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    agitomousu

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    agitomousu

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    べったーからの移植です
    👹×🦊で猫の日
    ⚠️ナチュラル同棲、🦊くんが猫化

    #foxakuma
    #FoxAkuma

    猫の日「いい加減にしろよ!!!!恋人のことをほっぽいて他に愛を振りまくような男をいつまでも愛せるわけないだろ!!」
    携帯も財布も持たず、コートすら置いてミスタは家を飛び出した。



    そもそも2人はセフレから恋人になったため、互いに性に奔放なのは承知の上だった。それでもうっかりヴォックスに惚れてしまって、セフレ止まりじゃなく恋人になりたいと願ったのはミスタだ。
    (オレはヴォックスと違ってなんの才能も無いし可愛げもないから、どうしたってヴォックスの愛を独り占めすることなんて出来ないのに…。一時とはいえ愛してもらえて恋人と名乗ることも許されるなんて、身に余る幸せのはずなんだ。
    でも…アイツがオレを甘やかすから、勘違いしてしまった。オレが愛される価値のある人間だって。こんなめんどくさい奴、もう嫌われちゃっただろうな。どうして聞き分けの良い恋人で居られなかったんだろう。)
    日付が変わる頃上機嫌に帰ってきたヴォックスからは甘ったるい香水の匂いがした。いつもなら軽口でも叩くところだったのにその香りのまま抱きしめられて、ミスタの中で何かがプツンと切れた。ただいまhoney、なんて言うヴォックスを突き飛ばして感情のままに怒鳴って出てきてしまった。
    スマホも財布も置いてきてしまったので途方に暮れていたミスタは、あてもなく歩いてきた道から逸れて路地に腰を下ろした。ネオンの光がほのかに入ってくる薄暗い路地が、今の自分にはお似合いに思えたのだ。
    冷たい壁を背中に感じながら立てた膝に額を乗せて丸くなる。家を飛び出してもミスタには行ける場所なんて無かった。表の道を歩く人の声を聞きながら、瞼を閉じて白い息を吐いた。



    ヴォックスは突き飛ばされたショックと酷く傷ついた表情のミスタが見せた涙にしばらく動けずにいたが、開かれたままの扉から入ってきた外気の冷たさにハッとするとコートを掴んでミスタを追って家を出た。
    「何を考えてるんだ今2月だぞ…ッ、コートも無しに外に居たらすぐに冷えきってしまう。」
    連絡の取りようのない相手を探すのは骨が折れるが、幸いにもヴォックスは親しい人間の気配を辿ることが出来た。
    (自分が人ならざるものである事に感謝だな。)
    しかし息を切らして辿り着いた路地にミスタの姿はなかった。代わりに彼が愛用しているサングラスが落ちていて、そのすぐ傍に赤毛の猫が寒さに震えながら丸まって寝ている。ヴォックスは一瞬眉をひそめるもなにか思い出したように納得するとサングラスを拾って、猫をミスタのコートに包んで家に連れ帰った。



    温かい。それに安心する匂いがする、オレが大好きな匂いだ。ヴォックス…?
    オレは毛布にくるまれてソファで寝てたようだ。隣ではヴォックスが本を読んでいる。シャワー浴びたのかな、髪が濡れてる。時折ページをめくる音が聞こえるとても柔らかな空間が心地よくて、思わず二度寝しようとしたところでオレは飛び起きた。
    (いやいや待って!?オレ、ヴォックスと喧嘩して家を飛び出したよね!?…でもあてなんて無くて適当に歩いて、路地に入ってそれから……。)
    それからどうしたんだったか。すごく寒かった事だけ覚えている。もしかしてオレ凍え死んだ…?これは幸せな夢、とか…?
    「あぁ、起きたのか。具合はどうだ?」
    ぐるぐる考え出しそうな所に聞きなれたバリトンが響いて、ついでにヴォックスの大きな手があごの下をくすぐる。
    それが気持ちよくて考え事も忘れて無意識にゴロゴロと喉を鳴らして温もりに擦り寄った。
    …喉を鳴らす?ゴロゴロと?そんな猫みたいな…。
    てかヴォックスの手でかくない…?いやいつもでかいけど、これはさすがにデカすぎるって。オレの顔の倍以上あるぞ。
    流石に不審なことが多すぎる。
    なぁ、と声をかけようとしたが口から出たのは人の言葉ではなかった。

    「にゃー。」

    ??
    いや聞き間違いだろ、この家では猫は飼ってない。
    もう一度恐る恐る喋ってみる。

    「……みゃぁ。」

    聞き間違いじゃなかった!ちょっと待ってくれよ!
    オレはソファから飛び降りると部屋の隅に置いてある姿見へ一目散に駆けよった。走っていても床の近さがおかしい。まさか、まさかそんなアニメみたいな……。

    鏡に映ったのは毛並みの揃った1匹の猫だった。

    WTF!?!?!?what is happning!!
    オレが猫になってる!!!!意味わかんないんだけど!?!?
    驚いている間にもオレの口からは「ンニッ!」と人ならざる音が発せられている。もう完全にパニックだ。すると完全に忘れていた存在から声がかかる。
    「Oops、急にどうしたんだkitty。さっきまであんなに甘えて来ていたのに。寝惚けていたのか?」
    ヴォックスも立ち上がってこちらに寄ってくるが、何せ猫と人間(鬼だけど)の身長差だ。威圧感がすごい。シンプルに怖くて弱々しい鳴き声を出してしまう。
    「そんなに怯えるな、ここは俺と恋人の家だ。お前がこんな寒い夜に外で凍えていたからうちに招待したんだ。そのせっかくの毛並みが荒れるのは勿体ないしな。」
    そんな冷静に説明されても何も分からないよ!
    この状況にまだ戸惑っているオレはなにか伝えられないものかと鳴いてみる。
    「にゃー!んみゃーー!!」
    「んん〜…腹が減っているのか?ミルクを温めよう、そんな隅に居ないでこちらにおいで。」
    鬼だし動物の言葉が分かったりしないかと思ったが、そんなに都合よくはいかないようだ。
    まぁヴォックスがオレだと気づいていないのなら、1匹のか弱い獣として親切を甘受しても問題ないだろう。それに驚くのにも疲れたし、確かにお腹も空いている。キッチンに向かったヴォックスの後ろをポテポテと着いていった。



    ミスタは猫舌にも優しい温かさのミルクを注いでもらって、それをチロチロと短い舌を使って飲み始めた。流石のミスタでも皿からミルクを飲むのは初めてで、勝手がわからず飲み終わる頃には口周りがびちゃびちゃになっていた。
    「oh、こんなに汚してしまって…。お前は以外とわんぱくなのか?もっと落ち着いて飲めばよかったものを。」
    ヴォックスは濡らしたタオルを持ってきてミルクまみれになったミスタの口を丁寧に拭いてやると、そのまま首根っこを掴んでソファに連れ戻った。
    ヴォックスの手は膝に乗せたもふもふの頭からしっぽまでを優しく往復する。時折あごの下をくすぐられるとたまらないと言った様子で喉を鳴らすのがとても可愛らしい。
    最近の2人は物理的にも精神的にもすれ違いが多く、こんなにも穏やかな時間を過ごすのはいつぶりだろうか。久しぶりの優しい温もりにミスタの思考はどんどん溶かされていくが、頭のどこかでは喧嘩ばかりの自分たちを思い出して寂しさを感じてしまう。
    (せめて今だけでも。ヴォックスを感じていたい。)
    ミスタじゃない今なら、獣の今なら、この美丈夫の愛を独り占めしても許されるだろう。
    ころりと膝の上で転がったミスタは無防備に腹を晒し、精一杯の甘えを見せた。
    「…なぁ…物言わぬ獣の子よ、愚かな男の話を聞いてくれるか?」
    子猫の愛らしい様子にヴォックスは眉を下げた微笑みを見せると、ふかふかのお腹に額をうずめて、少し震えたような声で話し始めた。
    「本当に幸せなことに俺にはすごく魅力的で素敵な恋人がいるんだ。凄く可愛い恋人だ。活力に溢れていて、自信満々に見えてその実誰よりも人からの評価を気にしている。…そうだ、あいつは自分に自信がないって分かってたのにな。泣いて怒鳴られてやっと自分の行動を恥じたよ。
    俺は400年生きる間に多くの人間を愛してきた。それでも恥ずかしながらこんなに胸を焦がすような恋は初めてなんだ。馬鹿な男だと笑ってくれていい、俺はあいつとの距離感が分からなかったんだ。あいつは自分ばかりが愛してると思っているようだが違う。俺がミスタを愛しているんだ、どうしようもないほど、嫉妬して欲しさに傷つけてしまうほど。本当に愚かだよな、こんなの幼子のすることだ。
    だって今まで数百人に分けていた愛は人ひとりに向けるには重すぎるだろう?結局それで泣かせてしまったのだから元も子もないがな……。」
    ヴォックスはミスタを持ち上げ、その小さな額に唇を落とした。魔法を解くのは王子様のキスと相場が決まっている。
    「悪かった。愛しているんだ、ミスタ。馬鹿な男にもう一度チャンスをくれないか。」
    ポンっと軽快な音がしてモフモフの獣は数時間前に喧嘩した恋人に変化した。ミスタは突然のことに目を丸くしたが、膝の上で向き合う形になっているヴォックスの瞳に捕らわれてしまって驚きの言葉は出せなかった。
    「ヴォックス……。オレだって分かって喋ってたの?」
    「あぁ、こんなにも惹かれる魂はこの世に2つも無いからな。」
    いつもなら軽くあしらえる歯の浮くようなセリフも、ヴォックスの心の内を聞いた後だとどうにも顔が熱くなってしまう。
    ミスタはバラ色に染まった顔を隠すように、肩に頭をぐりぐりと押し付けてくぐもった声を零す。
    「…オレ、勘違いしてもいいってこと?」
    「勘違いじゃない、お前は俺が生まれてから1番愛している男なんだぞ。もっと自信をもて。」
    「……なんて傲慢なやつなんだよ。」
    「こんなに素敵な恋人が居るんだ、傲慢にもなるさ。」
    「ハハッ、それはなんか矛盾してないか?……まぁ仕方ないから、許してやるよ。400年も生きてる偉大な鬼サマの寛容なコイビトだからね。こんな優良物件オレ以外にいるわけないんだから、泣かせてるんじゃねぇよ…。」
    ミスタの瞳から零れたものがいつの間にかヴォックスの肩を濡らしていたが、その雫は数時間前に見たものとは違って温かく優しいもので、ヴォックスは愛しい温もり強く抱きしめた。



    暫く無言で抱きしめあっていた2人だったが、ミスタがふと思い出したように鼻をすすって顔を上げた。
    「ヴォックス、シャワー浴びたんだろ?髪長いんだからまだ濡れてるぞ。」
    「あぁ、ドライヤーの音で子猫が起きてしまったらいけないと思ってな。俺は風邪をひくことも無いから。」
    「………。オレがやってやる。」
    少し迷う素振りを見せてから、膝を降りたミスタはドライヤーとブラシを取りに向かった。
    ヴォックスがミスタの髪を乾かすことはよくあるが、ミスタがやるのは初めてだ。受け身でいることの多いミスタが積極的に行動を起こすということは、いつもヴォックスに乾かしてもらっているのを嬉しく思ってくれているということだろう。世話を焼くのが好きなヴォックスの自己満足のつもりだったが、相手も喜んでいるのであればそれは嬉しい。
    戻ってきたミスタはソファの後ろに回ってヴォックスの艶やかな髪を掬う。
    「人にやってあげるのなんてオレ初めてだから、下手でも怒るなよ。」
    シャワーからそれなりに時間の経っている髪は濡れているというより湿っているに近い水分量だ。タオルドライは省略しても大丈夫だろう。
    ドライヤーを稼働させ根元から温風を当てていく。
    「熱くない?」
    「大丈夫だ、気持ちいいよ。」
    ぴょこぴょこと跳ねているヴォックスの髪だが、手ぐしを通すとどこにも引っかからずに指をすり抜けていく。これは頭を撫でる動作に似ていて、ヴォックスの頭を撫でるなんて新鮮で楽しくなってきた。
    ヴォックスの耳には風の音に紛れてたまに上機嫌な鼻歌が聞こえてくる。ヴォックス自身もこの幸せな空間に心が満たされていくのを感じていた。
    「なぁmy honey、知ってるか?日本では今日2月2日は猫の日というそうだ。にゃんにゃんにゃんの語呂合わせらしい。」
    「猫の日?それでオレが猫になってたってこと?いやどういう事だよ全然意味わかんねぇよ。」
    「お前がどうして猫になったのかは俺にも分からないが、たまにはそういうこともあるだろう。」
    ははっと笑うヴォックスに納得はいかないが、別に今言及しなくてもいいだろう。今は2人で幸せだな、と笑う方が大切だ。
    「はい、ヴォックス乾いたよ。」
    ミスタはサラサラになった髪にブラシを通し、満足気に指を滑らせる。赤の混じった漆黒はいつ見ても綺麗だ。
    「ありがとう。お前はガサツなところがあるから少し不安だったが、上手いじゃないか。」
    「ガサツは余計だ!素直に褒められないのか…ッ」
    振り返ったヴォックスに頭を引き寄せられて、口を塞がれた。不意打ちのバードキスは触れただけで離れていく。
    「髪を乾かしてもらうのはいいな、手つきから愛されているというのが伝わってくるようだ。おや、どうしたミスタ?そんなに赤くなって。」
    頭を抱えてしゃがみこんでしまったミスタは煽られて真っ赤な顔のままキッと睨むように顔を上げる。しかしヴォックスはこの世の幸せを詰め込んだような心底愛おしいという笑顔をしていて、ぶつけようと思っていた言葉は喉で止まってしまった。
    「愛してる、ミスタ。」
    「ん〜…!オレも愛してる!!」
    いつだってヴォックスが1枚上手で、手のひらの上で踊らされているような気がする。それでもこんな表情を見てしまえば、今のミスタには愛されているという自信を持つしか無かった。
    ぎゅっと抱きついたミスタは猫のようにぐりぐりと額を押し付けてヴォックスの香りを感じる。
    「そうだヴォックス、言い忘れてた。さっきの話だけどさ…」

    ──オレのことをバカにすんな、何百人分の愛だって受け止めてやるからな。
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