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    mitumints

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    ワンドロ開催おめでとうございます!!

    二人で夏祭りに行く話をかきました。
    夏、全力で楽しんで欲しい!!

    #東ディバワンドロ

    ルカくんと魁斗くんが夏祭りに行く話 夕方というよりは夜に近く。
     オレンジ色だった空はグラデーションをつけながら深い藍に染まっていく。
     今日は学園主催の夏祭りが中庭にて行われる日だ。
     屋台や盆踊りもある本格的なもので、普段外の敷地に出ることが叶わない寮生たちにとってたのしみにしている行事の一つだった。
     はじまるまでにはまだ少し時間がある。
     そんなあわいの時間をルカと魁斗はのんびりと歩いていた。
     歩く歩調にあわせて、下駄の音がカラリカラリとつづく。
    「……あぁー、せっかくの夏祭りなら特待生ちゃんと二人……いや、この際三人でもいいから、青春の一ページがほしかったよぉお。
     せっかくの夏祭りなのにお前と二人とか、上がるテンションもあがんないつーの。
     おれなんか、浴衣まで用意したんだぜ……」
    「仕方ないじゃないか、特待生は他寮の任務で忙しいみたいだ。
     無理に誘って疲れさせたら可哀想だと言ったのは、魁斗だろ」
    「それはそうなんだけどさぁ。
     でもさぁ、割り切れない気持ちもあるじゃん?
     だって、おれ、大好きな彼女と浴衣デートってやつ、すっげぇあこがれてたんだもん!」
     大きく肩を落とす魁斗は白地に藍色の流水模様の浴衣を着ていた。
     明るい金髪に白い浴衣がよく映える。
     その隣に並ぶルカは黒地の浴衣で織りに特長があり近くによると縦のラインが見えるものだった。
     肌の色を引き立て、見立てをして選ばれたことは確かだった。
     どちらも今日のためにおろしたらしく、生地にはぱらっとしたハリがあった。
    「浴衣という着物をはじめて着たよ。
     案外涼しいんだね。
     魁斗が用意してくれたんだろ?
     ありがとう、嬉しいよ」
    「べ、別にルカのためじゃねぇよ。
     ただ一人だけ仲間はずれだと、ちょっと可哀想かなぁとか、せっかくだし日本文化を教えてやろうかなっていう親切心なだけだし」
     魁斗は早口にそう言うと少しだけ歩くスピードをあげた。
    「まあ、しょうがねぇ!
     お前と二人で楽しむか!!
     おれが夏祭りの楽しみ方ってやつを教えてやるよ」
     魁斗はにかっと笑うと、人混みの方へと歩いていった。

     人の喧騒とスピーカーから流れる祭囃子にテンションが上がっていく。
    (……やっぱ夏祭りといえばこれだよなぁ!
     まずはどの屋台から回るべきか……焼きそばとたこ焼きはおさえるとしても、まだ時間も早いしまずは射的とか……そのあたりから抑えるべきだよなぁ!!)
     浮き立つ心を抑えて、意見を仰ごうと魁斗はルカの方を見る。
     ルカは不思議そうにあたりを眺めていた。
    「イギリスのサマーフェイトを想像していたけど、ずいぶん雰囲気が違うだね」
     感心するようにそう言うと、すぐそばの屋台を覗く。
     水の中を赤や黒の金魚が悠々と泳いでいた。
    「魁斗、これは……」
    「お前金魚すくい、しらねぇの?
     あそこにある紙でできたポイで、金魚をすくうゲーム。
     結構難しいんだぜ」
    「へぇ……イギリスの祭りではひよこをすくったよ。
     似ているようで違っているね」
     ルカは感心するようにそういうと、次の屋台に視線をおくる。
    「魁斗!あっちは?」
    「おい、ひっぱんなよ!
     わかったって、案内してやるよ」
     ルカに引きずられるようにして次の屋台に向かう。
     その好奇心に弾む後ろ姿を見て、当初こそかなりしなかったがいまはここに来てよかったと思った。
     夏の夜の生ぬるい風が、髪の間をすいていく。
     まだ暑い気温のせいで浮いた汗が、夜の空気の中で揮発していった。
     屋台と白熱球と客の持つネオンライトが夜祭りを華やかに彩っていった。

    「……もう食えねぇ。
     もう待てねぇ……ルカ、お前ちょっとは加減しろ!!」
     財布はルカもちなのをいいことに、気になる屋台を片っ端から攻めた結果、二人の両手にはあらゆるものがぶら下がっていた。
     射的ではルカが1等をしとめ、無駄に買われたお面は2つづつ頭につけられていた。
     焼きそばとたこ焼きはその場で食べたが、食べきれなかったチョコバナナとりんご飴は各種袋に入りぶら下げられている。
     途中から何度も文句を言ったのだが、好奇心いっぱいの目で祭りを楽しむルカを見ていると、あまり強く言えなくなってしまう。
     腕の重みにため息をつくと、ヤグラの周りで踊る人を遠目で見つめた。
    「……はぁ……ったく、おれはお前に盆踊りの一つでも教えてやろうと思ってたのに、この荷物じゃ無理だろ」
    「盆踊り?
     あそこで踊ってる人の踊りのことかな?」
    「そうそう。
     ルカ、しらねぇだろ、あれも日本の夏の定番なんだぜ」
     疲れた顔で話す魁斗にルカは興味深そうに櫓を見つめた後、魁斗に向き直った。
    「……すまない。
     俺はまた自分のことばかりで魁斗の気持ちをまったく考えられていなかったね。
     今年は疲れているようだから、無理かもしれないが是非来年は……」
     その時、ルカの言葉を遮るようにして一つ小さな花火があがった。
    「……わぁ」
     ままなく始まる花火大会の開始の合図に、道ゆく人々も立ち止まり夜空を見上げる。
    「みろ!ルカ!!
     あれ特待生ちゃんじゃね?
     やっぱりこの祭り来てたんだ!
     おーい!!!特待生ちゃん!!!」
     ルカを振り返ることなく走り出す魁斗の背中をみながら、ルカは顔をほころばせた。
    (……友達とはじめて過ごす、日本の夏。
     すごくいいものだね)
     ほんの一瞬、使命や背負っているもののことを忘れさせてくれる。
    「ルカー!!
     ここからだとよく見えるぞ!!」
     いつのまにか特待生の隣に並んでいる魁斗はルカに向かって大きく手を振った。
    「すぐにいくよ」
     3人横に並び、見上げた空には次々と花火が打ち上がっていく。
     その光の一つ一つが、三人の瞳を照らしていく。
    「……そういえば、さっき何かいいかけてた?」
     スターマインとスターマインの合間に、魁斗がルカに尋ねるとルカは満面の笑みで答えた。
    「また来年もこうして三人でこの光景をみよう」
     一瞬あっけにとられた魁斗もつられて笑った。
    「約束な」
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