傾国ミスタ・リアスという男は自己評価が低い。様々な才能に溢れているのに、仲間たちやリスナーからの褒め言葉をちっとも受け取ろうとしないそんな男だ。しかし厄介なことにミスタは、ミスタ・リアスという外見が性的な意味で惹きつけるということだけは理解しているのであった。
天使の輪が光つややかなミルクティーブロンドの髪に、白く真珠のように透き通った肌、空をそのまま落とし込んだような瞳、つんとした綺麗な形の唇は艶々と魅惑的である。彼はこの外見が人々を魅了することは理解している。それを活用することが特にうまい。それが本当に厄介なのだ。今自分が置かれている状況がいい例だ。
「ねぇ、ルカ?俺と良いことしようよ」
どこでミスタのスイッチが入ったのかは分からないが、今自分はミスタに誘惑されていた。ツーっとミスタの細く長い指が怪しく俺の太ももをなぞる。こそばゆい感触に背筋がぞくぞくするが、顔に出ないように必死に堪える。何をするんだと非難を込めて睨んでも、ミスタはただ微笑むだけだ。そして今の彼のほほえみはそれだけで、男をうんと頷かせてしまうくらいの力があった。だがしかし、ここで頷けばマフィアのボスとして、1人の男としての沽券に関わる。嫌だと首を振れば、駄々をこねる子供をなだめすかすような目で見られた。
「我慢しないで…ね?」
ベッドに座っている俺の首に腕を回しながら、ミスタは膝の上に乗ってきた。ゆらゆらと揺れる彼が落ちないように男にしては細い腰を支える。
「ふふ優しいね。でも優しいだけじゃ、俺物足りないなぁ」
腰を怪しく振りながら、ミスタが顔を近づけてきた。ちゅうっと音を立てながら唇を合わせられる。これは逃げられないなと思い仕方なく唇を開ければ、ミスタの舌が咥内に滑り込んできた。くちゅっと濡れた音が室内に響く。彼のペースのキスは、甘くぬるま湯のような快感があって、物足りないと思ってしまう。そうしてそれも彼の思惑通りなのだろう。
「ふふ、ルカのその顔好き」
キスが終わってぺろりと舌で唇を舐めながら、笑うミスタはまるで傾国の姫のようだった。男でありながらここまで魅力を持ちそれを理解して襲ってくるミスタは、恐ろしさすらあった。そしてこの極上のミスタを前に、きっと俺は餌を目の前に待てされた犬みたいな顔をしてるんだろう。これだからスイッチが入ったミスタに、俺は一生叶わない。先に手を出したのはミスタなんだ、どれだけ暴走しても怒られないだろう。
「もう無理は聞かないからね」
「分かってるよ。残さず食べてねルカ♡」
してやられているだけなのが悔しくて、俺はミスタをベッドに押し倒した。