世界はそれを、 そうなった理由をひとつ挙げるとするならば、単純に寝惚けていたというのが一番だろう。
コギトが目を覚ました時、隣にはぽっかりと空いた一人分の空白があった。眠りに落ちるときにはそこにあったぬくもりの名残は既にかすかにあるのみだ。
「――ん、」
寝返りをうち、カーテンの隙間から漏れ入る光にもう夜はとうに明けていることを知った。
けれど身体を起こす気分になれず、まだ半分微睡の中に浸っているコギトの耳に、小さくハミングが聞こえる。閉まり切らないドアの向こう、水が流れキュッという音がして止まると一定のリズムで包丁がまな板を叩く音も。
それらはコギトの脳裏に一つの光景を鮮やかに浮かび上がらせる。
昨夜、抱き合い共に眠った相手――ショウがコギトを起こさないように先にベッドから抜け出して朝ご飯の準備をしてくれているのだ。
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