Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    miya_ko_329

    @miya_ko_329
    完成できなかったネタはおもむろに増えてたりします。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 31

    miya_ko_329

    ☆quiet follow

    ロマぐだっぽいものがベースだけどオデュッセウスの惚気が大半。あとはキルケーの気持ちの整理。

    FGO/ぐだ子とオデュッセウス アイアイエー島の水平線に沈む夕日は美しく、訳もなく感傷を誘う。
    「ケリを付けるにはぴったりだろ、ここ。夕焼けを背景に殴り合って和解……。最高のロケーションさ」
     実際キルケ―とオデュッセウスは互いの死力を尽くして拳を交わした(比喩でない辺りがサーヴァントの怖ろしいところだ)。それが会話であるように。
     燻る熾火に未練は無いと、魔女は笑った。
    「こんな形で終わらせられたことは、私にとっての幸運だよ」
    「……つらくはないの?」
    「ないと言ったらそりゃ嘘だね。でもそれ以上に厄介事を手放せた解放感の方が上回るね」
    「大事なものだったのに?」
    「大事なものだったからさ。腐らせて朽ち果てることもできずに無残なものにしてしまうより、思い切ってぶっ壊した方が気持ち良い。これでやっと綺麗な思い出とやらに昇華できそうだよ」
     悪戯めいた微笑を向け、キルケーは両手を組んで伸びをする。懸案事項が片付いたと言わんばかりに晴れやかな表情だった。
    「手放したほうが良い、か」
     ぽつりと落とした立香の呟きをキルケーは掬い上げる。
    「私の場合はだよ、ピグレット。誰にでもそう言えるものではない」
    「前に進むために手放すものがある。けれどそれは自分で終わりを納得できたらの話さ。無理矢理終わりにしてしまえば、膿んだ傷にしかならないよ」
     まあそれが生前の私ということになるのかな、とキルケーは、どこか自嘲するように笑った。
    「結局、終わりにできるのは自分だけなんだよ。もちろん終わらせないのもね」
    さて、大魔女の名を恣にしている彼女は、立香の呟きの意味に気付いてしまっただろうか。
     水平線の落日はもうわずかに見えるだけになってしまった。柔らかな橙から濃紺のグラデーションの中で一番星が瞬いている。きっとじきに美しい夜空が見られるだろう。キルケーもまたかつての想い人と共に見た空だったのかもしれない。
     立香はそんなことを思いながら、楽園のような特異点を後にした。


     カルデアには巨大な書庫が存在する。魔術的なリソースを駆使して形成されたその空間は、娯楽はもちろんのこと、あらゆる分野の学術書が揃う場所でもある。自分の余暇をここで過ごすサーヴァントは少なくない。そしてまた唯一のマスターである立香も例外ではなく――
    「マスターもここに来ることがあるのだな」
     いつの間にか隣に立っていた長身の男に声をかけられ、顔を上げる。
    「オデュッセウスも書庫にいたんだ。ここ漫画とかもいっぱいあるからさ、私の憩いの場なんだよね」
     へへへ、と立香は緩んだ表情をオデュッセウスを向ける。
    「ああ、ちらと聞いたが、実に楽しそうな代物だな」
     古代ギリシャには無かったであろう娯楽だが、意外にもオデュッセウスは興味を示した。まさにギリシャ彫刻のように精悍で整った容貌をしていながら表情は豊かでよく笑い、少年のような好奇心の持ち主だった。
     オデュッセウスがカルデアに召喚されたのは、アイアイエー島の特異点から帰ってきて程なくしてからだ。あるいはあの島の記憶が、彼の召喚の縁となっていたのだろうか。もちろん一度座に帰還したサーヴァントには記憶は残らない。けれど、その姿も言葉もあの特異点での彼と確かに繋がっていると思わせてくれる。屈託なく笑う様も、共に在る仲間に対する気遣いも。キルケーはと言えば、意外な程あっさりと、「あの英雄が来たって? それは重畳。彼はきっと君の助けになるからね」と特に気にしていない様子だった。せいぜいが生前の知己がまた一人集ったという気安さくらいだ。あの島での出来事が無ければ今もまだ露骨に避けていたのだろうか。加えて彼の宝具は、ある一定の層のサーヴァントの興味を甚く引いてしまった。そういうわけで、何だかんだとあっさり馴染んでしまったわけだが。
    順応性が高いにもほどがある、と不思議な因果で彼のマスターとなってしまった立香は、自分より高い位置にあるその顔を見上げた。古代ギリシャ最高クラスの英雄が召喚されたことは間違いなく吉報だ。吉報ではあったが――
    「ちょっと驚いた。異聞帯のあなたとはまるっきり印象が違うんだね」
     立香の中でオデュッセウスと言えば、アトランティスで何度も対峙した強敵だという印象が強い。もっともあの場で文字通り命を賭したサーヴァントたちは、再召喚された後はそんなことも覚えてはいないが。ただ記録から知るだけだ。
    「どうやらとんでもなく迷惑をかけたらしいな。申し訳ないことをした」
    「ううん、違うの。あの人はあなたではないし、全然気にすることじゃないんだ。あーごめん変なこと言った……」
     かつて敵として戦ったサーヴァントがカルデアに再召喚されるのはままあることだ。異聞帯に突入してからはなおのこと。汎人類史の存在である彼らは異聞帯の彼らとはまったく別の人生やエピソードを持つ。それに伴う人格や思考もまた異なるものだ。つまり最早別個の存在である。
    「いや、かえって気を遣わせてしまったな。……あちらの俺は、トロイア戦争もその後の旅も知らなかったそうだな」
    「そうみたい。そうなると全然別人だよねえ。……アトランティスで会ったオデュッセウスはね、ペーネロペーに出会わなかったって言っていた」
     焦がれる思いを抱え続け旅をしたオデュッセウスではない。智将としての側面が特化されたそのサーヴァントはおそろしく強かった。冷徹なまでの判断力で過不足の無い采配。最小の労力で最大の結果をもたらす。敵であった彼は脅威でしかなかったが、今ここにいるオデュッセウスは人としての善性に満ちた頼れる仲間だ。
    「ということは、俺というサーヴァントの本質……英霊たらしめる由縁を欠いていることになるが。そうでなければ単に少々戦に覚えがあっただけだぞ。オデッセイを経ていないオデュッセウス……ペーネロペーに出会わなかった俺か。……それは、とても恐ろしいな」
     一瞬立香は目を瞬かせ、その端正な横顔を見つめた。
    「恐ろしい?」
     その感情の意味するものと、目の前の男が結びつかない。どこかちぐはぐな印象だ。どんな困難をも乗り越えてきた男が恐れるものがあるのだろうか。
    「彼女を知らない人生は、きっと空虚だろうな。……いや、それなりに幸福で程よい刺激がある一生だったのかもしれない。けれど、一度知ってしまったのなら、もう知らない頃には戻れない」
     感情は不可逆的なものである、とオデュッセウスは言う。
    「あれほどに苦しく、焦がれるような、それでいてどんな美酒よりも芳しく甘やかな感情は、彼女を知らなければきっと手に入らなかった。」
    「お、おおう、そうですか……」
     西暦2000年代の少女でしかない立香には、少しばかり面映ゆい。ここまで率直に、何の衒いも無く愛を語るサーヴァントはカルデアには多くはない。いや、いたか、いやいない……と気恥ずかしさを誤魔化すための思考は、唐突に脳内に現れたシェイクスピアに突っ込まれる。
    「アナタ、散々いろんなサーヴァントを誑し込んできたくせに、他人の恋バナにはあんまり耐性ないんですね」
     いやこれそういうレベルじゃないよね、と妙に冷静な自分が脳内の仮想文豪に突っ込む。自分が愛を告白されたわけでもないのに、聞いているだけで
     同時に、オデュッセウスにここまで言わせる妻とはどんな人だったのか気にはなる。
    「えと、ペーネロペー、さん、ってどんな人なの?」
    「ペーネロペー?」
    「いやね、基本的な、まあつかみ? のところだけは一応見させてもらったんだけどさ」
     仮にもマスターならサーヴァントのバックボーンくらいは頭に入れておきなよ? と小さくなっても職務に忠実(半分以上は趣味だろうが)なダ・ヴィンチが寄越したオデュッセウスのエピソードはなかなかに波乱に富んでいて、読み物として興味深かった。もっともその困難を実体験した本人を前にそう言うのは気が引けるが。
    「共に居て安らぎを覚える、そういう人だった。我を強く出す方ではなかったが、一度決めたら簡単には折れなかったな。そうだな、うん、あきらめは悪い方だったと思う。……だからこそ何年も俺の帰りを待ってくれていたのだろうが」
    「気立ても器量も良い女ではあったが、惹かれたのはそういう理由ではなかったな」
    「好きなところはいくらでもきっと挙げられる。けれどそれは愛する理由にはならない。ただ彼女の存在そのものが、俺にとっての幸いだったのだから」
    「きっとあなたの奥さんは幸せだったと思うな」
    「どうだろうな。俺は良い夫ではなかった」
     苦笑するその表情さえも、伴侶を想う愛おしさが見て取れた。
    「だって愛されてるってわかるもの」
    「どう感じるかは彼女次第だがな……。そうだな、彼女も俺を愛してくれていたのだと、信じることはできる」
    「あ、どうもごちそうさまでした」
     ごく自然に惚気るので無駄に心臓に負担がかかる。
    「長い年月、俺は彼女に待つことを強いてしまった。生きているのかさえわからない人間を待ち続けるのは、辛く苦しいことなのに」
    「でもあなたは帰って来た。だから今こうして私たちと共にいてくれている」

    「あなたを見ていると、人を好きになるって良いなあって思うよ」
     愛することが幸福であると何の衒いも無く言える人は、真実幸福なのだと思う。愛することが悲劇に繋がってしまった存在を知っているからこそ、オデュッセウスのように自らの指針として揺るがぬ存在を心の座に留め、またそうすることで自らの生をより豊かなものにした者が眩しく、そして好ましい。異聞帯のアトランティスで邂逅した彼が、彼と真逆の存在であったこともまた印象的だ。
    「ほう、マスターもそんなことを言うんだな。想い人の一人でも……」
     ぴくりと、反射的に跳ねた肩と、おそるおそるといった様子で自身を見上げる少女の姿に、オデュッセウスはめずらしく歯切れが悪そうに目を逸らした。
    「いや、不躾だったな」
     軽々しく踏み入るべき領域でないと彼は察した。
    「あ、ううん、どうなのかな」
    「その人が好きだったのか、それが恋だったのか、もうわからないのに」
     失くしてしまったものだから、惜しくなって、それがどんなに尊いものであったのか、そう思おうとしているのかもしれない。
     恋と呼ぶことに躊躇っている。
     何故こんな話を彼にしているのだろう。つい先日召喚されたばかりのオデュッセウスはあの特異点の旅を知らない。そしてロマ二・アーキマンのことも。だからなのかもしれない。あの旅を共にしたサーヴァント達はきっと気付いてしまう。立香がこんな風に語る相手は、彼しかいないのだと。
     彼の旅は、愛した人のもとに帰るためのものだ。真実彼は
     彼のことを考えて一日が終わるなんてこともなかった。会えることを嬉しいと意識することもなかった。なぜならそれは当然に存在する日常であって、疑いのないことだったから。人理焼却という異常事態にあってでさえ、彼は彼女の日常であり続けた。それこそ空気のように。
    「特別にその手の経験が豊富というわけでもないんだが」
     いや、たいそうおモテになるでしょう、と立香は内心答えたが、そこは口に出さなかった。彼にとっては真実そうなのだ。
    「誰かを想うことそれ自体は自分の中で完結していることであって、独り善がりだ。閉じた円環のように。だからこそその想いを受け取ってくれる人がいるということは、得難く幸運なことだ」
     受け取ってもらえないくらいだったら、最初から渡すのを止めてしまうだろうか。でも立香の場合は、そんなことを考える間もなく別れを迎えてしまった。ある日突然いなくなってしまった彼のことを考えるとひどく寂しいと感じた。そして自分の中に、渡すべき相手を失ってしまった、行き場のない感情が残されていることに気づいてしまっただけだ。その中身が、果たして何であったのか、もう立香にもわからないまま。

    「だから、その気持ちは誰かに手渡すのも、手放すのも、あるいは大事に抱えていくのも、それはマスターが決めるしかない」
     どうしてだか、彼はあの魔女と同じことを言うのだ。そのことが少し可笑しくて嬉しかった。
    「そう、そうだね」
     これが始まりもせず終わってしまった恋なのか、立香にはまだわからない。ただ彼の笑った顔を思い出すとき、どうしようもなく温かなものが湧き上がってくることを知っている。他愛もないことで怒ったり困らせたり笑ったり。その記憶は何にも代えがたい煌めきを伴って立香の中に残っている。結局、立香が今こうしているのも、彼が残したものを必死に守ろうとしているだけなのだ。
    (最後に見たドクターは、)
     もう立香の知るロマ二ではなかったのに、こちらを見て微笑んでいた彼は、間違いなく立香の旅の傍らに常にいる、ロマ二・アーキマンとまったく同じ表情をしていたのだった。
     行かないで、と声をかけることさえ思い浮かばなかった。彼がそれをもう決めてしまったのだから。この旅の終着点は彼にしか決められないのだと言い聞かせて。
    「そっか、私もあなたと同じ。その人のために、ううん、その人を想う私の為に、この旅を続けようと思っている」
    「そうか」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
    1449

    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
    5000

    recommended works