バームクーヘンなんて大嫌い――折り重なった甘い味は幸せの押し付けだ。
「ピクさん、これどうしたんですか?」
「んー?」
時刻は午後三時を回っていた。大学から帰ってきた新はリビングのテーブルに置かれた見覚えのない箱を見つけ、ソファで寝転んでいるピクに聞いてみる。
解いたネクタイはソファの背もたれに、シャツの第三ボタンまで開けソファからはみ出た長い脚をピンと張り背伸びをするピク。
「ああそれ?引き出物。今日知り合いの結婚式だったんだ。たった一回仕事しただけなのに呼ばれちゃって、面倒臭いったら」
「お疲れ様です。お茶、飲みますか?」
「ありがと。じゃお願い」
極力人付き合いを避けたくてこの仕事を選んだのにたった一回仕事をした相手の結婚式に出席しなければいけないなんて溜まったもんじゃない。
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