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    ヒロ・ポン

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    ヒロ・ポン

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    門梶。門倉の童貞卒業を捏造しました。

    Youは何しに人妻に何の気なしに捲っていた雑誌で、二人の趣味はやっぱり違う、という話になった。
    梶の荷物を置くスペースを作るからとクローゼットを漁っていたつい先日にワードローブは見ていたが、立会人としての装い以外ではデートの時の服と寝巻以外はほとんど見た記憶がないので興味深かった。
    「なんか、開襟シャツに太いズボンで、金のチェーンにセカンドバッグが似合いそうですよね」
    「おん、取り立てのイメージに引きずられすぎよ、それ」
    どちらかというとこっち、と捲った先のページで指が叩いたのはもう少しおとなしい恰好だった。
    「なんでも似合いそうですよね…革ジャンとか好きなんですけど周りからは不評で」
    「合うものを選べばいいんですよ。厚み、重さ、仕立て…色々あるんですから」
    「じゃあ今度選んでください」
    「ふふ、いいでしょう」
    ベッドの上で肩を寄せ合い雑誌を捲るなんて実に恋人らしいじゃないか、と柄にもないことを自覚しながらも門倉はこの時間を楽しんでいた。

    「門倉さんは好みの服装とかありますか?リクエストあれば今度のデートの時に着てきます!」
    「なら、島に行くときに迎えに行ったでしょう、あの恰好がいいですね。」
    しま、と復唱した。
    もう記憶もかなり薄れているが、たしかあの時は、と雑誌の中で似た格好を探す。
    「こんな感じでしたよね。ハイネックにジャケットだった気がする」
    「そうですね。人妻みたいでぐっと来ました」

    へえ~、とは言ったが、どうにも無視できないワードが含まれている。
    そのあと数拍置いても梶はそれを流すことはできなかった。
    「人妻…」
    「…」
    「人妻って何ですか?」
    「…」
    門倉はそれはそれは深く煙草を経由して息を吸い込んだ。
    「ちょっと煙草置いてください。どこに人妻を感じたんですか?ああいう恰好の人妻に興奮したことがあるんですか?」
    「…」
    「かどくらさんって隠し事と嘘はお上手なのに端っこの始末は下手ですよね」
    「…若い時分の事です」
    「何歳の?」
    「…」
    「ねえ」
    「高校…」
    もう指で持つのも限界になっていた煙草を灰皿で潰し門倉は座り姿勢からそのままずるりと床と平行になった。
    すかさず梶はその上に馬乗りになる。全体重をかけても門倉に勝てるとは思ってはいないがそのままずしりと体重をかけた。
    「もしかして童貞卒業ですか、それ」
    「いやそれは違う」
    押し倒すような恰好のまま梶はじっと詰問する。
    「童貞はどこで?いつ?どんな人?」
    「梶様、このような事聞かれても楽しくないでしょう」
    「気になるから聞いてるんですよ。僕の事はなんでも調べたくせに」
    門倉からはぐうの音も出ない。実際、調べて分かる事もすぐにはわからない事も一通りは調べているのだ。そしてそれは梶にも知られている。
    「ねーえー、かどくらさ~ん」
    割れた腹筋をボタンかなにかであるかのように梶が一本指でつついていく。
    こうなってはキスで黙らせても後を引き、腰が砕けるまで抱いても回復した後にまだ聞いてくる。
    門倉は触れようとした手の甲をきつくつねられたまま、早々に観念して白状した。
    「…地元に、初物喰いの女がいた訳ですよ」
    「ほうほう」
    「中一の時にのっかられて、それで終わりです」
    「中学!?不良ってみんなそうなの!?」
    それだけ騒ぐと梶は門倉の胸に思い切り倒れ込んだ。支えられるという前提の勢いだった。
    「…で、人妻のほうは」
    門倉は内心で舌打ちした。初物喰いの女に中一で筆おろしをして頂いた体験談では人妻の輝きは消えてくれなかったのだ。
    「地元に団地があって…まあ…そこで…」
    「不倫じゃないっすか…硬派な不良も下半身には負けましたか。絶対それその一回限りじゃないでしょ」
    「…」
    ぐ、と唸ることもできなかった。正論も正論であった。
    「そっかあ、門倉さんって年上の方が好きだったりします?寝取りのほうが興奮するとか」
    「…そういった趣味はありませんが、交際の幅は広かったとだけ言っておきましょう」
    「ねえ、僕で満足できてます?自分で言うのもアレですけど…技術とか全然ないですし、包容力とかもないですよ」
    胸板にぐりぐりと額を押し付けながら梶が脚をばたつかせる。身体がすっかり門倉の上に乗った隙に膝を立て梶が反応して抵抗するより早く身体の上下を反転させた。
    「乗られる分には年上がよかったですが、乗る分には年下が良いもので」
    「門倉さん、すっごい最低な事言ってるんですよ、今」
    また、返す言葉もなかった。

    「…でもいいですよ。僕は誰の人妻ですか?」
    「…ん?」
    「人妻物がいいのはわかりますよ。僕にそういう趣味はないですけど、結構本数出てるからメジャーな性癖だと思います。心配しないで下さい!」
    「お、おう…」
    急に追及してきたと思えば急に盛り上がって来た。梶のその上下幅に若干戸惑いながら、門倉は梶からのキスに応えた。
    誰のと言えば嘘喰いのだろう、とは口が裂けても言えなかった。


    次の約束の時、梶は物の組み合わせこそ違えど「あの時」のような恰好でピックアップ場所に表れた。
    「こんにちは、雄大くん」
    「…は、」
    セットアップにハイネック。別に女装などをしているわけではない。
    待たせてごめんね、などといいながら助手席に乗り込んで来た梶は普段と様子が違った。
    門倉はすぐにその意図する所を察し、開けたままだった灰皿の蓋をパタンと閉じて車内の換気を強くした。
    「今日は泊まれるの?隆臣さん」
    門倉がノってきた事に梶は満足げに笑う。
    それから、「旦那は今、出張中なの」と言いながら微笑んだ。

    その夜。居もしない架空の夫への背徳感に二人で溺れたのは言うまでもない。

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