小悪魔な弟_20XX / X / X_
Alban.K:おにぃ!今日家に泊まってもいい?
Sonny.B:もちろんだ兄弟。
Alban.K:やったー!
「っ・・・かわいい〜・・・」
サニーはチャットを開いて頭を抱えていた。
アルバーンが、可愛くてかわいくて仕方がない。
年齢的にはそう変わらないだろうが、仕草や行動がいちいち可愛らしく、
サニーにはもちあわせていないキュートな部分が兄心をくすぐってくるのだ。
いつの日か可愛すぎてポロッとこぼしたサニーの「お兄ちゃんと呼んでほしい」を、アルバーンは最初はからかっていたものの、だんだんと本当の兄弟のように仲良くなるにつれ「おにぃ」と愛称で呼ぶようになった。
サニーはアルバーンにひたすらに甘かった。
買い物に行きたいといえば自分の予定をずらしてまで着いて行ったし、ゲームがしたいといえば参加できるものは一緒に遊んだ。
サニーはアルバーンを本当の弟のように可愛がっていた。
そんなサニーには最近悩みがあった。
アルバーンが可愛すぎて、下半身が反応するようになってきた。
アルバーンは無自覚に、サニーを煽ってくる。
猫撫で声をだしたり、身長差の関係で上目遣いで見つめてきたり。
サニーの家に遊びに来てはそのまま泊まることも多いのだが、まさかの同じ布団で眠るのだ。
初めて泊まりに来たときは客用布団の用がなく仕方なく一緒のベッドに入ったが、サニーは一睡もできなかった。
次に遊びに来たときは別の布団を用意してみたのだが、サニーのベッドがふかふかで気持ちいいからと言われ、自分が客用布団で眠ろうとすると自分の家なんだから自分のベッドで眠れと結局一緒のベッドに連れ込まれた。
眠れないこっちの身にもなれ、と大きなため息をつく。
正直見た目も反応もドストライクなのである。
”弟“と言い聞かせて理性を保ってはいるが、ちょっと気を抜くとすぐに「にゃん♡」と脳内のアルバーンがサニーの理性を切り裂いてくる。
サニーは脳内で何度かアルバーンをめちゃくちゃにしたこともあった。
しかし、兄と慕ってくれている彼を穢すことはできない、と一緒にいる時は一層気を引き締めているのだった。
今からアルバーンが家に泊まりにくる。
サニーは大きく深呼吸し、自分の頬を軽く叩く。
さぁ、理性よ、しっかり働くのだぞ。
「おじゃましまーす!」
ニコニコと家に遊びにくるアルバーン。
その手にはコンビニの袋が握られている。
「おにぃと食べようと思っておやつ買ってきた!」
・・・可愛い。
「ありがとうアルバーン」
ぽんぽんと頭を撫でる。
目を閉じて嬉しそうに微笑むアルバーン。
おっと危ない。
理性がきれそうだ。
「そうだ!アルバーン、今日は一緒に映画でも見ない?」
「お、いいねぇ!見るみる!」
サニーが選んだのはゾンビを倒しながら生き残るホラーサスペンス映画だ。
2人でソファに並んで、アルバーンが買ってきてくれたお菓子をつまみながら数時間没頭した。
意外と内容が面白くて、理性もすっかり持ち直していた。
「あぁ〜面白かった!もういい時間だね。お風呂はいるかい?」
サニーはアルバーンに話しかける。
「うん、入りたいんだけど、ちょっと友達から連絡がきたから先に入っていいよ!」
ぽちぽちと携帯を触り出すアルバーン。
映画の途中で何度かメールの受信音がしていたが、律儀に見終わってから返事をしているようだ。
「じゃあ、お先に入るね」
アルバーンは何度もうちに泊まったことがあるため、サニーは遠慮することなく先に風呂へと向かった。
体を洗い終え、シャンプーをしていると、コンコンと風呂の扉が叩かれた。
「おにぃ_」
アルバーンの声がする。
「どうした?アルバーン?」
「・・・あの、さっきみた映画、ちょっとこわかったから、一緒にお風呂はいってもいい?」
「えっあっ_うわ!」
ガシャーン!
動揺したサニーはシャワーコックに腕をぶつけ、その反動で水を頭から被り
シャンプーが目に入ったせいで視界を暗くしながらシャワーを止めようと探った手でボトルを床にぶちまけた。
「サニー!?大丈夫?!」
「だ、だいじょうぶ!大丈夫だから・・・ちょっと、シャンプー流すから待って!」
動揺にも程があるだろうと自分自身に引きながら、頭を洗い流す。
一緒にお風呂だなんて、ちょっと理解が追いつかない。
まって、ということは、アルバーンの・・・はだ、か___
ぐん、と一部分に血液の流れを感じた。
やばい。
こんな姿見せられない。
「_もうはいってもいい?」
控えめな声が聞こえる。
「う、うん!どうぞ!!!!」
サニーは急いで湯船に浸かり、入口から背を向けた。
「なんかさー、さっきの映画ちょっとびっくりするシーンが多くて、怖くなっちゃった!ハハ!子供っぽいよなぁ・・・」
アルバーンが後ろでシャワーを浴びている。
「お、俺もびっくりするとこあったし、仕方ないよ」
「んー。内容は面白かったんだけどね___」
できるだけアルバーンに意識がいかないよう、会話を繋げつつ先ほどの映画のグロいシーンを思い出しながら自身の熱を冷まそうとするサニー。
キュ、とコックの締まる音がする。
浸かっている湯船のお湯が揺れた。
「ねぇ、サニー」
「・・・・・・ん?」
さすがに成人男性2人がゆったりはいれるほど湯船は広くない。
脚がぶつかる。
できるだけ体を端に寄せ、アルバーンの方を見ないように返事をする。
「_なんでさっきからこっち見ないの」
アルバーンの声が、不機嫌だ。
「えっと、あの、ちょっとのぼせちゃったみたいで、もう、上ろうかな・・・」
サニーが立ちあがろうとすると、ぐっと腕を引かれた。
「っあぶな・・・」
咄嗟に体を支えようと手を伸ばし、左右の手で浴槽をつかむ。
広げた腕の間には、アルバーンがこちらを覗き込んでいた。
アルバーンの濡れた髪から、ぽた、と水滴が落ちてサニーの手の甲を濡らす。
「へへ、やっとこっち見た。」
悪戯に笑うアルバーンに、サニーは数秒間固まった挙句、顔を真っ赤にしてそのまま意識を飛ばした。
サニーが目を覚ますと、そこには寝室の天井がひろがっていた。
おでこがじんじんと痛む。
体がスースーする。
・・・スースーする?
サニーはがばっと起き上がると、そこはベッドの上で、自分は何も身に付けていなかった。
あれ、どうしたんだっけ、
今日はアルバーンとお泊まりで、一緒に映画を見て、
先にシャワーを浴びて、それで___
「あ、おにぃ起きた」
「アルバーン!!!」
ガチャ、と寝室に入ってきたのは、下着一枚でバスタオルを首に巻いているアルバーンだった。
「おにぃ風呂でのぼせて倒れるんだもん、運ぶの大変だったよ」
「あわわわわ、ご、ごめん・・・」
おでこの痛みは、倒れた時に湯船に頭を打ったらしい。
アルバーンに迷惑をかけてしまった。
サニーは眉を下げてしょんぼりしていると、アルバーンはふふ、と鼻で笑った。
「水、のむ?」
片手にもつペットボトルを持ち上げ、サニーに問いかける。
「あぁ、うんありがとう・・・」
さすさすと自分のおでこを撫でながら、アルバーンが近づいてくるのを感じる。
ベッドの横まで歩いてきたアルバーンを見上げると、彼の顔が目の前に落ちてきた。
「え__」
ちゅ・・・
唇に感じる柔らかい感触。
驚いて少し空いていた口の隙間から、水が流れ込む。
反射的にごくり、と喉を鳴らして水分を取り込む。
口移しされているのだと気付くには、あまりにも時間を要した。
そっと離された唇。
静かに視線が交差する。
ゆらゆら儚く揺れるオッドアイ。
「__いいこと、しよ?おにいちゃん___?」
ぷつん、と理性の切れる音がした。