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    3tnymkr

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    ymkr月覚醒後のグラエマ。
    両片思いの想定だけど、月覚醒軸なので距離感バグ。

    夜半前「エマ、お前は眩しいな」
    背中越しにグランの声が響く。いつもの優しい声音のようで、ほろ苦い響きが混じっているように思えてすぐに返事を返せない自分がいた。
    私からすれば、グランは生き絵師として夢をひたむきに追う、眩いばかりの輝きを放つマイスターなのに。
    「俺はどんなに足掻いても、絶対にお前のようにはなれない」
    そんなことはないよ、と言いたいのに唇が上手く動かない。グランの両腕は私のことを労るように優しく包んでくれているはずなのに、両手で喉の奥を締め付けられているような錯覚を覚える。密着しているから温かいはずなのに、冷え切った手で背中を撫で上げられているような冷たさを感じる。
    今抱きしめてくれているグランは、本当に私が知っているグランなのか、自信が持てなくなってきた。私は、ただただ研ぎ澄まされた何かが背後から突き刺さってくるのを受け止めることしかできない。
    ブルメリアから帰ってきたあの夜以来、時々グランの自室でアルコールを嗜みながら他愛もない話をするようになった。最初は異性の部屋で飲むことに少し緊張もしたけれども、普段よりも僅かに穏やかな表情をしたグランと飲み交わすにつれて殆ど気にならなくなっていった。
    そして、気付けばわがままと称してグランに後ろから抱きしめられ、時には優しく寝かしつけられてしまう関係だ。ただ、これは私が安心しているからとは言い切れない。何となくグランをひとりにしたらいけないような気がして、つい付き合ってしまうのだ。そして、それ以外に何があるわけでもないから、こうしてグランに付き合い続けることができている。
    「グランは、私から見て立派なマイスターだよ」
    どう返答するのがいいのかは分からない。でも少なくとも、私みたいになれないなんてことは絶対に無いと思う。ブルメリアでの出来事のように、グランはあんなにも人の心を惹きつける生き絵を生み出すことができるのだから。私のギルドキーパー歴はまだ浅いけど、それだけは自信を持って言える。きっとおばあちゃんだってそう思ってくれる。
    「……俺の手は、今でこそ何かを生み出せる手になったかもしれないが」
    グランの腕に力が入り、ぐっと抱き締め直された。けれども私が痛くないよう、細やかに力加減されていることもすぐ分かる。すごく、大切にされていると思う。
    それがギルドキーパーとしてなのか、異性としてなのかを何度も考えようとしたけど、答えを出すのが怖くなって止めてしまっていた。
    「昔は奪うことしかできない手だった」
    冷えた空気が首筋を撫でていく。私を包み込む腕は相変わらず優しいけれど、私の知らないグランが喉を絞め上げてくる。思うように声を出せず、乾いた囁き声になってしまう。
    「私は、グランの絵が好きだよ」
    これはギルドキーパーとしてではなく、エマ個人としての意見。大好きなおばあちゃんのため献花してくれた生き絵、そして私のために描いてくれたガーベラの生き絵を見てから、グランの絵が好き。
    そして多分、貴方自身も好きになっている。
    「すまない」
    「どうして?」
    グランの謝罪に思い当たる理由もなく、ついそのまま疑問を返してしまう。思ったよりも間の抜けた声になってしまい、背後から小さな笑いが漏れた。
    「エマ、お前に気を使わせてしまったと思ってな。俺は、仲間のおかげで日陰から出てこようと思えた」
    そう言いながら、グランは私の髪の毛をゆるゆると撫でている。
    仲間──クロウ、イツキ、ノア、ルージュさん。月渡りのみんなは一見ばらばらのようで、確かに仲間であり家族だと思う。私はまだ長く一緒にいるわけではないけれど、彼らが月渡りという居場所を何だかんだで心地よく思っていることを知っている。そして、この居場所があるからこそ、思う存分、各々の夢を追いかけられているのではないか。
    「そしてエマ、お前のおかげで日の当たる場所にいてもいいと思えたよ」
    背中越しだけど、グランがいつもの様子に戻ったことが分かった。見かけによらず柔らかい雰囲気で、側にいるとつい安心してしまうグランに。
    私が役に立てた所が何かはよく分からないけれど、少しでもグランが夢を追う助けになったなら素直に嬉しい。でもそうなら、グランが謝る必要なんてない。
    「そういう時はありがとう、だよ」
    諭すように言うと、グランはバツが悪そうにまた私を抱き直した。触れる肌が何となく熱いように感じる。
    「……ありがとう」
    どういたしまして、と言う前にグランに片腕を持ち上げられる。一瞬だけ間が空き、手の甲に少しだけカサついた何かが触れてすぐに離れた。
    グランが何をしたのか気付き、それに遅れて顔がじんわりと熱くなってくる。どう反応していいか咄嗟に判断できず、体を固くすることしかできなかった。
    不意打ちなんて、ずるい。
    「折角だ、今日はもう少し飲んでいくか?」
    グランが私を抱きしめていた両腕を緩めながら、身体をそっと抱き起こしてくれる。ベッドの隣に腰掛けてからグランの顔を見上げれば、瞳の輝きが探索に行く前のそれと同じであることに気付く。
    逃げ道をくれたのか、それとも退路を断たれたのか。グランのお誘いがどちらの意図にせよ、私は肯定の返事しかできなかった。
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