通り雨エリック・セローは雨が苦手だった。
自分の死因だからだろうか、それとも自分が一番想う人が雨を好きではないからだろうか、あるいはデュナミスの再現体となった自分が周囲の人間の想いを無意識のうちに感じているからだろうか。
理由は全くの不明であったが、おそらくそのどれもが少しずつ作用してそうなっているんだろうと考えていた。
苦手というほどでもない、と自分に言い聞かせていたし、彼は自分がおもうよりも精神的に老成してしまっているので(アーテリスで彼の表を見れるのは世界で一人だけだが)表に出していないだけであった。
そんな雨の日、エリックとイヴォカが東部森林で雨宿りをしていた。
しまわれないまま持ち主が居なくなってしまった小さな天幕の下に、突然降ってきた雨から避難して暇そうに雑談をしている。
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