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    のーらん

    @achaacha1607ss

    創作倉庫
    絵も小説も書く。
    🐑右にしがち

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    のーらん

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    👹×⚡️🐑
    👹🐑
    友情出演🔮
    ナチュラルに同棲してる。
    NotふーちゃんYes⚡️🐑。
    喧嘩ップルのはずなのに砂糖吐くほど甘いです。
    全年齢

    #Akumasutra
    #Cybussy

    大嫌いだ!!「ふーふーちゃんはヴォックスのどこが好きなの?」
    「は?」

    そう浮奇から聞かれたのが昨日の出来事だ。
    ヴォックスと付き合う前から色々と相談に乗ってもらっていたのは浮奇で、その話もただただくだらない近況報告の延長線にあった。

    「別にいいだろそんなん、興味あるのか?」
    「あるに決まってるじゃん!!あと、ちゃんと好きなところって考え直して見ると案外面白いかもよ、惚れ直すかもだし。」
    「……今更か?」
    「今更だからだよ」
    マンネリ防止も兼ねて、ねと酷く楽しそうに言われたがよく分からない。あの後からずっとその言葉が一晩寝ても頭にこびりついていた。

    そういえば、あいつの好きなところを具体的に考えたことはなかった。気づいたら隣に居て、お互いに罵りあいながらいつの間にか、ここまで来ていた気がする。

    起き上がると既にヴォックスはいなくて、朝ごはんを作っているのだなぁとぼんやりと思いながら体を持ち上げる。

    リビングとキッチンに出ると朝からエプロンをつけて料理する姿があって、特段不安だった訳でもないのに心がほっとする感覚がした。

    「おはよう寝坊助サイボーグ、顔を洗ってこい。あとバーニャカウダソース作ったら用意できるぞ。」
    「ん……いい匂い、だな。」
    「オムレツ、ふわふわのやつにした。中にチーズも入れた。」

    なんとなくそのままキッチンの方に向かってみれば手で持って食べるのに丁度よく切られた色とりどりの野菜や、ホカホカの綺麗なまあるい黄色のオムレツとみずみずしいレタスが1つの絵画であるかのように綺麗に盛り付けられている。たかが自分らの朝食であるのにも関わらずだ。

    全くと言っていいほど料理の必要性や重要性を感じていない自分でもその一つ一つ丁寧に作られ、盛り付けられたそれは、明らかに愛情がないとできないそれで、なんだかよく分からない感情で胸をぎゅうと絞られた。

    こいつの、まるで魔法や呪術や、超能力のように美味くて綺麗な料理を作り出す手や指は、割と嫌いでは無いかもしれない。

    「ほら、口を開けろ。」
    「ん、」

    寝起きで上手く回らない頭のまま、言われた通りに口を開けてやると舌の上にスプーンが乗せられる。アンチョビとバジルソースが特徴的な、どんな野菜にでも合うように作られた俺好みのバーニャカウダソースだと気づくのに時間はかからなかった。

    「どうだ?」
    「……いつもと変わらん。」
    「じゃあ美味いってことだな。」
    「とうとう耳まで遠くなったか老いぼれ悪魔。」
    「全く素直にならないトースター風情のために言葉を汲み取ってやってる俺に感謝してもらいたい。まだトースターの方が意思表示がわかりやすいな。」

    そう言って軽く頬をつねられる。結局こうやって、自分の言葉の裏に隠した本心までしっかり受け取ってくれてしまうところも、まぁ嫌いではない。

    「ん?どうした?」

    何も言い返してこない俺を心配したのか急に顔を覗き込まれて、咄嗟になんでもない、と返してそばを離れる。

    顔を洗って、そのまま慣れた手つきで小さな茶色いジョウロに水を注いだ。部屋の隅に置いた観葉植物の喉を潤してやるためだ。
    完璧な俺のワガママによって置かれたこの植物は部屋でゆっくりと呼吸を繰り返し、それが部屋全体の生命力に繋がっている。
    ヴォックスも最初は大きすぎるだの、本当に世話をするのか、など多少の文句こそ言ったものの、最近は少し良さがわかるようになったのか、大きな葉をたまに撫でていたり、水をやる所を見かける。
    土に水が軽く染み込んだことを確認してからまたキッチンの方を見やると、黒々とした濡れ羽色を目を引く朱色で束ねた髪の毛が目に止まった。

    あいつの髪の毛も、嫌いじゃない。

    自分とは真反対な黒髪に赤の艶。
    自分を押し倒した時にどこにも逃げられないような檻になったり、自分を抱く時に、鬱陶しそうにそれをかきあげてゴムでまとめるその仕草に目を奪われたり。
    あいつは髪だけで自分を翻弄しているのか。
    そこまで考えて頭を振った。自分の思考で脳が溶けそうだ。

    「おい、並べるの手伝ってくれ。」
    じっと見ていたら、急にくるりと振り返ってこちらを見たので動揺がバレないように悪態をつくしかできなかった。
    「……自分でやれよ、たかが2人分だろ?」
    「……ほぉ?」

    エプロンを外しながら意味ありげな目線で近づいてくるヴォックスに動けずにいると、その低く甘ったるい声で楽しそうに囁かれた。

    「せっかく俺を熱い視線で見ていたことを流してやろうと思ったのになぁ。」
    「っな……!!」
    「ほら、食べるぞ。冷めると美味さが半減する。」

    腕を掴まれて、テーブルへと連れていかれる。全てがあいつのペースなようで悔しいが、もう何を言っても今は墓穴な気がして押し黙った。
    束ねられた毛束が揺れる度、軽く振りかけられた香水が鼻腔をくすぐる。手首を掴んでいる手から無機質なそれに伝わる体温にも意識がいってしまいそこからじわじわと熱が広がっていく感覚さえしてきた。

    香水と、体温もこいつの好きな理由のひとつかもしれない。

    結局、いそいそと2人で用意した料理の前に腰掛けて、目の前の色とりどりの料理を眺めてから、オムレツを1口、口に含んだ。
    好きなところを考えろ、なんていうから色々並べ立ててみたら、口の中のオムレツと同じぐらいふわふわな少女漫画もびっくりの自分の思考に嫌気がさしそうだ。さっき触れた手首から顔にまで熱が伝染したらしい。機械なのに律儀なことで。

    多分、全部が好きだ。この人の。
    この人の存在を示す何もかもが好きだと気づいてしまった。

    「好きだろう?」
    「ッ!……はっ!?何言ってんだ!!」
    「そんなに動揺することか?オムレツ、いつもと同じように作ったはずなんだが……。」

    つい心を読まれたようで声を荒らげてしまった。それが自分の勘違いで、普段考えないような脳天気なことで頭をいっぱいにして、分かったことは目の前のきょとんとしたおとぼけ顔の鬼の全てが好きだと言う事実で。

    もう何もかもがキャパオーバーしてしまった。
    がたん、と立ち上がり口を開く。

    「嫌いだ。」

    「……は?」
    「お前の鬱陶しい髪も、俺を見る目も、料理を作る手つきも、俺を分かったような口を聞くところも、その体温も、お前の匂いも、甘ったるく俺を呼ぶ声も、なにもかも全部っ!!」

    心臓が、うるさい

    「死ぬほど大っ嫌いだ!!!」

    言った、言ってしまった。
    顔が燃えてるんじゃないかと思うほどに熱い。
    手は握り締めすぎて指が食いこんで痛い。顔があげられない。
    ヴォックスの全部が、大好きでたまらないのに口から出る言葉が憎い。
    とうとう呆れられたのかもしれない、と恐る恐る顔をあげようとするとぶはっ、と吹き出す声。

    「ぶわっはっはっはっ!!!」
    「ぅ、な、何がおかしい!っんぅ。」

    予想もつかない反応に文句を言えば愛おしくて仕方ないと言わんばかりの瞳で見られて、立ち上がり、こちらへと来て性急に口付けられる。ちゅ、ちゅ、と啄むようにキスをしながら、その体温でゆっくりと抱きしめられた。より体温を感じられるように、とヴォックスはいつも抱きしめる時は胴体にピッタリと身体を押し付ける。

    「ファルガー、残念ながらその言葉は」
    「俺にとっては、俺がお前を抱く時にお前にかける数々の言葉と同じくらい熱烈だぞ」
    「俺もお前のそういう所まで含めて愛してる。」

    ああ、やっぱりこいつのこういうところが
    大嫌いで、大好きだ。

    抱きしめられた熱とその言葉にぽろぽろと言葉が溢れ出る。

    「お前が、そうやって甘やかすから、」
    「甘やかされておけばいいだろう。」
    「やだ、俺だって、お前が……きなのに。」
    「伝わってるよ、ファルガー。大丈夫だ。そういうとこまで含めて好きだと伝えたはずだが?」
    頑張ったな、ありがとう。
    と自分を愛おしそうに扱う声音で囁かれ、ぽんぽん、と背中を叩かれる。
    お前がそういうことをするからいつも俺は甘えてしまうのに。

    「う、このクソ悪魔っ!そんな風に言われたら、もうどうしようもなくなる、だろ……。」
    「ん、わかった。じゃあ本当にたまでいいし、お前がきつくないときに、ちょっとでいいから本音を見せてくれたらもっと嬉しくなる。」
    「……ん。」
    「それでいいか?」
    「ん……。」
    「よし、いい顔になったな。」
    「ヴォックス」
    「ん?」



    「あいしてる」



    「っ〜〜!やっぱいい!!たまにでいい!!思ったより破壊力が強すぎる。」

    少し珍しい顔が見れたのでもうなんでもいいかという気持ちにすらなった。はははっ!と声を上げて笑うとうるさい、と言わんばかりにまた触れるだけのキスが落とされる。

    オムレツのチーズはすでに少し固まっていたし、冷めていたが、その味はいつもより美味しい気がした。
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