運転手ックス「着きました…アランデル様」
俺は停車と同時になるべく見ないようにしていたバックミラーを省みた。俺の集中力を掻き乱していた肌がぶつかる激しい音と上擦った喘ぎ声がようやく止む。
「っ…う、あ」
雇い主は今まで腰の上に抱え上げていた男を座席の上へと転がした。今まで散々突き上げられて声を上げさせられていたヒューベルトは座席に伏したままぐったりとしている。
「着いたぞ、ヒューベルト」
呼吸を整えることで精一杯なのか、肩でゼエゼエと呼吸をして、足腰も立たないようだ。赤らんだ顔をして、夥しい汗がシートを濡らしている。俺の角度から見えてしまった尻には赤い手形がくっきりとついていて、間から白いものが垂れているのは視覚の暴力でしかなかった。男のはずなのに丸みを帯びたフォルムは女性のもののようでもあって、どうしようもなく、よからぬ妄想を掻き立てていた。
アランデル様が外へ出たがヒューベルトがそれについて行く気配はない。
「立て。ぐずぐずするな」
一片の慈悲もなく言い放たれた言葉にピクリと肩が震えていた。アランデル様はいらつきも顕にしている。
申し訳ございません。か細い声でそう言いながら震える両腕が体を起こそうとしているが、くたりと力なく長身は倒れた。アランデル様の舌打ちが聞こえる。
「おい、運転手」
「は、はい」
「こやつを中へ運べ」
無造作にチップが差し出された。萎縮しながらも俺は受け取れるものは受け取った。俺は後部座席に周り、恐る恐る暗がりの座席を覗き込む。うっすらと邸内の外灯に照らされた白い肌が浮かび上がっている。うっすら紅潮した肌が色気を放っていて、俺の喉が鳴った。
運転席で感じていたよりも濃い精液の匂いが鼻をついた。高そうなダークスーツを皺だらけにして、誰のものかもわからない出したもので汚しているヒューベルトが前髪の狭間からこちらを睨んだような気がした。俺はその冷たい視線に目を合わせないようにしながら、座席から体を抱え上げる。
ふと、後部座席の床に放り出されたまま、濡れているアナルプラグが目に入る。あんなものをケツに咥え込むとかどんだけエロい体にされてんだよ。
「ん…」
触れた途端に耳元でした低い呻きは甘さを孕んでいて、その気がない俺でも心臓がバクリと鳴った。
乱れた衣服を簡単に整えるとヒューベルトに肩を貸した。ほとんど力の入っていない体を支えてやりながらアランデル様の跡を追う。長い廊下を歩き、俺の部屋くらいありそうなリビングにはガラス張りの窓があってでかいプールが見えた。金持ちってのは本当に規格外のことをしやがる。
寝室まで来て、これまた大きなキングサイズのベッドにヒューベルトを下ろした。
『家に着いたらわしの相手が待っておる』
俺は車内でアランデル様が言っていた言葉を思い出した。ベッドに放り出されたヒューベルトは、小さく呼吸しながら項垂れていた。
この後も酷い目に遭うんだろう。気の毒にと思いながらアランデル様に一礼し踵を返す。そそくさとその場を立ち去ろうとしようとしたとき。
「おい」
俺はかけられた声に肩を振わせた。何か粗相をしたのだろうか。
おどおどと声の方向を見れば、アランデル様がヒューベルトを顎で示しながら俺に目配せをする。
「そのまま帰るのか」
「は?」
アランデル様が唇を歪めて、俺を見ていた。息苦しさと下半身の重さを感じていた俺のスラックスの前は張り詰めていて人に見せられるものではなかった。
「も、申し訳ありません、俺はこれで…」
「『これ』に欲情したか?」
嘲り笑うような言葉に俺はひっと喉が引き攣るのを感じた。
「怯えなくともいい。もし、抱きたければ好きにしろ。追加のチップだと思えばよい」
恐縮したままの俺に背を向けたアランデル様は部屋の隅にあるこれまた大きなソファに早々に腰を下ろしてしまう。どうしたものか、寝台の上に投げ出されたままのヒューベルトは動かず、沈んだ肩越しに俺に視線を向けてくる。
俺を拒否したいのか。そんな濡れた目で。俺はむかついているのかよくわからない気持ちでベッドの上に乗りあげた。
畜生、そんな目で見るな。
既にぐしゃぐしゃに剥かれたスーツに、アランデル様に散々出された精液で汚れた肌と中。ここに俺がもう一度くらい種付けしたところでさしたる違いも問題もないだろう。
自宅に二人を送り届けた時点で今日の仕事は終わっている。家に帰ってヒューベルトの痴態を思い出して一人シコるより、ここで本懐を遂げて行っちまった方が得だろうと俺は考えた。
すっかりその気になった俺に対してヒューベルトが目を見張って、続けてアランデル様に視線を向けるが、彼の主は脚を組んで悠々とそれを眺めているだけだ。顎で指示する。それは誰だってわかるサインだ。
「俺の相手をしろ」と。ヒューベルトが唇を引き結んで首を横に振っていた。
その様に加虐心を煽られて、長い脚をひき掴んで、こちら側に寄せる。絹みたいにすべすべしたシーツの上を成すすべなく引きずられてくる。無抵抗なのはアランデル様に散々泣かされた後だからか、ヒューベルトは嘘みたいに無抵抗なままだ。
エスコートの時にも思ったが冷酷で神経質そうな印象を抱いた男。今は信じられないくらい、乱れている。
「待っ、て…」
逃げようと動く脚も、縋るようにシーツを引っ掴んでいる手も弱弱しい。
「待ちませんよ」
俺はひどく歪んだ笑みを浮かべていることだろう。白い尻に掴んで左右に目いっぱい広げるとくぱ、と開いた孔から白いものが垂れてきた。後部座席に転がっていたアナルプラグの大きさを思い出す。あんなもんを飲み込まされていた。それで平然と歩いていたなんて。どんな躾をされているのだか、喉がなった。
呼吸に合わせて蠢く孔を今すぐに塞いでやりたい気持ちになって俺はバックルに手をかけた。がちゃがちゃとやかましい音を立てる。なかなか脱げないのがもどかしい。
案の定、ギンギンになって、先走りを垂らしていやがる。車内で見てしまったアランデル様のモノと比べるのもおこがましいことだろうが、俺ので鳴く男の想像に突き動かされる。
亀頭を潜り込ませて一気に腰を突き入れる。
「っ…」
根元まで埋めてやれば言葉を無くして背をのけぞらせていた。
「ひっ…」
ああ、この声だ。車内で散々聞かせられた上擦った低音は明らかに男のものなのに妙な色気がありやがる。中の気持ち良さにも息切れを起こしながら俺は人前、しかも客の前であることも忘れて腰を振る。
時折、傍目に映るアランデル様の口元は笑っていた。でかく荒くなっていく息は自分のものなのにやたら耳障りだった。構わず俺は夢中で腰を振った。
「うっ…」
ヒューベルトの中が一際俺を求めるみたいに収縮して、耐えきれずに吐き出す。破裂しそうなくらいに張り詰めていたから仕方がない。中でビクビク跳ねるように精液を吐き出し続ける。久しぶりなのも相まって、全然止まりやしない。俺の欲望の捌け口にされたヒューベルトの横顔は長い前髪で伺いしれないが、唇を噛み締めているのだけは見えた。