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    TTK_gentei

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    TTK_gentei

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    ブロマンスってどんなものなんだろうと思って迷走した結果訳が分からなくなったやつ
    モブ女子視点

    神高には目立つ先輩がふたりいる。
    そのふたりは校内で変人ワンツーフィニッシュなんて変な名前で呼ばれていて、皆はその呼び名を揶揄半分、また何かやらかしてくれたのかと期待半分で使っていた。何かあったらまたワンツーか?今回は何したんだろうな、だなんて実際にはふたりと話したことの無い私のクラスメイトだったり、監督する側の教師が笑いながらその呼称を用いることが日常になっている。
    なにはともかく、そのふたりはとても目立つ存在だった。

    (……あ、またいる)

    放課後の図書館。自習室。
    学校の中の図書室ではなく、かといってすごく離れている訳では無いところにあるこの図書館には自習室があり意外と穴場なスポットだ。放課後の塾までに中途半端な時間が空いているため、時間つぶしのために私もよく利用する。少し奥まったところにあるので自習室は利用者もほぼおらず、パーテーションのお陰で個室のように快適な空間になっているからだ。
    しかし、ここ最近この空間に新たな利用者が増えた。それが、前述した変人ワンツーのふたりだ。

    ふたりからは背中合わせになるような、窓に向かった席に腰を下ろす。この自習室は壁にそって机と椅子が並べられており、真ん中に大きなテーブルが置かれている。その中でここは私の定位置であり、この席に座って1時間程度時間を潰してから塾に行くのがルーティンだった。席自体は自習に集中できるように区切られているが、ワンツーのふたりはその狭いスペースにぎゅっとくっついて席を利用していた。なにやらその前には本が高く積まれている。調べ物だろうか。

    私は彼らとは直接話したことはない。でも、この自習室で出会う彼らは噂でのイメージとは少し異なるようだった。少なくともうるさく騒いだりしないし、ただ普通に調べ物をしていたり、たまにワンのほうがツーに勉強を教えて貰っていたりする。それは特に他の高校生と変わったものでもなく、少なくとも高校全体で有名になるような人物のようには思えなかった。
    ふ、と窓ガラスに写った後ろの様子を見る。こそこそと小声で話すふたりだが、お互いだけを見ている横顔はドキッとするほど綺麗だ。彼らは非常に見目が良いので、もしかしたらそれで噂に尾びれ背びれがついたのかもしれない。そうだとしたら、ただ目を引くと言うだけであそこまで騒がれるのは大変だろうなと謎の同情をしてしまった。

    (まぁ、私には関係ないや)

    カバンからイヤホンを取り出し耳に装着すると、適当に参考書を取り出して広げる。ああ、傾き始めた陽があたたかい。さっさと終わらせて今日は早めに移動しよう、シャープペンシルをカチカチと弄びながらそう思った。


    ガクン。
    いつの間にかついていた頬杖から、頭がズレた拍子に目が覚めた。一瞬何がなにやらわからなくて混乱するが、開いたままのノートを見てああ自分はうたた寝をしてしまっていたのだと気付いた。
    あたたかいから危ないなとおもっていたが、その通りに眠ってしまっていたらしい。記憶があった時からあまり進んでいないノートを見返し、ため息を吐く。手元のスマホをみれば記憶よりは20分程度進んでいた、もう終わりにして塾へ早めに移動した方がいいかもしれない。外もこの短時間だがいつの間にか夕暮れへと変わってきている。先程まで陽光で明るかったからこの日当たりのよい部屋では電気もつけていなかったのだが、今ではすっかり赤い夕暮れに部屋の中を支配されていた。まるで別世界のように色付いた単なる自習室。綺麗ではあるがこのまま勉強するには向かないだろう。今日はダメだったな、そんなことを思って窓ガラスを見て、ビシリとそのまま動きをとめた。
    何の気なしに目を向けた窓ガラスに写っていたのは寝起きの自分の姿だけでは無かった。後方に座るふたり、こちらも眠りに落ちる前とは変わらず何かを調べているようだったが…なんだか、距離が近付いているような気がする。

    息を殺して、そのままふたりを眺めてみた。ツーの方…たしか神代先輩だったか、は何かの本を読んでいるようだ。それをワン…天馬先輩が見ている。それだけ。それだけの光景のはずなのだが、窓越しに見える天馬先輩の表情をみて、私は何も言えなくなってしまった。
    一歳しか変わらないはずだ。でもあの、まるで成熟した大人のような、なにかをいとおしむような表情はなんなのだろう。夕暮れに照らされたその横顔は、息を飲むほど美しい。私はまだその表情が孕むものをはっきりと理解することは出来ないし、ガラス越しに見ているせいで感じたことが間違っているかもしれない。でも、今の私には到底できない表情であることはわかった。

    なにか、見てはいけないものを見てしまった気がして目を逸らす。この自習室には今寝ぼけた自分と彼らしか居ないはずだ。変に勘繰ってしまう前にこの場所から離れてしまおう。
    そう決めたらさっさと。手元に広げていた諸々をカバンにそのままねじ込み、あえて音を立てて椅子から立ち上がる。そのままぐるりと回って彼らの横を通り過ぎる時、ほんの少し、ほんの少しの好奇心のせいでガラス越しではない彼らの姿を見た。

    バタバタ物音をたてたからだろう、天馬先輩はどうしたんだと言いたげに目を丸くしてこちらを見ていた。バチりと目があってしまったので会釈して通りしようとして、視界の端に映りこんだ神代先輩に視線を移す。こちらは私のことなど気にも止めずに、でも天馬先輩と同じ方向を─いや、私を見ている天馬先輩を見ていた。その瞳は、先ほどみた天馬先輩の表情とよく似ている。ひとつ違うとすると、なんというか……眩しそうだった。まるで手の届かない宝石を見ているような。

    一瞬しかすれ違っていないのに、やけに脳裏にふたりの表情と瞳が焼き付く。これ以上見ていられなくて、足早に自習室を後にした。扉を隔てると先程までの赤い夕焼けの色は館内には存在せず、無機質な電灯が照らしている。そのあまりのギャップに、私はもしかして夢でも見ていたのではないかと狐に化かされたような気持ちになった。思わず頬を抓ってみる。確かな痛みがはしった。くるりと後ろを振り返ってる。自習室というプレートとともに閉ざされた白い扉が目に入るが、残念ながらそれをもう一度開ける勇気は私にはなかった。もし戻って先程見たものが現実でも、夢幻でも、多分どうしていいのか分からなくなってしまうから。だから、全てに蓋をして、その日は静かに図書館から去ることにしたのだった。

    それからも数回、あの自習室で彼らをみかけることはあった。ただある時を境に私はあそこでの勉強を辞めてしまったので、今も利用しているかは分からない。彼らのことは構内で見かけることもあったけれど、当然ながら近付くことはなかった。きっと今後も彼らのことを私はこれからもこれ以上知ることは無いし、関わることも無いはずだ。

    けれどふたりを覗き見た時のあの憧憬とも羨望とも、もしくはそれ以外の何かかもしれない視線の美しさを私は生涯忘れることは無いのだろう。
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    TTK_gentei

    PAST赤い糸大作戦シリーズ(告白大作戦)https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17474345
    のおまけです。
    告白大作戦、のおまけ あの糸が消えてからしばらく、すっかりクリアになってしまった視界の中で自分と類は順調なお付き合いというものを行なっていた。スキンシップ…は別に減ってはいないしどちらかと増えてはいるが、まぁきちんとお互いが好き合って恋人になっているのだからあの時よりはよい関係を築いているのだと思う。

    「類、言っていた映画のパンフレットはこれだったよな」
    「あぁありがとう!あの時一緒に見た映画の前進はいつの間にか上映が終わっていてね…配信が始まってから見てはいたんだけどできれば監督のコメントが見たかったから助かるよ」
    「気にするな、オレも好きでたまたま買っていたものだったから」

     あれから数回、今度は自分達らしいデートも行なって、ようやく自分としてもしっくりくる関係性になった気がしている。今は昼休み。こういう関係になる前から一緒にランチを取ることはどちらが言わずとも定番化していたものだが、今は約束として二人の時間をなるべく取るようにしていた。相変わらずショーの話が9割ではあるが、残りの1割でお互いの話もするようになって、より近づけたような気がする。
    1920

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