制服「なあ、俺こないだ脱童貞した!」
「マジかよ!」
「聞いてくれよ!相手は大学生でさ、巨乳!もう凄かったんだわ!」
「年上かよ~、いいな~。」
横から聞こえる会話に思わずロナルドは寝たふりをしながは耳を澄ませた。
エッチな話には興味が俄然ある。他のクラスメイトだってそうだ。
休憩時間のざわめきなんて、一瞬に静まりソワソワとした空気が漂った。
「ブラジャーって外せるもんなん?」
「余裕!だってあんなん学ランの詰襟外すのと似てるしな!」
なるほど、学ランの詰襟と似てんのか。ちょっとだけ試したい。無論誰かで、だ。
ロナルドは沸き上がる好奇心からあることを考えた。
横でワイワイと盛り上がるクラスメイトの話なんて耳に入らなかった。
放課後、ロナルドは、下駄箱で待っていた半田の手を引っ張ると、そのまま人気のない場所を目指した。
通学路にあるコンビニを通りすぎて、住宅街の細い道。この先にはデカイ犬が居て通行人に無差別に噛みつくらしくて生徒が皆避ける道だった。
息を整えると、ロナルドは半田の両肩を掴んだ。
「半田!一生のお願いだ!お前の学ランの詰襟外させてくれ!」
「詰襟を外させろって貴様はアホか。自分のを外せ。」
「いや、自分のじゃ意味ないんだって!将来俺に彼女が出来た時のために練習したいんだって!」
そう叫ぶと半田が怪訝そうな顔をした。
「貴様が学ランを着てる女と付き合う予定だろうとも俺が協力する必要はない。」
「違ぇよ!!ブラジャー外す練習がしたいんだよ!!お前も彼女出来たら困るだろ!!お前も俺の外していいからさ!!」
そう叫ぶように言うと、半田がゴミを見るような目でロナルドを見た。
「…変態だな、通報してやる。」
なんて言ってた癖にだ。
住宅街の車も通らない狭い道。電柱に隠れるようにして、ロナルドと半田は二人で向き合っていた。
「じゃあ、その、やるぞ…。」
「…早くしろ。」
詰襟を外すだけなのに妙に緊張する。半田の詰襟に手を掛ける。
あっさり外れた詰襟から、半田の首が覗く。じわりと垂れる汗が見えた。ああ、勿体ないなんて親指で拭う。
「ッン、」
小さく呻いた声に、心臓の動悸が激しくなる。彼女とかもうどうでもいい。顔の赤い半田の目が潤んで見えた。半田って可愛いかもしれない。
自然と顔を近付いていく。ふ、と互いの息が唇に当たる。唇を合わせると、半田の目がゆっくりと閉じられた。
急に、ガシャンガシャンと金属音が響く。驚いて音のする方向を見ると、大型犬が暴れていた。
少しだけ安心して息を吐いて互いに顔を見合わせた。
「あっ、その、ごめん…。」
「…別に構わん…。」
「半田、それって…」
その時、犬の鳴き声が近付いてきた。激しく吠える鳴き声にギョッとして犬の方を向くと此方に向かって走ってきた。
「ヤベェ! あの犬リード繋いでねえぞ!」
「貴様が変な事をするからだろうが!」
「俺犬には何もしてねえよ!お前にしかしてねえわ!」
半田に思い切り鳩尾を肘打ちされたせいで、逃げ遅れたロナルドは、犬に噛み付かれて制服のズボンが悲惨な目になったのだった。