ルナ番外編 アベルの話このラクシアとは別の世界、俺は神に仕えていた。
誰よりも神を信仰し、懸命に仕えていた、ある日俺と弟のカインは神に捧げものをした。俺は丹精込めて育てた作物を祭壇に乗せ、弟は肥えた子羊を祭壇に捧げた。
すると神は俺の捧げものには見向きもせず、弟の捧げものにだけ目を止めた。
許せなかった、なぜ、こんなに熱心に仕えている俺の捧げものが無視されて、弟のほうが優遇されているのか、恨みと憎悪だけが俺の体を支配していった。
俺は弟を野原に呼び出して殺した。
神は弟の行方を問われた、やはり俺より弟のほうが大事なのか?
「知りません、俺は弟の番人なのですか?」
しかし、大地に流れた弟の血が神に弟の死を伝え、俺の殺人が神に伝わってしまった。
1953