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    Manjiro_820_

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    【君とな】0529 マイ武 展示作品
    佐野万次郎(九尾)×花垣武道(小学1年生くらい)

    #君とな0529
    youAnd0529
    #マイ武道
    myMartialArt
    #狐の嫁入り

    狐の嫁入り「誰、お前」
    「あ……あ……」
     
    狐の耳が付いたお兄さんがそこにいました。
     
         ♢
     
     時を遡ること数十分前。
    「たけみちーもう帰ろうぜー」
    「うん……でもあと少しだと思うから……」
     オレは一人で遊んでいる時に見かけた未確認生物を探すべく、アッくんとタクヤと一緒に森の中に遊びに来ていた。
    「お前さっきもそう言ってもう三十分も歩いてるんだけど。未確認生物なんているわけねーって。」
    「けど、ホントに見たんだって!」
     この辺りに絶対いたはずなのに。オレはムキになって、闇雲に山道を歩き続けた。気がつけば道らしい道がなくなっていて、これ以上進めば迷子になると思った。
    「や、やっぱり帰ろう!……あ、あれ、みんな?」
     後ろを振り向くとさっきまで一緒にいたアッくんとタクヤの姿はなかった。森の中に一人、オレだけが佇んでいた。
    「アッくーん!タクヤー!どこー?うぅ、ぐすっ」
     泣きながらもなんとかアッくんたちと合流しようと、森の中をとにかく歩み続けた。すると、なにやら大きい少し古びた神社が見えてきた。昨日こんな神社あったっけ……
     神社に見惚れてぼーっとしていると、神社の中でキラリとなにかが光った。オレはそれに興味をひかれ、鳥居をくぐろうとしたその瞬間、突風がオレを襲った。その強い風にびっくりして、思わず目をぎゅっと瞑る。
     しばらくすれば突風は止み、風でザワザワと音を立てながら揺らめいていた木々達も静かになった。
     そっと、片目を開けるとそこには誰かが立っていた。
    「……なんだ?誰、お前」
    「あ……あ……」
     そこに現れたのは、耳と尻尾が生えた人間の姿をした人。昔お母さんが読んでくれた絵本で見たことがある。
    「お、おキツネさま……?」
    「ふーん、なに。オレのこと分かんの?」
    「あ、えと……あぅ……」
     未知の存在と出会ってしまった恐怖と驚きのあまり、ドサッとその場に尻もちをつく。
     そして徐々に後退りをするが、じりじりと距離を詰められる。
     し、しっぽが九本あるっ……絵本で見たおキツネさまは一本だったのに……すごいっ‼︎でもなんだか怖いいいい。
    「なにベソかいてんだよ。オレにビビってんの?……うわ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃじゃん。きったねー顔」
     そう言って顔をしかめる尻尾が九本生えたおキツネさま。
     えっ⁉︎なんか怒ってる?オレた、食べられるっ⁉︎
    「う、ううううぅっ」
    「……あ?な、泣くなって」
    「ひぐっ、ぐすんっ」
     あまりにオレが泣き止まないでいると、おキツネさまははー、と長めのため息をついた。そしてオレの前にしゃがみ込む。すると突然、もふっ、とおキツネさまの尻尾が顔の前に現れる。
     ふわふわとしたその感触が顔に触れてくすぐったい。
    「ふふっ、くすぐったいよ……」
    「泣き止んだ?」
     オレを泣き止ます為にくすぐってくれたんだ……
     このおキツネさま、さっきまでは怖い感じだったけど、今はなんだかとっても優しい顔で笑いかけてくれる。
    「あ、あのう……」
    「なに?」
     ひっ、やっぱり怖いかも。
    「オレ、迷っちゃって。森の出方とか、おキツネさま分かりますか?」
    「分かるけど。ふーん迷子ね」
     顔をジロジロと見られ続けること数分。
     おキツネさまはなにかを思いついたのかニッコリと笑った。オレもつられてニッコリ笑ってみる。
    「じゃあ、森の外まで連れてってやる代わりに条件ね」
    「条件……」
    「オレすっげー暇しててさ、だからお前明日からここに遊びにこい。そしたら連れてってやるよ」
    「そんなのでいいの……?」
    「うん」
     オレは強く頷いた。これが全ての始まりとも知らずに。
    「分かった!」
    「よし。お前、名前は?」
    「たけみち」
    「じゃあタケミっち」
    「おキツネさまは?なんて言うんですか?」
    「オレは……万次郎」
    「まんじろー……くん」
    「うん。てなわけで、オレら今日からダチ、なっ」
    「うんっ、まんじろーくんっ!」
     そしてオレは無事に森の外まで帰ることができた。森の外にはすでにアッくんたちが待ってくれていて、凄く心配されたし、もちろんみっちり怒られた。
     さっそくオレは次の日、学校の帰りに森へ遊びに行った。昨日の夜に雨が降っていたからか、道がぬかるんでいる。
     慎重に歩いていたが、森の道は坂になっているので案の定ぬかるんだ道に足をとられ、そのまま滑ってしまい、そのまま顔から地面へダイブする。ベシャリ、と泥が顔や服にこびりつく。
    「うぅぅ、いだいよぉ、ぐす」
     自分が情けなくて反射的に涙が出てきてしまう。
     まんじろーくんどこぉ!
    「よぉ、タケミっち。またベソベソ泣いてんの?」
    「まんじろーくんっ!」
    「泥だらけじゃん。仕方ねぇなあ……」
     脇のした辺りを掴まれたかと思えばそのまま、まんじろーくんに立たせてもらう。
    「ほら、もう泣くんじゃねぇよ、男だろー」
    「うぅっ、……あれ、泥は……?」
     気がつけば泥だらけになっていた顔や服は元通りになっていた。しかもなんか洗濯したてみたいなにおいする!?
    「え、え、なんで?すごいっこれまんじろーくんがやったの!?」
    「んなもん、朝メシ前だわ」
     ふふん、と褒められてまんざらでもないドヤ顔のまんじろーくん。
    「なーなー、街でようよ」
    「えっまんじろーくん街に出て大丈夫なの?」
    「まぁ変化すれば」



    オレとまんじろーくんは街へ出かけた。
    まんじろーくんは街のものに興味津々で、さっきまで真っ黒で死んだ魚のような目をしていた目をキラキラと輝かせていた。
    「なぁ!タケミっち、あれなにっ!」
    「え?たい焼きのこと?」
     まんじろーくんが指差したのはたい焼き屋さんの旗。
    「たい焼きっ⁉︎人間は鯛丸焼きにして食べんの?」
    「違うよ〜あれは見た目が鯛なだけで、中身はあんことか色んなのが入ってるおやつだよ!」
    「あんこは知ってる!よく参拝にくるばあちゃんがおはぎ?ってやつ供えてくから!」
    「……たい焼き食べたい?」
    「っ!!いいの!?」
    「うん、じゃあ買いに行こっ」
     オレはまんじろーくんの手を引いて、たい焼き屋さんのお店へ向かった。
    「すみませーん!たい焼きくーだーさいっ」
    「あら、武道くんじゃない、いらっしゃい。今日はお兄ちゃんと一緒?武道くんお兄ちゃんいたのねぇ〜」
     たい焼き屋さんのおばちゃんはオレの後ろにいたまんじろーくんを見てそう言った。
    「あ、えと、オレん家の近所に住んでるお兄ちゃん!」
    「あらそう〜仲が良いのねぇ。そしたらたい焼きおまけしちゃおうかしら!今用意するからちょっと待っててね〜」
    そう言っておばちゃんは店の裏へと入っていく。
    オレは気になったことがあったので、まんじろーくんにコソコソと耳打ちした。
    「まんじろーくんって他の人にも見えるんだね」
    「あー。多分、あのおばさん神とか妖とか信じるタイプの人間なんだろ。そういう信仰深いやつにはオレらって結構見えるみたいんだよねぇ。あと今は人間に変化してるのもあるかも」
    「そうなんだ」
     オレはおばちゃんからたい焼きの入った袋を受け取ると人気の少ない公園を選び、近くのベンチに座った。
    「はい、まんじろーくんの分」
    「いっただっきまーす」
     あぐ、と豪快にたい焼きを頬張るまんじろーくん。
    「あつっ、はふ、もぐ……ん、うまっ!」
    「あは、気にいった?」
    「おう、すっげぇ好きっ!」
     はぐはぐと美味しそうに食べるまんじろーくんはとても人間じゃないとは思えない。ちょっと耳で出てるけど……
    「マイキー」
    「……三ツ谷」
    声がした方を見れば、まんじろーくんをマイキーと呼ぶ、銀髪で黒い羽が生えたお兄さんがオレたちの前に立っていた。
    「なに?こんな所まで追っかけてきて」
    「オレが言いたいこと、分かるだろ?」
    「あ?分かんねーよ」
    この場にピリピリとした空気が流れる。
    「まんじろーくん……」
    オレはまんじろーくんの服を恐る恐る引っ張った。
    「タケミっちごめんね!怖い思いさせて……行こう」
    まんじろーくんはベンチから立ち上がり、銀髪のお兄さんを無視してオレの手を引っ張って歩き始めた。
    「まんじろーくん、あのお兄さん放っといていいの?」
    「ん、まぁアイツまた来るし。あとで話すから大丈夫」
    そういうまんじろーくんの横顔はなんだか悲しげだった。
    それからオレとまんじろーくんは毎日毎日、森や街で遊んだ。キャッチボールしたり、森の川で釣りしたり。たくさんたくさん、遊んだ。
    「まんじろーくん!またねー!」
    「おう、またな」
    オレはまんじろーくんに手を振って、森を出る。
    放課後に森へ行き、まんじろーくんと遊ぶことはもう日課になっていた。そしてオレは夜ご飯の待つ家へ向かった。



    「出て来いよ、三ツ谷」
    「……マイキー、これ以上あいつをこっち側の世界に連れてきちゃダメだ」
    「……」
    「マイキーッッ!」
     すかさず三ツ谷に胸ぐらを掴まれる。
    三ツ谷は拳を振り上げたまま、停止する。
    三ツ谷が浮かべていた表情は酷く苦しそうで。「ッ分かってるよ……!!」



    「武道」
    「どうしたの?」
    家へ着くと、お母さんが玄関に立っていた。
    なんだか様子がヘンだ。
    「あなた、最近あの森へよく行くそうね」
    「あの森……?あっ!おキツネさまの神社があるところっ?」
    「……っ!……そう、会ってしまったのね」
     オレはお母さんの言っていることがイマイチ分からなかった。会ってしまったって誰に?まんじろーくんのこと?
     まんじろーくんと会っちゃいけないの?なんで?
    「武道、お願い。あの森へ行くのはもうやめなさい」
    「なんでっ!?やだ!!」
    「あっ、武道ッ!!」
     オレは家を飛び出した。
     まんじろーくんのところへ行かなくちゃ。オレのせいでまんじろーくんがワルモノにされちゃう……!
    オレは普段よりも速く速く走った。息切れして呼吸が来るしくなっても、足がもつれてコケても、すぐに立ち上がり走り続けた。



    「まんじろーくん!出てきてまんじろーくん!!」
    「タケミっち?どうした?」
    喋りたいのに息を整えるのに精いっぱいで、喋れない。
    「はぁはぁ……話したいこと、あって……はぁ…」
    「そっか。オレも丁度話したいことあったし丁度いーや」
    まんじろーくんはそう言うとオレの手を引いて神社にある小さい岩にオレを座らせてくれた。
    「落ち着いた?」
    「うん、ありがとう!まんじろーくん、お話ってなに?」
    そよ風がオレの顔を撫でる。
    「うん、あのさ。……もう会うのやめよ」
    「えっ!なんで?やだよ!!」
    「ダメなんだよ……オレは妖でお前は人間だから本当は関わっちゃいけないんだよ」
    そんなこと、オレでも知ってるよ。本当はまんじろーくんと一緒にいちゃいけないこと、森へ来ちゃだめなこと。でも、それでもオレはまんじろーくんとずっと一緒に居たかったんだ。
    「帰れ」
    まんじろーくんはオレの肩を掴み、くるりと帰り道の方へオレの体を向けさせる。嫌だと言っても両肩を力強く抑えつけられてまんじろーくんの方へ振り向けなかった。
    「いいか?歩き出したら振り返るなよ、絶対にだ」
    「どうしてっ……」
    「どうしても!とにかくダメなもんはダメだから!!」
    「やだ、まんじろーくん……っ」
    「いいから行けッ!それでもうここに二度と来んなッ!!」
    「なんでそんなこと言うのっ?オレ、まんじろーくんとお別れしたくない!!えっ、なにこれ……なんでっ」
    オレの足は勝手に森の出口へと続く道を歩み始めた。なんで?オレ帰りたくないのに、足が勝手に動いてる、止まりたいのに止まれない。またまんじろーくんが何かしてるの?
    「バイバイ、タケミっち」
    「まんじろーくんッッッ!!」
     上半身は動いたので、オレは振り返ろうとした。しかし誰かに肩を掴まれそれは阻止される。
    「タケミっち、ダメだ」
    「銀髪のお兄さん……?」
    「お前らは仲良くなっちゃいけなかったんだよ」
    「そんな、そんなのっ……」
     誰が決めたんだよ。なんでオレとまんじろーくんは仲良くしちゃいけないの?どうして?オレが悪い子だから?
    ……オレが、人間だから………
     
    行かないで、オレをおいて行かないで。
    まんじろーくん。



    その日、無理矢理帰らされたオレはやっぱりまんじろーくんに会いたくて次の日の学校帰りに森へ急いだ。しかし、昨日まであった神社は忽然と姿を消していた。
     オレは必死に探した。まんじろーくんと一緒に楽しい日々を過ごした神社を。でもどんなに探してもそこは見つからなくて。
    「なんでっ……絶対ここらへんにあったはずなのに……どうして無くなってるの……!」
    森のどこを探してもどれだけ走っても見つかることはなかった。
    「やだ、やだよぉ……っ、ぐず、し゛ー゛く゛……!!!!」
    「うるせぇな、ホントタケミっちは泣き虫だな」
    オレが今求めてやまないその声が後ろから聞こえた。そこにはバツが悪そうな顔をしたまんじろーくんが立っていて
    「やっぱりお別れなんて嫌だぁあ!!ううっうっ……」
    とオレがまんじろーくんに飛び付けばガシッと受け止めてくれた。
    「……そんなにオレと居たい?」
    「ずびっ……う゛……ズズッ」
    まんじろーくんはオレの涙を親指で拭い、こう言った。
    「じゃあ、オレの嫁になる?」
    「……?よめ……?ズビ……」
    「……鼻かめよ…」
     そう言われて、オレはズボンのポッケに入っていたポケットテッシュで鼻をかんだ。
    「まんじろーくん、よめってなに?」
    「知らねーの?オレと結婚して、お嫁さんになんの」
    けっこん。意味はわからないけど何となく聞いたことはある。確かお母さんとお父さんもけっこんしたって言ってたな。けっこんすると一緒に居られるってことなのかな。
    「およめさん……けっこんしておよめさんになればまんじろーくんとずっと一緒に入れる?」
    「そりゃ、まぁ」
    「じゃあなる!」
    オレがそう言うと、まんじろーくんにはこの返答が意外だったのか、目を見開く。その後、すぐにニヤリ、と笑みを浮かべた。
    「言ったな?」
    「うんっ!」
    そうしてオレはまんじろーくんのおよめさん?になることを約束した。
    ちなみにまだオレはガキだからすぐにはおよめさんにはなれなくて、オレが大人になったらおよめさんになれるらしい。今およめさんにならなくても約束だけで良いとまんじろーくんは言ってくれた。
    良かった、これでまんじろーくんとまた一緒に遊べるな。



    「三ツ谷、タケミっちオレの嫁にするから」
    「あぁ。……は?今なんつった?」
    「待て待て、お前正気か?タケミっちは人間だからこれ以上関わるのは諦めるって言ったよな?」
    「でもタケミっちが嫁になっても良いって」
    「……はぁ、あのなぁ。あの年頃のガキが嫁になることの意味なんて理解してるわけねぇだろーが」
    「でもなるって言ったもん。もう約束結んだもん」
    「マジかよ……」



     次の日、学校でアッくんにおよめさんについて聞いてみたら
    「は!?嫁って女がなるもんだろっ!?」
    と目を真ん丸にして驚いていた。
     お嫁さんというのはなにやら結婚をした人ととの子供を産むはいぐうしゃ?のことらしい。
    ……オレまんじろーくんの赤ちゃん産むの?
     どうやらオレはとんでもない約束をしてしまったようです。
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