3章 プロローグ「……奇妙な魂?」
腕にお昼寝中の初と終を抱え、空希は唐突に尋ねてきた桜夜に向き直った。
「はい……おじいちゃんがいればおじいちゃんにも相談してたんですけど……」
「にもってことはインディナと樹には相談済みか。二人はなんて?」
「百聞は一見にしかず、行ってみなさいとのことでした」
「はー、相変わらず考えるより動く派の夫婦だな……オレもそっちのがいいんじゃねぇかって思うけど、なんで今更相談なんて」
それに、少したじっとしてから桜夜は口を開く。
「それが……その魂の挙動が変というか」
「変?」
本来なら、輪廻転生をする魂はその魂が体験した記憶は次の生には影響が出ないように、保管はされるが持って転生することはない。
だが、桜夜の言う"奇妙な魂"は何やら行き場を求めて、散々に彷徨った挙句に何かを見つけて無理やり転生すると言った、ややこしいことをしていると言う。
結果として、その魂は無理な転生を繰り返してボロボロになってしまっている。
「俺がその魂の修復をしないと……いずれ、消滅してしまうのではって」
「……お前が手を出す必要があるのか?」
「え?」
初と終をベッドに寝かせ、布団をかけると空希は机の上のペンとノートに手を伸ばすと、二つは浮いて空希の手へやって来る。
ノートをサラサラと書いている間にも、桜夜の困惑した表情を見つつ予言を書き続けた。
「お前がわざわざ手を煩わせてまで、その魂の面倒を見る必要があんのかってことだよ」
「……それは……」
ただ、桜夜がわざわざ気になると言うくらいなのだ、きっと何かしらあるのだろう。
「その魂が、必ず惹かれる魂も……なんだか妙な縛り付けというか……変な条件下で転生を繰り返してて……」
「……なるほどな」
ため息をついて、何か短くサラサラと書くと桜夜の元へ来て渡す。
それは、普段のギリシャ文字による予言などではなく日本語で書かれた空希からの言葉だった。
「……ありがとうございます」
それを受け取って、桜夜は小さく笑う。
「ああ、それ……お前のやりたいことが終わった時に会った、そいつに渡しといてくれるか?」
「え……? わかりました」
頷いて桜夜が神殿から出ていくのを見ると、椅子にドカッと座り空希は足を組んで天井を仰いだ。
「……オレも相当なお人好しだよなぁ……」
ながーいため息をついて、先程その魂たちの予言が降ってきて見ていたが、なんとも世界とは残酷か。
「……桜夜が関与すれば、あの未来も……」
机の上のコップに入った水を飲み干し、次の予言を書くため空希は机と向き直った。
続