Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    みゃこおじ

    もえないゴミ箱

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 35

    みゃこおじ

    ☆quiet follow

    溝中といぬぴがわちゃわちゃしてる話

    【ココイヌ】青春とチュープリなんとなくまだ着慣れていない黒い特攻服で集会に顔を出すと、パァッと表情を明るくした武道が駆け寄ってくる。イヌピーくんよく似合いますね!と興奮したように鼻息を荒くし、手放しに褒めてくれるのはなんとなくむず痒い。
    今まで黒龍の真っ白い特攻服にしか袖を通したことのない乾は鴉のような色をした黒の特攻服にまだ慣れていない。軍服を模したようなスタイリッシュな10代目黒龍の特攻服は、九井が歴代の黒龍特攻服を参考にして作ったものだった。大寿から、機能性があって見た目のいいやつなどといった様々な注文がつけられたらしいが、デザインから業者への発注まで全て九井がいつの間にか手配してくれていた。
    カッコいいとは思いつつも、いかんせん白は汚れが目立った。返り血や泥汚れでドロドロになるなんて日常茶飯事で、特に、特攻隊長を拝命していた乾はその名に恥じないように最前線で拳をふるっていた。洗濯するのが面倒で、ドロドロになった特攻服はまとめてコインランドリーにぶちこむのが常だった。しかし、東卍の特攻服は野暮ったくて特攻服らしい特攻服ではあるが、闇夜に紛れる黒は汚れが目立たない。それが一番気に入っていた。
    「あれ、ココくん、今日はいないんですか?」
    「ああ、今日は仕事があるからこれないって」
    「そっかぁ…ココくんの東卍の特攻服姿楽しみだったのになぁ」
    「ココも袖通してたけど、ダッセェって言ってたぞ」
    三ツ谷には内緒なと薄く笑うと、武道は顔を引きつらせながらバツが悪そうにボリボリとこめかみをかく。
    「あぁ…まぁ、黒龍の特攻服、めちゃくちゃオシャレっすもんね」
    「でも、オレは東卍のも好きだよ。ヤンキーって感じでイケてるし、黒だと返り血も目立たねぇから」
    返り血…とおうむ返しに呟く武道の顔色は悪い。年が明けたとはいえ、クリスマスの記憶は色濃く残っている。大寿にボコボコに殴られまくった傷は心身ともにまだ癒えていないのだろう。黒龍11代目の夢を託した男は時に酷く臆病で、それ以上に大きな勇敢さを持ち合わせている。外見は似ても似つかないのに、彼の人に似ているのはきっと、人懐っこさや懐の大きさなのだろう。
    「タケミチ、イヌピーくん、集会始まるぞ!早くこいよ!」
    境内から千冬が呼んでいる。今行く!と返事をしたタケミチに行きましょうと手を引かれ、その小さくて大きな背中を追いかけた。


    「で、惚気かそれ?」
    「惚気だよな」
    「くっそぉおお…タケミチのくせにヒナちゃんみたいな可愛い彼女がいるなんてあんまりだ!」
    「世の中は残酷すぎるよな…」
    武道が隊長を務める壱番隊はとにかく騒がしい。武道と同級生の四人組は武道以上のお調子者で、騒ぐ山岸とマコトを敦とタクヤが諌めるのがいつものパターンだ。そこに今は千冬も加わると、まるでコントを見ているようだった。
    山岸とマコトに肩を押さえつけられてジタバタと暴れる武道からケータイを奪った敦を挟むようにしてマコトと千冬が武道のケータイを覗き込んでいる。先日、武道は日向とデートをしたらしい。映画を見たり買い物をしたり、帰り際にゲームセンターに寄ったのだという。武道のケータイの裏側に日向と撮ったプリクラを目敏く山岸が見つけ、彼女のいない四人に事情聴取をされているようだ。
    デートの流れを事細かくきいたくせに、惚気んな!と逆ギレされているのを眺めているのは少し面白かった。九井以外、これといって友人という友人がいない乾には少し羨ましかった。なんでも言い合えて、じゃれあうように喧嘩ができる友達。九井とは喧嘩らしい喧嘩もしたことなければ、いつも乾の意見を尊重し、イヌピーがいいならそれでいい自分の意見を言わないことが多い。少し羨ましく思う。
    やいのやいのと言い合い、揉みくちゃにされていた武道がようやく山岸とマコトのヘッドロックから逃げ出して、イヌピーくん見てないで助けてくださいよ!と乾よりも小柄な体を縮こませて背中に逃げ込んだ。恐る恐る背中から顔を出す武道は半泣きになっていて、乾はクスクスと喉の奥で笑った。
    「イヌピーくんもこれ見てくださいよ!」
    「ん?何?」
    山岸の手にはタケミチのケータイが握られている。電池ぶたの上には片手ずつハートマークをつくってひとつのハートの形をつくっている武道と日向のプリクラが貼られていた。日向の可愛らしい丸い字で、「タケミチくん♡ヒナ」と落書きがされていた。
    乾はプリクラを撮ったことはなかったが、姉の赤音はプリクラを撮っては友達と交換したりしてプリ帳なるものを作っていた。その中には彼氏と撮影した友達のものも貼ってあった気がする。他人が写るプリクラを集めて何が楽しいのか当時はわからなかったが、こうして知り合いの知らない一面を垣間見るのは楽しいかもしれない。
    「へぇ、よく撮れてるな。タケミチ、めちゃくちゃだらしない顔してる」
    「ですよね!イヌピーくんもそう思いますよね!?」
    「いや、だって、ヒナめちゃくちゃ可愛いし」
    「タケミチは黙ってろ!イヌピーくん、こっちも見てくださいよ!」
    山岸は今度は電池ぶたを外し、薄いプラスチックの内側を乾の目の前に差し出す。ふたの裏には顔を真っ赤にしてフリーズした武道の頬にキスをする日向の姿が写ったプリクラが貼られている。「ずーっと一緒だよ♡」と落書きされていて、騒ぎの原因はこれだなと納得した。
    「チュープリとか!チュープリとか、どう思いますかイヌピーくん!?」
    「カーテンで隠れているとはいえ、密室で男女がふたりキスしてるんですよ!?くそおおお…羨ましい…リア充め…!」
    「もぉぉ…さっきからこいつらこんな調子なんすよぉ…イヌピーくん、止めてくれませんか?」
    「…まぁ、好きな人とならチュープリ?撮ってもいいんじゃねぇか」
    キスは好きな人とだけ、そんな夢見る少女のようなことを言っていた女を知っている。あの日、赤音は一くんったら私にキスしようとしたんだよと恥ずかしそうにしながらも、幸せであふれんばかりに笑っていた。
    「ほら、イヌピーくんもそう言って…って、今、イヌピーくん、チュープリって言いました!?」
    乾の背中に隠れていた武道は、乾から同意を得たからなのか、意気揚々と胸を逸らして溝中の面々の前に姿を現す。そしてすぐに振り返り、ガッと勢いよく乾の肩を掴んだ。
    「あ、うん…?」
    「あの、もう一回、チュープリって言ってもらっていいっすか?」
    「え…あ、チュープリ?」
    カシャッとシャッター音が聞こえたような気がした。もう一回お願いしてもいいですか?とエサを前にした子犬のようにキラキラと輝いた瞳で見つめられ、乾は困惑しながらもチュープリとつぶやいた。
    「うっ…イケメンのチュー顔、最高…」
    「わかる…オレ、イヌピーくんになら抱かれてもいいかも」
    「イケメンのチューの破壊力、はんぱねぇ…オレまでドキドキしたわ…」
    山岸とマコトは今まであれだけ散々武道と日向のチュープリに騒いでいたというのに、武道と一緒になって地面に崩れ落ちている。わけがわからないと敦に助けを求めると、放っておいていいっすよと呆れ顔だ。
    「イヌピーくん、ごめんな、騒がしくて」
    「いや、別にいいよ。お前たちは本当に仲がいいんだな」
    「はぁ?よくねぇだろ、イヌピー。てめぇら、誰がイヌピーにならチューされてもいいだってぇ?」
    気配もなく乾の背後からぬっとスーツを着込んだ九井が現れて、乾の肩を抱きながらニタニタと口角を釣り上げる。うわぁあああ!?と素っ頓狂な声をあげながら三人は飛び下がり、敦とタクヤは知らぬぞんぜんを決めこむらしい。そっぽを向いて知らん顔だ。
    「あれ、ココ、仕事はもういいの?」
    「ああ、終わった。で、一体なんの騒ぎだ?」
    「タケミチが彼女とチュープリ撮ったって話」
    「へぇ、お前、顔に似合わずやんじゃん?少しだけ見直したわ。じゃ、イヌピー帰んぞ」
    「うん。じゃあな皆、お疲れ」
    もう神社にはほとんど誰も残っていない。佐野と龍宮寺が何か話し込んでいるようだったが、ほとんどのメンバーは三々五々とバイクを走らせ解散している。首尾は上々だったのか、九井は心なしか機嫌がいい。
    「あ、イヌピーくん、ココくん、待ってください!」
    武道に大声で呼び止められ九井は面倒くさそうに足を止める。くるりと振り返ると、武道以下溝中の面々が駆け寄ってきていた。
    「よかったら、今からゲーセン行きませんか?」
    「は?なんで?」
    「プリクラ撮りましょうよプリクラ!」
    「はぁ…?プリクラ…?くだらねぇ、帰ろうぜイヌピー」
    「うん、いいけど」
    「はぁ!?おい、イヌピー、なんでだよ」
    「別にいいじゃん。オレ、プリクラ撮ったことねぇし、そもそもゲーセン行ったこともねぇし、ちょっと興味ある」
    にべもなく断れれると思っていたのか、武道たちはやったぁ!と今にも踊り出さんばかりに気色を露わにする。ココもいこうぜと腕をひくと、呆れたと言わんばかりに九井は肩をすくめる。
    「…ま、イヌピーが行きてぇなら付き合うよ」
    「ありがとうココ」
    「じゃあ、早速行きましょう!」
    すっかり懐かれたらしい乾は一足先に武道たちに囲まれて階段を降っていく。わいわいがやがやと騒がしい一団から少し離れてその背中を追いかけている敦の肩を、九井は掴んだ。
    「…さっきの写真、消しておけよ」
    「あ、ははは…バレてました?」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤🍬🍬🍬🍬🍬🍬🍬🍬😚❤🈁🐶♾❤🇱🇴🇻🇪😭❤❤❤❤🈁🐶❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works