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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

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    miya_ko_329

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    本編から10年後くらい。いろいろ乗り越えたアルミリアが単身火星に向かい、なんかいろいろ事件に巻き込まれて成り行きで暁とロードムービーする話が書きたかったなあ(かけねえ)

    鉄血/アルミリア 豪奢ではないが清潔と快適が保証された宿のシャワールーム。乾燥した火星の風は土埃も多く含んでいる。服も全て脱ぎ捨てて温かい湯を頭から浴びる。生涯の中でこれほど心地よいと思ったシャワーは初めてだった。シャンプーはそれなりに名の通ったブランドのリーズナブルなラインだったが、十分役目を果たしている。ひとしきり汗と埃を流し、シャワーの栓を締める。水をたっぷり含んだ髪からポタポタと大粒の水滴が濡れた身体や床に落ちていく。髪を無造作にまとめ、ぎゅっと絞る。自宅であれば洗髪後は侍女がヘアセットまでしてくれるが、今は自分一人しかいないし、過剰な整容も必要ない。今の自分はファリド邸の女主人ではなく、ただのアルミリアだ。
     シャワールームから出れば、手狭なレストルームになる。暖められた空気が鏡に結露を生じさせる。
    「我ながら、別人みたいね」
     湯上りの、何も身に付けていない裸のままの自分の姿が鏡に映されてアルミリアは一人苦笑する。
    一般的な成人女性に比べ、その体躯が鍛えられていることは明らかだった。上腕や腹部に筋の隆起が見られ、下に目を落とせば脚も同様だ。
    「まさか大人になってからサイズが変わるなんて思わなかったけど」
     脱ぎ捨てた服の中からブラジャーを拾う。普段身に付けているような柔らかい色調や繊細なレースで飾られたものではない。特別目に楽しいわけでもない最低限の機能を持ち合わせているだけの簡素な下着。旅先では丁寧に洗うことなどできないと思っていたから、洗濯機にそのまま放り込んでもダメージをあまり受けないシンプルなものにした。サイズが記されたタグを見ながらひっそり溜息を吐く。
    「あんまり大きくなると選べる種類が減ってしまうのよね……」
     オーダーであればその限りではないが、気軽にショッピングの合間で気に入ったものを見つけるのは難しくなる。ファッションにそれなりの関心を持つ女性からすれば割と切実な悩みだった。
     これが数年前、つまり体力をつけるためのトレーニングを始める前であれば、どちらかと言えば細身の方だったのに、少し体を鍛えたらこれだ。ボードウィンは元々武門である。モビルスーツパイロットを多く輩出し、体格的にも恵まれる傾向にある。兄が良い例だ。軽薄が服を着て歩いているような人物ではあるが、訓練校の実技の成績は優秀だったようで、そもそもの身体能力は高い。だからおそらく遺伝的な素質は多分にあったのだ。体脂肪率はむしろ減っているから、バストサイズが大きくなったのは胸筋が鍛えられた結果だ。触れれば柔らかさよりも張りを伝えてくる。子どもの頃は大人の女性が持つ豊かな胸の膨らみに憧れたものだが、体全体のバランスを考えると、過剰な豊かさは美しさからかけ離れたものになるということを少女の時代を過ぎてから理解した。アルミリアの美意識からすれば、今の自分の体型は女性らしいとは言い難く、けれど望んで手に入れたものだ。より遠くまで歩ける脚を、より多くのものを抱えることができる腕を。過酷な場所にでも耐えられる強靭さを備えた肉体。それこそアルミリアの望んだものだった。
     随分と短くなった髪をタオルで拭いながら、レストルームのドアを開ける。湿気に満たされた空間から出ると、少し温度の低い居室は涼しく心地よい。はしたないかしら、と思いつつ服を着ずにシングルベッドに倒れこんだ。自宅のベッドの方が余程広いが、無臭のリネンは滑らかで素肌を柔らかく包み込む。沈む体幹も、投げ出した四肢も受け止めてくれるには十分だった。
     ここでは誰も私のことを知らない。
     それがアルミリアを大胆にさせた。
     ヴィーンゴールヴの上流階級で交わされる無意識の悪意を孕んだ囁きも、同情と好奇の目が入り混じった視線も、何もかもがここでは遠い国の出来事だ。
     マクギリス・ファリドに翻弄された哀れな少女だった未亡人。人々がアルミリアに着せていたのはそういう衣装だ。素材だけは豪華な、悪趣味なドレス。
     そんなものは脱ぎ捨てて、文字通り裸のまま今ここで呼吸をしている。
     静かな部屋の中でベッドに耳を押し当てていると、体を巡る血流と規則正しい心臓の鼓動を感じることができる。生まれた場所から遠く離れたこの場所で、身一つしかないこの空間で、感じるのはただ自分が生きているという実感と、圧倒的な開放感だった。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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