お手つき 逞しい首元を飾るスカーフは、将官の証。
自らの手で堕とした難攻不落のイゼルローン要塞。その地で要塞防御指揮官に就任したワルター・フォン・シェーンコップ准将は、おれの憧れだった。
彼はもう薔薇の騎士連隊第十三代連隊長ではない。昇進に伴い、敬称も閣下へと変わった。
イゼルローン攻略という華々しい功績を打ち立て、さらに一段上へと昇ってしまった彼。だが、いまだ接点は残されていた。
要塞防御指揮官となっても薔薇の騎士連隊に顔を出す機会は多い。現隊長を相手に修練を積む様子も時折見かけた。
傍らにカスパー・リンツ、ライナー・ブルームハルトの両名を従える彼は、隊の長を離れてなお猛獣たちを束ねる群れの王だった。
4166