やはりあのとき殺しておけばよかったのだ。目の前のマイクランも、同じことを思ったに違いない。
「見られていると興奮します?」
また締まった。シルヴァンは愉しげに笑う。
「それとも、生きていたことが嬉しい? 兄上」
大きく広げたマイクランの脚の間を陣取り、シルヴァンはにこやかな顔でマイクランの尻穴に遠慮なく性器を突き刺す。勃ち上がり震えているマイクランの陰茎を時折撫でては、ずくずくと腰を押し進める。ぐち、ぐち、と粘着質な音が響くたびに、聞いたことのない酷く弱々しい声が口枷の隙間から漏れ出る。
「あっ、ああ……イきそっ……」
「っ、ん、んぐ……ぅうっ」
「マイクランッ、あ、ああ、気持ちいいよっ! もっと締めてっ……んぁっ!」
最奥に入り込んだ陰茎の先からどぷりと精液が流し込まれる感覚に、マイクランが酷く体を捩る。ぶるりと震えたのはマイクランの陰茎も同じだった。
「────ッ!」
嫌でも溺れてしまう快楽にマイクランの目尻が滲む。ふざけるな、という気持ちを込め睨み上げても、シルヴァンは気にも留めず、柔らかく笑むばかりだった。
「泣くほど気持ちがいいみたい」
達したばかりにも関わらず尻穴を動き回り、かと思えば不意に前立腺をぐうと押し上げ、その間にもマイクランの陰茎を撫で無防備な首筋を舐めながらあちこち責め立てる技量にイヴォンは感嘆すら覚える。昔から物覚えはよかったのだ。教え込んだことをこんなにも後悔するとは思いもしなかった。
「ぅ、ふ、ぅう、ん……ッ!」
咥え込まされた陰茎がずるりと抜け出る感覚にさえ体が揺れる。首筋の痛みが胸、腹、それから腿へと移動をする。赤く咲いた所有の証を見せつけるかのように、シルヴァンがマイクランの体を抱き起こす。
「これ、取ってあげますね。俺は優しいから、久しぶりの会話ぐらいだったら、許してあげますよ」
口枷が外される。実に数日振りだった。マイクランは思いきり罵る。
「貴様、ふざけ──ッ!」
両膝下に手を入れられたかと思えばぐいと脚を広げられ、思わず悲鳴を上げてしまう。達したばかりの陰茎すらも涙をこぼして震えている。
「や、やめ……見るな、見るな……イ──」
「駄目ですよ、ちゃんと見てもらいましょう? 俺を咥え込んでた兄上の可愛い可愛いケツ穴」
押し広げられたマイクランの尻穴がひく、ひくと蠢いている。全身を拘束されたイヴォンに、この狂宴を止める術はない。固く目を瞑り、顔を逸らすことしかできずにいた。
「欲しいの?」
全身に血がのぼる。止めろと思うのに、マイクランの意思を無視してそこは痙攣を続ける。これでは本当に、早く塞いでほしいとねだっているかのように見えてしまう。
「ここにあいつのチンコ、欲しいの? 兄上。こんなひくひくさせちゃってさあ」
呼称が元に戻る。熱を帯びたシルヴァンの吐息が首筋へと触れる。
「おい、なに閉じてるんだよ。ちゃんと見ろよ。兄上が寂しがるだろう」
再びきつく吸い上げられると同時に腿に食い込む爪先が霞んでいく思考を鮮明にする。
「見ろって言ってよ、兄上。ねえほら早く!」
「ッ……見、ろ……」
「名前も呼んであげたら? あの人、なんて言うの?」
言葉を詰まらせ、マイクランは目を閉じた。睫毛の淵に付いていた涙がふるふると震えて、その頰にぽとりと落ちる。
「見て、くれ……イヴォン……ッ」
消え入りそうな声だった。
「そうそう。そんな名前だったよねえ、兄上? なあ、兄上がこう言ってるんだ。見てやれよイヴォン」
昔とはなにもかもが逆転していた。名を呼ばれたイヴォンがゆっくりと目を開ければ、そこには一度だって見たことのないマイクランの、酷く弱々しい姿があった。
「よくできました」
ちゅ、とわざとらしく音を立ててマイクランの耳に口付けを落とす。マイクランの口からはもう喘ぎですらないただの泣き声が漏れている。
「ご褒美に、と言いたいところだけど……」
腿を掴んでいる右の手が尻穴へと滑るようにして落ちる。ぶちゅ、と白濁塗れの穴が鳴く。
「せっかく俺の形に馴染ませたんだ。他の男のなんてもう、咥えさせねえよ」