「爪を青にしようとは考えなかったのか」
「爪はお前も赤にしてるじゃん」
頬に触れるドラルクな手に自分の手を重ねて、爪先を撫でる。
せっかく意図もせずお揃いにできていたところなので、これはこのままがいいとロナルドくんは思った。
だから眼だ。好きな色がたくさんあれば、その分こっちをみてくれるはずなのだ。
しかしドラルクは、馬鹿だなあ、と言った。
「赤い目なんて、高等吸血鬼の特徴の一つだろうに」
「でも髪が青いのはカッコ悪…いやちょっと面白い?」
「やめとけ」
ドラルクの指先がちらりとロナルドくんのまつげを掠める。眼前の指の青白さと裏腹に、一瞬翻るように見える爪先の赤が眼を焼く。胸を焦がす。冷えて凝るはずの血を燃やす。
「馬鹿だなあ」と、ドラルクが言った。二度も言った。
さすがにちょっとむっとしたので、ロナルドくんは文句を言おうと改めてドラルクを見た。
馬鹿だなあ、と、ドラルクが言った。
金色の眼が揺れる。それは苦しそうな、泣きそうな色をしていて、ロナルドくんは、自分が何かとても酷いことをしてしまったんじゃないかと気づいた。
「ドラ公」
よぶと、ドラルクは目を細めて笑ってくれた。ああ。
取り返しがつかない。