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    Lei

    @PkjLei

    妄想や幻覚を捏造たっぷりで書いてます

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    Lei

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    生贄にされた🦊と、それを救った👹の話

    バケモノ子供は生まれてからずっと1人だった。父親は誰なのか分からず、母親は子供を産んだポックリ死んでしまったらしい。その子供は世にも珍しい澄み切った空色の瞳をしていた。それをバケモノと思った村の人間は、その子供の面倒を見るのを放棄した。頼りになる大人を知らない子供は、そこらへんに生えている草や残飯をべることで何とか生きながらえていた。慣れない頃はよく腹痛になっていたが、次第に食べられる草や、食べては行けない状態の残飯の見分けがつくようになった。年の近い子供たちからはよく投石の的扱いされていたため、生傷が絶えなかった。どこかここじゃない場所に逃げたくても、痩せきった体ではそれも難しかった。

    子供の住む村は、肥沃な土地で農作物がよく育った。しかしある夏の時期、例年にないほどの長雨に苦しめられることになる。作物は根が腐りだめになってしまった。困った村人達は、占いに頼ることにした。
    “村で一番美しいものを西の山に供えよ“
    この結果に村人達は大変困惑した。一番美しいものとは何か。最初に上がったのは、村で一番の器量良しとされる村長の孫娘だった。しかし、村長の強い反対により娘が生贄となることはなかった。結論が出ず困りきった村人が出した結論は、生贄となっても誰も傷つかないあの子供を差し出すことだった。彼の瞳は恐いほど美しい。彼がいなくなっても困るものはいないのだから、これまで生かしてやった恩を返すべきだということらしい。結論が出た村人は村のはずれのボロ屋にひっそりと住んでいた子供を捕まえ、水を頭からかけることで清めとした。抵抗した子供を殴って気絶させ、猿ぐつわをつける。ボロボロの着物から白装束に着替えさせ、手足を縛って台の上に乗せる。若い男達が子供を乗せた台を持ち、西の山の川の近くの大きな石の上に供えた。これで雨が止むだろうと、満足した男達は子供を置いて山を降りていった。

    ゴーゴーという音に目を覚ました子供は、身動きが取れない中で自分が置かれている状況を確認した。長雨により水量が増した川の近くに自分はいるのだ。今のままでは、いずれ流れは自分を飲み込むだろう。意識を失う前の記憶の片隅に、お前が生贄になれば雨が止むんだと誰かが言っていた気がする。まぁ自分が死んでも誰も傷つかないもんなと思い、諦めたように目を閉じた。
    「一体なんで、お前はこんなところにいるんだい?」
    自分以外誰もいないと思っていたのに、聞こえてきた声。驚いて目を開ければ、人間とは思えないほど美しい男が立っていた。黒絹のような美しい黒髪は、ところどころ赤色が差し色に入っている。金の瞳は吸い込まれてしまいそうなほど透き通っていて、目元の紅と相まって人外じみた美しさを醸し出していた。男の問いに応えたいが、猿ぐつわが邪魔で喋ることができない。物言いたげな様子に気がついたのか、男は猿ぐつわを取り外してくれた。
    「生贄ってことらしい」
    「生贄?誰にだい?この山に神はいないぞ」
    「知らない。無理やり連れてこられたから」
    俺の言葉に、不思議そうな顔をするが俺だって何だって生贄が必要になったのかを知りたいくらいだ。相変らず手足は縛られたままだし、死ぬ前にこんなに美しい男を見ることが出来たのは人生で唯一の幸運と言えるかもしれない。
    「それで、お前はどうしたい」
    急に投げかけられた問い。どうしたいとはなんだ。そんなの生きたい一択に決まってるだろ。どんなに陰口を叩かれようが、石を投げつけられようが、それでも命を断つ選択をしなかったのは生きたいからだ。生きてさえすれば、いつか自由になって好きなだけご飯を食べたりできるようになるってそう思ってたから。
    「生きたい」
    そう答えた俺に、目の前の麗人はニンマリと笑った。

    あの後俺の手足を縛っていた縄を、ぶち切ったこいつは俺を横抱きすると山の中を歩き始めた。どこに向かうのかと思えば、目の前に急にデカい家が現れた。
    「西の山に家あったけ?」
    「普段は人払いの術をかけているから、この家を知るのは住人だけだ」
    しれっと言われた言葉に驚愕する。術ってことはこいつ呪術師とかなんかなのか。疑問が顔に出ていたらしい。
    「術をかけたのは俺じゃない。同居人に腕のたつ呪術師がいるんだ」
    はへーという感想しか出てこない。口を開けたまま、周りをキョロキョロと見ると手入れが行き届いた様子の庭に奥には畑が見えた。
    「帰ったぞ」
    玄関につき、俺を下に降ろした彼は家の中に向かって声をかけた。
    「おかえり!ヴォックス!」
    「ただいま、ルカ。頼む、風呂を入れてきてくれないか?」
    奥から走ってやってきた金髪の男の子。ルカというらしい。ヴォックスというらしい彼は俺を指差して、風呂を沸かすように頼んだ。それに大きく頷くと、ルカは走ってどこかに行ってしまった。喋ることが出来なかった俺は、ヴォックスの服を掴んだ。
    「犬の耳と尻尾が生えてたんですけど!?」
    「ああ、ルカは狼人間だからな」
    しれっと言われた言葉に驚愕する。思わず固まってしまった俺に、更なる驚きがもたらされる。
    「言っておくがお前を拾ってきたやつは、鬼だぞ」
    服を掴んでいた手を離し、後退りする。そんな俺をにやにやと笑いながらヴォックスはジリジリと詰め寄ってくる。
    「人間と人外が共存する我が家へようこそ?ミスタ」
    まだ教えてないはずの名前をなんで知っているのかそんな疑問が浮かぶが、それよりも俺はこの先どうなってしまうのか不安で目の前が真っ暗になった。

    どうなってしまうのか不安だったこの家での生活は、案外というか想像以上に楽しかった。1番最初の食事で、箸やスプーン、フォークを使えず手づかみで食べようとしたミスタをみて日常生活での知識を教えてくれたのは呪術師のシュウだ。慣れないものを使っているから食べるのが遅くても、それに合わせて一緒に食べてくれるし、毎回褒めてくれる。褒められることなんて、生まれて初めてだったから最初は泣いてしまった。今は流石に泣かないけど、褒めてくれると心臓の辺りがポカポカしてきてもっと頑張らなきゃという気持ちになる。読み書きや計算などの勉強を教えてくれたのは小説家のアイクだ。何も知らない俺に懇切丁寧に教えてくれて、最後には色んな本を読んでくれる。優しい彼の声で紡がれる世界は、キラキラワクワクしていてもっと聞きたくなる。字が読めるようになったら アイクの本を読んでみたいんだといえば、彼は嬉しそうに笑ってくれた。最初にあった狼人間のルカは、俺に色んな遊びや悪戯を教えてくれた。4人の中で俺と見た目的に歳が近い彼は、初めての友達になった。悪戯の結果、怒られることになっても村の時みたいに怖くない。ぽぐという謎の言葉を発する彼に合わせて、俺も力強くぽぐ!と叫ぶ。顔を見合わせてケラケラと笑うこの時間が大好きだ。ヴォックスは、俺に色んなものを与えてくれた。この家に、家族とも言える4人。新しい服や毎回の食事。彼の作る料理は本当に美味しくて、頬が落ちてしまいそうになるくらいだ。真っ暗闇が怖いのだと言えば、一緒に寝ればいいと言って部屋を同室にしてくれた。頭をそっと撫でられながら、今日あったことを彼に話す。頭を叩かれたことはあれど、撫でられたことなんてなかったから最初手を出された時はビクついてしまった。でも、ヴォックスはここにはお前を殴る奴なんていないと言ってゆっくりと撫でた。頭の形を確認するかのように、ゆっくりと撫でる手は心地よくていつも気がついたら寝てしまう。ここでの時間はあまりにも心地良すぎて、こんな時間がいつまでも続けばいいのになって思ってしまうんだ。

    そんな新しい俺の日常が壊れたのはある晴れた日のことだった。俺はルカと一緒に家の近くを、走り回って遊んでいた。ザッと物音がしてそちらに顔を向ければ、俺を川に置いて行った奴らがいた。奴らは生贄にしたはずの俺が生きているのをみて、目を見開いていた。
    「生きていたのか、この恥晒し」
    村では日常茶飯事で、でもあの4人は絶対に言わないようなことを言われていて忘れていたはずの傷口が開く。手を握り締め、顔を俯かせた俺に村人達は更に言葉を重ねる。ぎゅっと痛いほどの力で、手を握って耐える。
    「ミスタ?」
    ルカの声にハッと顔を上げる。
    「来ちゃダメだ!」
    村人達は、ルカの耳を見てバケモノだと騒ぎ立てる。やめろ、俺の大好きな友達に、家族にそんなこと言うな!口汚くルカを罵る彼らに耐えきれず、俺は黙れと叫んでしまう。反抗的な俺に気に食わなかったのか、村人達はそこらへんにあった石を投げてきた。ルカを守るように彼を背後に隠すと、顔近くを石が通り過ぎて行った。そのせいで目の当たりが切れたらしく、左側の視界が赤く染まる。
    「ミスタになんてことをしたんだ」
    背後にいるルカの様子が変わる。グルグルと獣のように喉を鳴らす彼は、パキパキと地面に落ちている枝を踏み潰していく。俺と歳が変わらないような彼の恐ろしい雰囲気に、村人達はバケモノめと言いながらガクガクと震える足で逃げていった。奴らを追おうとするルカを、服を掴むことで止める。
    「ミスタ!?あいつらは君を!」
    「いいから帰ろう?」
    うまく笑えているか分からないが、一刻も早く家に帰りたくてルカを引き留める。片目の視界でも分かるほど悔しそうな顔をした彼は、さほど身長の変わらない俺を抱き上げると家に向かって走り始めた。流石狼人間とでもいうスピードに怖くなって、ルカの首元にぎゅっと手を回す。守りたかったのに結局傷つけてしまったなと反省会を開催しつつ、俺は大人しくルカの腕の中にいた。

    家に着いて、ルカの悲壮な呼び声に最初に反応したのはアイクだった。彼は俺の怪我を見ると叫びをあげ、大慌てで手当をしてくれた。幸い瞼の上が切れていただけで、目は傷ついていないそうだが数日は不便な思いをするだろうとのことだった。アイクに礼を言うと、ルカが待っていたかのように何で自分を庇ったのかと聞いてきた。
    「だってルカが傷つけば皆が悲しむだろ?なら慣れてる俺が怪我した方がいいって」
    何を当たり前のことを聞くのかと思いながら答えると、アイクもルカも悲しげな顔をしてこちらを見てくる。「え、俺おかしいこと言った?」
    「ああ、お前は全くもってわかっていないな」
    背後から聞こえてきた、ヴォックスの声。後ろを振り向かなくても分かる。彼はとても怒っている。やっぱりルカを悲しませてしまったからかな。もしかして家を追い出されるのかもなんて考えていたら、俺はヴォックスに抱き上げられていた。
    「アイク、ルカのフォローを頼む」
    「ちゃんとミスタに教えてあげてね」
    アイクの言葉に深く頷いた彼は、俺を抱いたまま俺たちの部屋に向かっていった。

    部屋に着くと、彼は俺を降ろして向かい合うように座った。
    「で、何でお前はルカを庇ったんだ」
    「ルカが傷つけば、皆が悲しむと思ったから」
    「ではお前は、お前が傷ついて俺たちが悲しむことは考えなかったんだな?」
    ヴォックスの言葉にキョトンとする。俺が傷ついて悲しむ?そんな人がこの世の中にいるのだろうか。固まってしまった俺を見て、ヴォックスは深いため息をついた。
    「確かにルカが傷つけば俺たちは悲しむだろう。だがそれと同じように、お前が傷ついても俺たちは悲しむんだ。何故だか分かるか?」
    ヴォックスの問いに、訳が分からなくなってブンブンと頭を振る。
    「わかんない。分かんないよヴォックス。だって俺、俺のことを心配して、傷ついたら悲しんでくれる人なんて出会ったことないんだもん」
    「なんてことを言うんだ。この家に4人も、お前のことを心配し悲しむものがいるというのに。さっきだって、ルカはお前の事が心配すぎて泣きそうになっていたし、アイクだって急いで手当てしてくれていただろう?」
    確かにそうだ。でも、そんな、俺なんかがそんなことをしてもらっていいのかわかんない。もう何が何だか分からなくなって、涙をボロボロと流しながら顔を振っていると、そっとヴォックスの膝の上に乗せられる。
    「分かんなくなってもいいから、これだけは覚えていなさい。俺たちは、お前のことが心配で傷つけば心臓が張り裂けそうになってしまうんだと」
    そっと彼の大きな手が、涙を拭ってくれる。俺はたまらなくなって、彼にギュッと抱きつけばそれ以上の力で抱きしめ返してくれた。まだよく分かんないけど、彼らを心配な気持ちにはさせたくない。だから俺も、俺が傷つくことは控えよう。そう思った。
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    Lei

    DOODLE🦊の方が一枚上手な🦁🦊
    傾国ミスタ・リアスという男は自己評価が低い。様々な才能に溢れているのに、仲間たちやリスナーからの褒め言葉をちっとも受け取ろうとしないそんな男だ。しかし厄介なことにミスタは、ミスタ・リアスという外見が性的な意味で惹きつけるということだけは理解しているのであった。
    天使の輪が光つややかなミルクティーブロンドの髪に、白く真珠のように透き通った肌、空をそのまま落とし込んだような瞳、つんとした綺麗な形の唇は艶々と魅惑的である。彼はこの外見が人々を魅了することは理解している。それを活用することが特にうまい。それが本当に厄介なのだ。今自分が置かれている状況がいい例だ。
    「ねぇ、ルカ?俺と良いことしようよ」
    どこでミスタのスイッチが入ったのかは分からないが、今自分はミスタに誘惑されていた。ツーっとミスタの細く長い指が怪しく俺の太ももをなぞる。こそばゆい感触に背筋がぞくぞくするが、顔に出ないように必死に堪える。何をするんだと非難を込めて睨んでも、ミスタはただ微笑むだけだ。そして今の彼のほほえみはそれだけで、男をうんと頷かせてしまうくらいの力があった。だがしかし、ここで頷けばマフィアのボスとして、1人の男としての沽券に関わる。嫌だと首を振れば、駄々をこねる子供をなだめすかすような目で見られた。
    1088

    Lei

    DOODLE🖊が死んだ後の👹の話(👹🖊)
    またいつか出会うまでアイクが死んでから何もする気が起きなかった。2人で暮らしていた家は、片づけもせずそのままの状態だった。アイクはいないのに、アイクのいた痕跡だけが残る家は寂しくて静かだった。そんな2人が暮らした家で、1人で何もせずに過ごす。リビングのソファーでただ座って1日過ごす。埃がつもりはじめているのは分かっていたけれど指一本動かす気にはなれなかった。このままではいけないことくらい、400年以上も生きた自分には分かっていた。しかし愛するものを失った衝撃は、自分を惰性でしか生きられなくした。

    そんな消えない喪失感を抱えたまま過ごしていたある日のこと、死んだはずのアイクから手紙が届いた。ピンポーンと呼び鈴が鳴り、アイク・イーヴランド様からのお手紙ですという配達員の声にソファから慌てて立ち上がった。そうやって受け取った封筒の中には綺麗だけど少し癖のあるアイクの字で“ちゃんとご飯を食べなさい”と書いてある一筆箋が入っていた。最初は意味が分からなかった。だけどアイクが言うならしょうがないなと思って、久しぶりに料理をした。食材を買いに、近くのスーパーに買い物に行った。そうして作ったのはアイクが好きだったハンバーガー。パンは出来合いの物だが、パティはちゃんと作った。アイクが死んでから、人外であることをいいことに食事を取っていなかった。久しぶりの食事は美味しかったが、それでも一緒に食べる相手がいないことに胸が痛んだ。
    1996