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    はなの梅煮

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    はなの梅煮

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    モトツネ様の屋敷に行った時に基忠の最中を見てしまったミチザネ。自分の屋敷に戻り、見てしまったことを後悔して悶々としている所にタダオミが参上…!どうするミチザネ…!
    みたいな話。これから忠道に変わるよ!


    モトツネ様、ほんの一瞬しか出てこない。

    一応続きは書いてあるけど、ちゃんと完結できるか怪しい…!今詰んでる!!!!

    基忠から忠道になるお話
    「見てはいけないものを見てしまった…」
     道真は自分の対屋で文机に突っ伏し、呻くように呟いた。
     思い起こすのは、一刻前。道真は基経の屋敷の廊下を歩いていた。その手には基経から借りた一冊の書。菅家にもなく、地位の高い限られた者しか読めない、一本御書所のものだった。
     あまりの嬉しさに寝る間も惜しみ、一日で読み終わった道真は礼を言うべく基経の屋敷に来たのだが、基経は来客の応対中であり、接見することは難しいとのことだった。書は蔵に直してくれたら良いと基経から伝言を受けた女官に連れられ、道真は基経の屋敷の廊下を歩く。
     藤原の屋敷の蔵にある書。貴重なものばかりなのであろう。菅家に置いていないものもきっとあるはず。
     浮き足立つ道真が長すぎる廊下を歩いている時だった。どこからか切羽詰まったような、苦しげな声が聞こえた気がした。
     道真は足を止めると周囲を見渡す。気のせいではなく、確実に声は聞こえる。耳を澄ましてみると途切れ途切れに聞こえてくる声は、すぐ隣にある床まで垂れている御簾の奥からだということが分かった。
     その時にやめておけばよかったのだ。けれど後悔先に立たず。道真は女官が先を行くにも関わらず、その御簾を緩く押し、そっと中を覗いた。
    「あ………」
     目に入った光景に、鈍器で頭を殴られたような衝撃があった。
     そこにはどこか冷酷さを感じさせる細い目を一層細くし、口元を吊り上げている基経。そして、くしゃにくしゃになった衣を申し訳程度に身に纏っている忠臣。その二人は御簾の外とは別の世のような淫靡な雰囲気の中、身を重ねていたのだ。
     獣のように地を這う忠臣に覆いかぶさる基経。その基経が身体を動かす度に、忠臣は鼻にかかった声を漏らす。
     主従関係である二人はそれ以上の関係でもあったのか、と道真はその光景から目を離せないでいた。いや、視線だけでなく手も、足も、道真の身体が切り離れたようにぴくりとも動かすことができなかった。
     そんな時、掠れた声で基経様…と呼びながら忠臣が顔を上げて――。
    「はぁ……」
     道真はそこで遡っていた記憶を振り切るように頭を振った。そして、身体の力が全て抜けていくような重い重いため息をつく。
    「絶対に目が合った……」
     そう、あの瞬間、道真と忠臣の視線は確実に重なったのだ。御簾の隙間から自分たちを見つめる道真に気づき、顔を一気に青くして目を見開いた忠臣の顔が頭から離れない。
     あの後、自分がどのようにして書を返したのか、どうやって菅家に帰ってきたのかの記憶がない。そのうえ、未だに心の臓はどくどくと暴れ回り、道真が落ち着くことを許さない。
     どうしよう…、と先程から幾度となく繰り返された思考。そして、その度同じ答えに行き着く。
     どうしようもないのだ。自分が口を出すことではない。自分ができるのはただ知らないふりをするだけ。今まで通りにしたら良いのだ。けれど、その今まで通りが難しいほどの出来事だった。
     はぁ……と今日何度目かになるため息をついた時、御簾の外から父である是善の声が聞こえた。
    「道真いるか」
    「はい、父上」
     文机から顔を上げて、声がした方を振り返ると御簾をよけて中を覗き込んでいる是善がいた。
    「道真、忠臣が来ておるぞ」
    「えっ!?」
     思わず叫ぶような声をあげてしまった。そんな道真に是善は不審げに首を傾げる。
    「……それ程驚くこともあるまい…。そなたに会いに来てくれたのだ。しっかり忠臣から自分の至らぬところを聞くと良い」
    「えっ!?ちょ、っと…まっ、待ってください!父上――」
     あの出来事から一刻しか経っていないのだ。今から忠臣に会うなど、心の準備は何一つできていない。
     道真は慌てて立ち上がる。文机に膝が当たり、がっと大きな音を立てたが、そんなことはどうでもよかった。
     とりあえず、今この状況で忠臣と二人きりで会うことは絶対に避けたい。
     道真は引き止めるように父の元へ駆け寄った。けれどその父の後ろには今一番会いたくない人物の姿。
    「道真」
    「たっ…忠臣……」
     道真を見つめる忠臣は普段の穏やかな笑み。けれど、道真はその笑みが恐ろしかった。
    「っ……」
    「まぁ、立ち話をせずともゆっくりと過ごせば良い。忠臣、道真を頼むぞ」
    「はい、是善先生」
    「ちっ、父上……!」
     道真と忠臣に何があったかなど知る由もない是善は無情にもいつものように穏やかな笑みを浮かべ、踵を返した。そんな父を引き止めるために道真は手を伸ばす。けれどもその手は是善に届くことはなく、それどころか横にいる忠臣によって掴まれた。
    「ひっ…」
    「道真、ゆっくり話をしよう」
    「わ、私は、その……い、今から用事があって……」
    「白梅殿からは道真は今日はずっと菅家にいると言っていたと聞いているぞ」
    「ゔ……」
    「まぁ、ゆっくりと話をしようじゃないか」
    「は、はい……」
     そう言ってた忠臣は顔に微笑みを浮かべてはいるが、目の奥は全くといって良いほど笑っていない。そんな時の忠臣の恐ろしさをよく知っている道真には、引き攣った顔で頷くことしか選択肢はないのだった。




     
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