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    しろ🐾

    @shiro222lux_noc

    20↑ / 腐 /今は主に🌈enの🔮に狂ってる/ 🐏🔮&🔮🐏

    ベッター:https://privatter.net/u/shiro222lux_noc
    表紙つき新書SSの画像か、行間が空いていない横書きで読めます。

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    🐏🔮「気持ち悪かったなら、悪かった」「えっ、きもちわるいのかな」「俺に聞かないでくれ…」

    冬眠するさいぼぐの続き
    https://poipiku.com/5397800/8432647.html
    三題噺お題:夜空、言葉、傘
    https://mayoi.tokyo/switch/switch2.html

    #PsyBorg

    傘は君が持ってね 夜の散歩が好きだ。猫の遺伝子がそういう気分にさせるのか、元々そういう性格なのか、朝が早いのよりも、夜が遅い方が好きだった。どの季節でも、夜の方が良い匂いがする気がする。最近は春が近いから、寒すぎず暑すぎずで服を選ぶのが楽しくもなってくる。
     最近よく一緒に飲みに行く人が、近くにいると言うので、チャットで喋りながら街の方に向かうまでは、気分は上々といっても良かった。
    「……最悪なんだけど」
     人通りの多いところまでついてすぐに、ザァッと周りで音がし始めて、冷たい雨が降りかかる。
     急いで近くのお店の出入り口の傍に避難をさせてもらう。少しだけひさしがついていて、身を小さくしていれば雨は当たらなかった。
     背後を見ると、ショーウィンドーの中には最近発売されたというハードカバーがいくつか並んでいた。
    「はー……どうしよ」
     髪を軽く叩いて水滴を落として、濡れた手を腰のあたりで拭う。服に合わせて鞄を選んだから、今日はハンカチを入れる余裕が無かった。
     目的地まではまだ結構距離がある。雨に降られたから雨宿りをしている、とメッセージを打ったきり、返事が返ってこなくなった画面を見ていると、「良かったらどうぞ」と声をかけられた。
     顔を上げると、大柄な人が、俺に向かって黒い傘の取っ手の方を差しだしてきていた。長めの白髪に、焦げ茶の丸い耳。熊だ。
     お店から出てきたのか、反対側の手には茶色い紙に包まれた本らしきものを持っていた。
     そしてその人の顔には見覚えがあった。勤め先のカフェに来てくれる人だ。良く来てくれて、お気に入りの席がいくつかあって、種類の少ないお茶ばかり頼んでいる。顔と身体がちょっと好みだから、同僚に頼んでよくテーブルに行かせて貰ってるけど、注文に関すること以外はあんまり話したことがない。
     どうしようかと黙っていると、俺が警戒していると思ったのか、彼は大きな手を開いて見せた。
    「あ、怪しいものじゃない。結構降ってるし、これからどこかに行くなら困るんじゃ無いかと思って」
     俺はこれから帰るだけだし、と身体に対して比較的小さい声で、その人は付け足した。
    「せっかく綺麗にセットした髪が、濡れて台無しになったら大変だ」
    「……そういうことも、言えるんだ」
    「え?」
    「いつも、一人で座って、むすってしてるから、もっと気難しいのかと思った」
     そう伝えると、ふわっと緩むみたいに目の前の顔が笑った。
    「客一人一人の顔を覚えてるのか? すごいな」
    「そ、んな感じ。うん、そう」
     正確に言うと、ひとりひとり覚えてるわけではないんだけどね。
     相変わらず傘を差し出されたままだけど、思っていたよりも気のよさそうなこの人を、自分のせいで濡らすわけにはいかなかった。せっかくだけど、と傘は彼にそっと押し返した。
    「申し訳ないから、これは大丈夫です」
     そうすると、今度は目を丸くされた。意外に表情豊かな人なのかな。
    「……なにか?」
    「あぁ……いや、意外と丁寧に言葉を返してくれるから」
     一瞬嬉しくなりかけてから、言われたことをゆっくりと頭の中で転がした。
    「それって、俺が、誰にでも自分が好きなように話すやつだって思われてるってこと?」
    「あー、いや、その……」
     片脚に体重を移して腰に手を当てて彼を睨むと、気まずそうに目をそらされた。まだ口の端で笑ってるけど。
    「……まぁ、正解ではあるけど。あんた……あなたは、店のお客さんでしょ」
    「いや、今のは完全に見ためで判断した言葉だった。君の言うとおりだ。悪かった」
     そう言われると、こっちだって見た目で判断はしていたことを思い出して、黙ってしまう。
     お互いの声が止むと、急に雨音が大きくなった気がしてつい顔を上げた。
    「あー、じゃあ……お詫びにこの先にあるカフェで一杯おごるから、そこで雨宿りするってのはどうだ?」
     おすすめのメニューを聞いて、つい彼の顔を見た。
    「ん? 好きなのか、エッグタルト」
    「……好き、だけど」
    「それはよかった」
    「……」
     何も言ってなかったのに、見抜かれて少し悔しい。尻尾を左右に揺らしている間、彼は黙って待っていてくれた。
    「……あん……あなたも、一緒に座ってくれるなら」
     心配そうだった目が、また優しく笑った。
    「浮奇がいいなら」
     あと、あんたでいいぞと言われたけど、俺はそれどころじゃ無かった。
    「どうした?」
    「名前、知ってるの?」
    「……あー……店で、呼ばれているのを何度か聞いているから」
    「ふーん……?」
    「気持ち悪いなら、悪かった」
    「え、きもちわるいのかな?」
    「俺に聞かないでくれ……」
    「んー……?」
     考えてみると、気持ち悪くはなかった。むしろ……良い気分が、戻ってきてるかも?
     今度は、迷子にでもなったみたいな顔をしている彼を見上げる。
    「……どうすればいい?」
    「うん」
     鞄を持ち替えて、彼の隣に立った。
    「そっちの名前を教えてくれるなら、いいよ」
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