歪みの国のさとし 第3話岸はとっくに見えなくなる程飛んでいるが、未だに対岸は見えず赤いモヤが濃く立ち込めていた。波はとても穏やかで、まるで赤い海の世界でさとしとブラックしか存在しない様な錯覚を覚えた。そんな世界をブラックは迷うことなく真っ直ぐ飛んでいた。
しばらく飛んでいるとモヤの中に黒く細い影が現れた。
「あれなに?」
ブラックも気になったのか、ゆっくりとそれに近づいた。
黒い細い影は木だった。土もないのに、赤い海から一本の木が生えていた。木には葉っぱは無く、先っぽに一輪の小さな花がポツリと咲いていた。
「オレ…この花、知ってる」
「おや、さとしくんは桜と梅の違いすらも分からなさそうなのに」
ブラックがからかってくる中、ふわりと密かに芳香が漂った。
「うん。この花良い匂いするから好きだったんだ…でも、一輪しか咲いてないから、この木は枯れるのかな?」
ブラックが何も答えない代わりに、耳障りな鳴き声が響いた。さとしは弾かれたように振り向き、ブラックも少し遅れて振り向いた。
オモチャの子犬が赤い霧の中から姿を現した。海面を少し歩いては止まって鳴いて、少し歩いては止まって鳴く子犬に、さとしは既視感を覚えた。
「あれって…ホテルで見た…」
しかしホテルで見た子犬は見るも無惨に焼け焦げていたが、向かってくる子犬はフカフカしてそうな毛皮を身にまとっていて可愛らしかった。しかし、突然ボウッ!と勢い良く子犬の体から炎が吹き出した。さとしは驚いてブラックの頭にしがみついたが、それでもブラックは何も言わなかった。
子犬は真っ赤な炎と真っ黒な煙をあげながらも健気に近寄ってきた。
キャンキャン
少し歩いては鳴き、少し歩いては鳴き。
さとしはオモチャの子犬に何とも言えない恐怖を感じブラックを飛ぶように促した。が、ブラックはそれに応える事は一切なかった。
キャンキャン
しかし歩くにつれて犬の体は海に沈み始めた。しかしそれでも犬は未だにさとしに近づこうと歩いてきた。
キャンキャン
それを最後に犬はブラックの足元で力尽きた様に海中へ消えた。
「………」
ブラックの服をきつく掴んだ手が震えたが、ブラックは決して理由を聞いてこない。だが、動こうともせずさとしは震えながら口を開いた。
「い、今のは…」
色々聞きたいのに口が震えて上手く言葉に出来なかった。さとしがモゴモゴ口を動かしていると久しぶりにブラックから返事が返ってきた。
「さとしくん、どうかしましたか?」
「………なんでもない」
理由は分からないが言い様のない不安に駆られ、さとしは口を噤んだ。ブラックはじっとさとしを見上げたが何も言わないと分かるとゆっくりと飛び立った。
さとしはブラックから見えないようにそっと子犬が沈んだ辺りを振り向いた。
「(…あの子犬見たことあるんだよなぁ。でも、どこで見たんだろう?)」
すると、さとしの考えを遮断させるように花の香りが強くなった。花を方を見ると花びらがヒラリと海に落ちていくところだった。そこからはもう遠くに飛んでいた為見えなかったが、白い花びらは何かを暗示するようにじわりと赤く染まって海に沈んだ…。
だいぶ長いこと飛んでいたが、赤いモヤの向こうに黒い大きな建物のシルエットが浮かび上がってきた。そのまま城に突入するかと思ったが意外にも岸辺の方にゆっくりと降り立った。
「あの城が女王様の城?」
「ええ」
砂浜から緩やかな坂になっており、地面は砂浜から離れるにつれて緑に覆われ、城はその上の小高い丘の上に建っていた。砂浜から石を敷き詰めた小道が城に向かって延びており、二人は小道を辿って城に向かった。
小道の果てで荘厳な城が二人を出迎えた。城の手前は草原で、城の背後は薄暗い森が控えていた。城には詳しくないさとしだが、これは城というより宮殿だ、と思った。
「それにしても、凄い荒れてるね」
手前の草原は草が生え放題でブラックの膝まで伸びており、少しボロボロになっている石段を上がり鉄製の扉の前に立った。両開きのドアにはハートのクイーンの絵が描かれておりまるでトランプの様だった。大きなノッカーを持ちドアを鳴らした。
一度目は何も返事がなく、もう一度鳴らしたがそれでも反応がなかった。さとしが試しにドアを引っ張るとあっさりドアが開き、こっそり中を覗いた。中は明かりが付いておらず、薄暗くてよく見えなかった。
「すみませーん…」
さとしは隙間から体を滑り込ませた。
「さとしくん」
その時、背後からブラックののんびりした声が聞こえた。
「さとしくん、首は気をつけてください」
「へ?」
訳が分からず振り返ると、ドアが目の前で勢いよく閉まり、ブラックがいなくなった。
「はっ!?」
慌ててドアを押したり引っ張ったりしたが、先程すんなり開いたドアが今度はびくともしなかった。怒ってバン!と扉を叩いて振り向くと、暗くてよく見えないが、ここは玄関ホールらしく正面に大きな階段があり二階へ繋がっているようだった。進むしかないと思ったさとしが一歩足を踏み出すと、何かぐんにゃりした物に躓き、その時にレバーらしき物に触れ、思わずレバーを引いてしまった。
すると照明スイッチだったらしく、壁際と階段脇の燭台に蝋燭の火が付いた。天井から吊り下げられたシャンデリアには明かりが付かず、室内自体は未だに薄暗いままだが室内の異常さはしっかり見えた。
ホールには夥しい数の首を斬られた死体が転がっていた。余りの数の死体に理解が追い付かずさとしは叫ぶ事無く、呆然とそれらを眺めた。やがてホール内の惨状が理解出来ると叫びながらドアを叩いた。
「うわあああああ!!!開けて!!ブラック開けてーーー!!!!」
手が痛くなってきても叩く手を休めずに叩き続けたが、扉が開く事も、誰の声も聞こえなかった。さとしは諦めてホールを振り返った。中央には二階へ続く階段、左右一つ扉があった。さとしはキョロキョロしてどちらに行こうかと悩んでいると、可愛らしい、けど凛とした声がホール内に響いた。
「ん?」
声がした階段に目を向けるとそこにいたのは、黒いチューブトップに赤いパーカーを羽織り、長い赤い髪をポニーテールにした美少女が立っていた。美少女はさとしと目が合うと優しそうに微笑んだ。
「ここに迷い込んだのか?」
ニッコリと笑ったまま階段を降り、少女はさとしの元に近づいてきた。一見今からスポーツをしに行くような姿の少女にさとしは混乱し『貴方が女王様…?』と無意識に呟いていた。
「あー…確かにリーダーだからそういう意味じゃ女王だけど…そんな風に言われるとムズ痒くなるから『アカネ』って呼んで」
さりげなく自己紹介され、さとしは精一杯の礼儀をもって挨拶をしようとした。
「あ、あの、オレの名前は…」
「事情は知ってるよ。ブラックになんかに頼るな。さとしを守ってくれないぞ」
「え…?」
「アタシがさとしを忘れる訳ないだろ?…会いたかった。ずっと待ってた…」
そう言ってアカネをふんわりとさとしを抱きしめた。
「あ、あの…」
「おかえりなさい。アタシ達のさとし…」
耳元で囁くように喋られ、さとしは顔を真っ赤にした。体を離そうとしたが、意外と力強く抱きしめられて動けなかった。
「あ、あの、出来たら…すこし離れて…」
アワアワするさとしに構わず、アカネはさとしの肩に顔をうずめて囁いた。
「もう、誰にも、渡さない。首だけになって永遠にアタシの傍にいて…」
「…えっ?」
ぽかんとするさとしだったが、急にぞわりとした感覚に襲われ思わずアカネを突き飛ばした。一見変わりのないアカネだがアカネの方から何か禍々しい気配が漂っておりさとしは一歩引いた。
「どうしたさとし?じっとしてなくちゃ」
「く、首だけにって…?」
「こうするの」
すっとアカネが動き、さとしは反射的に頭を抱えてしゃがんだ。するとヒュッと風が頭頂部を撫で、さとしがしゃがんだまま上を見るとアカネは手刀を繰り出したようで、さとしの後ろにあった花瓶が綺麗に上下真っ二つに切れていた。
「こら動くな。顔に傷が付くだろ」
さとしは殺されそうになった恐怖から尻もちをついてしまい、立ち上がりたくても足が震えて立てなかった。
「じっとしてろよ。ちゃんと首をはねてあげるから」
「な、な、なんで…殺すんだ…!?」
さとしの言葉にアカネは戸惑った表現を浮かべた。
「殺したりしないよ。首だけになって欲しいだけだよ」
「首だけになったら死ぬじゃん!」
「死なないよ。永遠に生きられる。…なあ、さとし。ここにいれば安全だよ。誰もきみを傷つけない」
「え…?」
戸惑うさとしに、アカネは哀れむようにそっと目を伏せた。
「もういいんだ、さとし。無理しなくていい。きみは頑張った。でも、もう限界だ。だから、捨てよう」
その、声色はとても優しく、幼い子どもに言い聞かせるようだった。
「な、なに…?なにいって…?」
言ってる意味は分からないのに、さとしは動揺した。指先が冷え、視界が歪んできたが、その理由を考えのは怖く、さとしは唇を噛んで震えを抑えた。
「アカネちゃん!きっと何か勘違いしている!オレはただ、白ウサギを探していて…!」
「ウサギなんて追いかけるな!」
余りの剣幕にさとしはたじろいだ。
「あいつが言ったんだな。でもダメだ。ウサギなんて追いかけちゃダメだ。そんな事する必要ない」
「なんで、そんな事…」
「なあ、さとし。もうどこにも行かないで。ずっとここにいて。それならアタシが、さとしを守れるんだ…」
余りに切ない声にさとしの心は揺さぶられた。少しでも気を許せば頷いてしまいそうで、さとしは耳を塞いで必死に首を振った。そんなさとしにアカネは泣きそうな顔をしながらも手を振り上げてきて、さとしは前に転がるようにして避けた。そのまま大きな階段を駆け上がり、観音開きの扉を押し開けて飛び込んだ。
扉の向こうは廊下で、所々に豪奢な燭台が置かれており、それらが首を照らしていた。ずらりと並べられており足が竦んでしまった。その時、アカネの声が扉の向こうから聞こえた。
「さとし、待って」
声が聞こえたと同時に廊下を駆け出した。左右に扉があるが首だらけで近寄る勇気は出ず、さとしは目に付いた扉に飛び込んだ。
﹣ここからは各エンディングの話です。﹣
アカネは泣きそうな顔で手を振り上げ、さとしはとっさに外へ続く扉に駆け寄った。
「待って!!行くな!ブラックはさとしを…!!」
アカネが何かを叫んだが無視して扉に体当たりした。二回程体当たりすると扉が開き外へ飛び出した。
外は眩しく、さとしは思わず目を細めた。その光の中で、ブラックがハッとしたように振り向いた。
「おかえりなさい、さとしくん」
「ブラック…どうかした?」
「何もありませんよ。それより時計くんは見つかりましたか?」
「見つからなかった…。アカネちゃんっていう女の子がオレの首を取ろうとしたから驚いて出てきちゃった…」
「そうですか。でしたら戻りましょう」
「え?戻るってどこに?」
「公園にですが」
「けど…時計くんがいないとバラの扉が…」
「手段はありますよ」
「う…うん…」
ブラックのやたらと断定的な言い方に、さとしは胸騒ぎを覚えた。
「ねえ…ブラック…何かあった?」
「なぜですか?」
「…ううん。なんでもない…」
「さあ行きましょう」
妙にキッパリと言い切ってブラックとさとしはその場を去った。
血の海を越え、長い土管を抜けて二人は戻ってきた。お茶会のテーブルには肝田兄弟がまだ居て、さとしが話しかけようと近寄ると、二人は体を赤く染めて死んでいた。
「肝田!」
二人を揺さぶっても反応はなく、ゴトリと体が地面に落ちた。余りの出血に白いテーブルクロスも真っ赤に染まり血が垂れていた。
「何があったんだよ…!!?」
「どうやら誰かがお茶会を終わらせたようですね」
飄々とした口調でブラックが言った。さとしは肝田達の方を見ており気づいていなかったが、この時のブラックの表情はいつもの笑みとは違う深い笑みを浮かべていた。
「ひどい…誰がこんな事…!!」
余りのショックに座り込んださとしの隣にブラックが屈み、耳元で囁いた。
「ウサギかもしれません」
「そんな…どうして白うさぎが…」
「アレはさとしくんを食べたいから」
そんな事ない。さとしはとっさにそう思った。
しかし、ほとんど知らないうさぎに対して本当にそうなのかと自問自答を繰り返し、さとしの頭の中はグラグラした。
「大丈夫です、さとしくん。オレちゃんがアナタを守ります」
その言葉は、正に悪魔の囁きだった。
血の臭いに当てられ、さとしは軽く吐き気を覚えた。それに察したブラックがさとしを離れた所のベンチに座らせ、水を汲みに行ってくれた。その間、さとしは地面に転がった肝田兄弟の死体をボンヤリと眺めていた。
普通ならば悲しみや恐怖を感じる筈なのに、さとしは何も感じなかった。ただ、先程まで動いていた二人がもう動かないのは不思議だなぁという気持ちしかなかった。
「さとし」
とても小さな声がし、さとしはキョロキョロするが誰も居らず、空耳かと思ったが…
「ここだ。足元だ」
そう言われ下を向けると、とても小さな人間がいた。その姿はブラックに似ているが全く似ておらず、さとしは見下ろしたまま小さい人物に話しかけた。
「誰?」
「オレ様はブランクだ。…忠告だ。気をつけろ。アイツはは甘い言葉で欺くぞ」
アイツ、が誰を差しているか瞬時に分かったさとしは頭の芯が冷えるような気がした。
「何を言ってるんだ!ブラックはそんな事しない!オレを騙したりなんか…!」
「信じているのか…可哀想に…」
心の底から哀れむような口調にさとしは苛立ち、不安にもさせた。
「当たり前だ…!ブラックはいつでも助けてくれた…!」
「でもアイツらブラックに殺されたぜ…」
「う、嘘だ…」
さとしは二人の死体を見た。死体は鋭利な刃物で斬られたかのようだった。
「まさか…」
ぶちゅっ!と小さな音がした。さとしが振り返るといつの間にかブラックがブランクのいた所に立っていた。グリグリと擦るブラックの足から赤い血がじんわりと滲んできた。
「ブラック…」
「さとしくん。彼の話を聞いたらいけません。彼はアナタを惑わす為にああ言ったのです」
ブラックはブランクと反対の事を言った。…どっちが本当の事を言っているのだろうかとさとしは考えた。
﹣ブランクを信じる﹣
「ブラックが…殺したの…?」
「………」
「嘘だよね?嘘だと言ってよ…!」
「さとしくん」
ブラックは否定せず、ただ笑いながら宥めるように名前を呼んだ。普段鈍いさとしだが、何故かそれは肯定だと悟ってしまった。
「なんで…?なんで殺したんだ…!?」
ブラック服を掴んで激昴するさとしとは対照的にブラックは可笑しそうにに笑った。
「邪魔でしたから」
「邪魔…!?」
「皆さん邪魔なんです。さとしくん以外いりません」
顔は笑顔だが冷たい声色にゾクリとして思わず服から手を離し一歩離れた。
「さとしくんはオレちゃん達のさとしくんです。だけど、オレちゃんは、オレちゃんだけのさとしくんが欲しくなったのです」
「そんな…どうして…?どうしてそんな事言うの…?どうして急にそんな事を言うの!?」
「すぐ傍にあるのに手に入らないなんて嫌だからです。…気づかないままでしたら良かったのに。真実なんて知らない方が良いんです」
優しく囁いて、ブラックの手がさとしの頬を撫で、喉元に伸びた。
「おいで、さとしくん。もう傷つかなくていいのです」
ブラックが強くさとしを引き寄せ、そして躊躇いなく首筋に噛み付いた。絶叫するさとしに対して、煩いとばかりに喉を裂いた。
気が狂いそうな痛みと恐怖の中、さとしは自分の肉が喰われる湿った音を聞いた…。
夕暮れの住宅街の中で、一匹の猫が音もなく目の前に踊り出した事で白戸は足を止めた。夕日を背に黒い毛並みが赤く縁取られていた。猫を見る白戸の表情は、驚く程に冷たい表情をしていた。
「……………」
猫の大きな口からポタリと赤い雫が零れた。それは妙に甘い匂いがした。
「あ…あぁ…」
匂いを嗅いだ白戸は徐々に絶望の表情を浮かべた。そしてそれを見た猫は満足そうに背を向けると、ひょいと逃げ出した。
「…えせ。さとしくんを返せ!!!!『ここなら永遠に幸せに生きられたのに!』ブラックぅぅぅぅ!!!!」
そう叫ぶ白戸の声を聞きながら猫はニンマリと笑った。
﹣ブラックを信じる﹣
一瞬ブランクを信じかけたさとしだが、いつでも自分の味方してくれたブラックを疑うなんてどうかしていると思って一人心の中で反省した。
考えが纏まったさとしはゆっくりと目を閉じた。こうすると良くないものは何も見えない。
肝田も、ブランクの死体も何も見えない。自分を惑わすものは何も見えない。
「さとしくん?」
ブラックの声はいつでも自分を安心させた。
「俺は…ブラックを信じる。だから…」
ゆっくりとさとしは目を開けた。
「だから、もういい…」
自分の言葉だが、その言葉は真実としてよく染み渡った。
「そうですか。では、行きますか」
オレちゃんはさとしくんをを肩の上に抱き上げた。
「え?行くってどこへ?」
さとしくんはオレちゃんの頭にしがみついても抵抗はしない。その姿は微塵もオレちゃんを疑っていなくて、その無防備さが愚かしくて、とても愛おしいです。
「帰りましょう」
「でも、ウサギを追いかけないと」
「ウサギなんか放っときましょう」
肩の上から戸惑った空気が伝わってきました。さとしくんは首を傾げるようにしてオレちゃんの顔を覗き込んできた。
「…そうやってオレに言うの初めてだね」
「そうでしたか?」
…それはそうですよ、さとしくん。オレちゃん達はアナタの意思を越えることなんか出来なかったのです。けど、この世界の天理は崩れ、鎖は切れました。そうじゃなければ 、オレちゃんは永遠にアナタの忠実な『悪魔』でした。
「ウサギの事は忘れましょう」
「でも…」
おバカな癖に妙に真面目なさとしくんはバラの門を振り返ります。
「もう悪い事なんか起きません。ウサギの事は忘れる。いいですね」
「…何も…起きない?」
「はい。さとしくんはオレちゃんを信じてるんでしょう?」
「うん」
「なら、ウサギの事は忘れてください」
さとしくんは少し黙ってオレちゃんを見つめます。
「…ブラックは…オレの味方?」
「はい」
「それならオレは、そうする!」
そう言ってさとしくんは無邪気に笑います。
あぁ、なんて、愚かなんでしょう。
オレちゃんのさとしくん。アナタが望むなら、これからも忠実な悪魔を演じます。その為なら、オレちゃんは何でもしますよ。
ええ、なんでも、ね。