浮奇は何をしたい?と聞かれ、俺は少しの間戸惑って言葉をなくした。だって、あなたがここにいる、それだけで俺は十二分に満足していたから。目の前で愛しい唇が俺の名前を発音するために動いているって、さっきからそんなことで感動してる。
「浮奇?」
「あ……、ああ、えっと……ふーふーちゃん、疲れてない?」
「全然。浮奇こそ、朝から落ち着かなかっただろ。我慢させてごめんな?」
「……まって、ね、ちょっとまた泣きそう」
「泣き虫だな。ハグが必要か?」
「そんなこと言うと本当にするよ……」
「本気で言ってるよ」
俺がその腕の中に飛び込むより先に、ふーふーちゃんが俺の手首をグッと引っ張り腕の中に閉じ込めた。俺を包む香水の香りに、初めてそれを嗅いだくせに「本物だ」なんて思った。
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