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    yuakanegumo

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    yuakanegumo

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    恋人ヴィク勇❄⛸
    お互い一人暮らし。初夜を迎えた付き合いたてのヴィク勇が、ちょっとしたやりとりの勘違いから二度目の幸せセッ……をすることになる平和なお話です😊
    2回目には夢がある。
    びくゆう、すれ違わせすぎて、コントみたいになってないかそれはそれで心配になってきた今日この頃です😇

    #ヴィク勇
    vicCourage
    #SS

    「勘違いでも」 まぶたの裏まで貫くような強い光。あまりに深い眠りから勇利が目覚めたのは、小さな電子音が、ピコンと耳元で鳴ったからであった。二、三度瞬きをした直後、一気に現実感を取り戻した青年は、ベッドの上から勢いよく身を起こし、手元のスマホへと目を落とした。
    『ユウリ、おはよう。予定通り、十一時に迎えに行くけど大丈夫? デート楽しみにしてるね!』
    「まずい……!」
    ヴィクトルからのメッセージアプリ通知、現在の時刻は――十時五十分だ。
    「……やっちゃった……」
    青年は、深いため息をついた。昨夜、夕食後にヴィクトルと別れて一人暮らしの家に帰ってから、あまりの眠さにシャワーも浴びずに寝落ちしてしまっていたらしい。太い眉をへにゃりと下げて、慌てて返信をする勇利。
    『おはよう、ヴィクトル! 家まで来てくれてありがとう。時間どおりで大丈夫だよ。でも、先にシャワー浴びていい?』
    ――ヴィクトルには家の中で待っててもらおう。詳しい事情と謝罪は、直接伝えた方が良いと思いながら打ち込んだメッセージは、送った直後、すぐに既読がつく。
     しかし、数分待ってみても、ヴィクトルからの返事はなく、青年は困ったように眉を下げた。
    「……運転中かな……もしかして、怒ってる?」
    口元を引き結んで考えるが答えは出ない。このまま待っていても仕方ないので、勇利は先に準備を進めることにした。ヴィクトルには合鍵を渡しているので、問題はないだろう。
    「……『デート楽しみにしてる』……」
    『恋人』からのメッセージを読み返しながら、青年はそっと微笑んだ。
     師弟関係を経て恋人同士となった二人が、初めて身体を重ねたのはつい最近のこと。コーチとしてのヴィクトルは厳しいけど、恋人としてのヴィクトルは、勇利が不安になるほどに勇利を甘やかしてくる。その気遣いがどことなくくすぐったい。
    「早くシャワー浴びよう」
    生まれて初めて出来た恋人の、優しい声とまなざしを思い出しながら、シャワーを浴びる準備を終えた勇利が廊下に出た、まさにその瞬間であった――玄関の鍵がガチャガチャと騒がしい音を立て、勢いよく扉が開かれたのは。
    「――ユウリ、」
    「びくとる……?!」
    眩しい光の中には、恋人であるヴィクトル・ニキフォロフが立っていた。急いで走って来たのだろうか、前髪は乱れ、大きく息を弾ませている。低い声で男は言った。
    「――ユウリ。メール見たんだけど、本当に『良いの』?」
    「えっ……?」
    事情も分からぬまま、家の中に入ってきたヴィクトルによって、静かに壁際に追い詰められてしまう勇利。両腕で退路を塞がれる。見下された男の双眸がやけに鋭い。
    「あの……えっと、『良い』って、何の話?」
    恋人の迫力に動揺した青年は、腕の中のバスタオルをぎゅっと抱きしめながら、言った。
    「これから『シャワー浴びる』って、ユウリが言ってたから」
    「あっ、これは。昨日、寝落ちしちゃって、まだ出かける準備が――」
    「寝落ち……?」
    ヴィクトルのはっとしたような顔を見て、勇利は気が付いた――『良いの?』という同意を得るような恋人の言葉。シャワーを浴びるという自分のメール。二人で一緒にシャワーを浴びたのは、初めての夜のこと――
     恋人との非日常的な情事を思い出した勇利の顔が、一瞬にして真っ赤に染まる。ヴィクトルへと送ったメールは、意図せずまるで夜を誘うような言葉になってしまっていたのだ。あまりの羞恥心から、必死になって首を振る勇利。
    「あのっ、ごめん……!あのメールは『そういう意味』じゃなくて…! 紛らわしいこと言っちゃってごめん…!」
    「――そう、だよね」
    青年の弁明を聞いたヴィクトルは、少しだけほっとしたような、けれど少しだけ寂しげな様子で口を開いた。
    「おれこそ、変なこと言ってごめんね。シャワー浴びてくるんだよね? 待ってる。ゆっくり準備しておいで」
    そう言って、両腕の檻から勇利を開放する。陰っていた視界が戻る。はりつめていたアイスブルーの眼差しがやさしく細められる。
     自分の側からゆっくりと離れていく体温を、その時勇利は、素直に寂しく思った。そして気付いた時にはもう、青年の指先はヴィクトルの腕をそっと掴んでいたのだ。
    「……い、『いいよ』、びくとる」
    「ユウリ……?」
    「『そういう意味』じゃなかったけど、いい、よ。ヴィクトルが、もし嫌じゃなかったらだけど」
    驚いたように見開かれた男の瞳を覗き込む、とろりとした勇利のアーモンド色の瞳。――つまりこれは、『二度目の夜のお誘い』である。
     青年の真意を理解したヴィクトルは、困ったように笑いながら、それでも嬉しそうに目を細めた。勇利の身体をそっと抱きしめる。なめらかな頬がさらりと触れ合う。耳元で囁かれる甘い声。
    「おれがYES以外の返事すること、ある?」
    かすかに触れる吐息がくすぐったくて、勇利は小さく笑ってしまった。
    「ない」
    それは、合意の合図だった。ヴィクトルからさり気なく肩を抱かれて、シャワールームへ招かれようとしている。自分の家の中だというのに、既に主導権は男のものだ。
    「ユウリから誘ってくれるなんて嬉しいな」
    ヴィクトルのそんな台詞に、初めての夜の熱情を思い出した勇利は、せめても願うように言った。
    「ま、まだ慣れてないから……ゆっくりだよ」
    「……優しくする」
    そう言って、ふわりと年上の恋人は微笑んだ。
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