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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    最後通牒

    頑張れ門倉くん門倉雄大は嫌がらせに遭っていた。
    それが来るか、来ないか、と様子を窺っていたのはそうだが、結果として今とてもシンプルな嫌がらせを受けている。
    ナンバーディスプレイは非通知か、知らない番号。番号が表示される物については毎回数字が変わっている。
    「あ、あの…出なくていいんですか?」
    「非通知には出ません」
    組み敷いた恋人が明滅を延々と繰り返す携帯に意識を散らす。出たところでどうなる。誰が電話の向こうにいるのかはもうわかりきっていた。


    賭郎の中で大規模な設備改修があった。本部内の物品に対する物もそうだが、一番大がかりだったのは立会人の体内にある発信機の交換だった。
    施術に当たる部門の人間からその場に集まる事が出来た面々は全員説明を受ける。
    これまでは技術面の問題で発信機とは言えど平面的な、あくまで地図の上での位置が分かる程度だった。
    それが今回、体内に設置してから時間が経過した立会人から新しい物に取り換えられるにあたり、地上からの高さまでを計測し衛星に送信することが可能となった。
    勿論、これは先日賭郎が新たな力を飲みこんだ成果だ。
    特定のフロア数を表示できるわけではないようだったが、日本の建築基準や該当の建築物の情報からフロア数と所在する部屋とその位置までを割り出すことが可能らしい。
    これが技術革新か、と感心するつもりはなかった。それよりも、嫌な予感がひしひしと迫っていたから。

    *
    「さっきから携帯にずっと電話来てません?賭郎からじゃ…僕は大丈夫なので出てくださいよ」
    マナーモードにしても、サイレントにしても、伏せても、着信があるのはすぐにわかる。
    やり取りのある番号は登録してあるし、特定の番号から何度もかかってくるのであれば流石に出る。しかし、見ていた限り同じ番号からは二度と掛かって来てはいない。
    賭郎が支給している端末は特定の回線からは端末の個別の設定を全て無視し、鳴動し、自動的に受話になる。現状でそれはない。だからこれは、嫌がらせなのだ。

    「…」
    「あー、もう!」
    物言わず、動かず、の門倉にしびれを切らした梶が携帯をサイドテーブルから取り、「あれ、切れた」と言いながら門倉に携帯を差し出す。
    「なんで出ないんですか?こんだけ着信しっぱなしで、大事な用事だったらまずいですよ」
    梶の言い分は真っ当だった。呼び出しなら応じるべきで、そうでなくても着信の無視は褒められたものではない。
    だがここは門倉の自宅なのだ。梶にも先日発信機が入れられた。つまりその電波を拾って表示する画面にはこの部屋に二人が居る事が表示されている。
    門倉の前日までの居住区内での動きを何日か分再生すれば間取りと物の位置なんか、すぐに分かるだろう。夜、休日前、間取りの一番奥、なにも無い部屋の真ん中に二人で並んで座っている訳はない。

    携帯電話のディスプレイがまた光る。梶は少し驚いたように目をみはり、焦りながら「出てください!」と携帯を門倉の胸に押し付けた。
    「―—”お屋形様”って表示されてます」

    嵐のような着信の中で初めて表示された名前。最後通牒だった。
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    トーナ

    DONEいとしい傷痕の対となってる門梶です。疵に贈るキス


     深夜に目を覚ました梶が最初に気づいたのは裸の背中に当たる大きな存在だった。梶の背中を覆うようにして眠る門倉がすぐ隣にいる。よほど深く寝入ってるようで寝息が耳元に当たる。そっと見上げると普段は鋭い隻眼が閉じられた、穏やかな寝顔があった。思いがけなく跳ねた胸の鼓動を宥めつつ、貴重な時に起きられた自分を褒めた。眠る門倉を見るのが小さな喜びであり、楽しみだった。
     ゆっくり身体の向きを変えて門倉に向き合う。前髪の分け目から見える、皮膚を抉ったような大きな傷痕。梶が雪出との勝負に負けた後に出来たものなのだと聞いた。傷が元で人格や体調に影響が顕れている。プロトポロスで見せた片鱗はたしかに門倉ではない、『なにか』だった。手を伸ばして優しく撫でる。起きないのを逆手に取っていたずらに指を這わせる。


     最初に出会った時とは違うかもしれない。それでも、根幹は門倉なのだと思う。梶は彼が普段から『なにか』を抑えつけているのをひそかに感じ取っていた。梶の前ではなんでもないように振る舞う。そんな彼を前に自分も知らないフリをした。何も出来ないのがもどかしかった。
     感触を感じるのか、眉間にしわ 615