序 視線が痛い。
そう感じながら出陣するのは何度目になるだろうかと、山姥切国広は自問する。わからない。数えるのはもうやめたのだった。
わかるのは、これがいつから始まったのかということだ。
始まりは、一振の刀の顕現だった。国広の本科――山姥切長義。
この本丸では、新しく顕現した刀がある程度暮らしに慣れた頃、しばらく近侍に就くことになっている。近侍の仕事の中には、出陣部隊の見送りも含まれる。
今日も、隊長である国広を、射るように見ている目があった。
「……行くぞ」
国広は部隊に向かって呼びかけた。号令に呼応して、部隊は移動を始める。
「まったく、……なんて、俺の仕事じゃ――」
視線に背を向け、逃げるような気持ちで出陣する。
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