.したい/寝たい理解と慧は性行為自体の回数は少ない。それ以前の前戯とは、一緒に寝る日は必ずと言っていいほどやっている。やっているのだが、慧が急に冷めたり、理解が先に疲れてしまったりするなどして、最後まで行かないのだ。
「くぅ…くぅ…」「…寝やがった」
そして今晩も。慧が触れているうちに、理解がうとうとし始めてしまい、挙句寝てしまった。
理解の入眠時間を鑑みればおかしいことではないのだが、慧としては、こうも行為に乗り気じゃない態度を取られると、流石にムカついてくる。
「理解起きろ。まだヤってねーぞ」「んー…すぅ…」「起きろっつってんだバカ」「すぅ…すー…」「はぁ…」
寝巻きの上半身をはだけさせたまま、身体をほんのり赤くして寝ている姿は、さながら赤子だ。寝てしまったものはしょうがないと考えるも、それでイライラがおさまるか、という話にはならない。
そこで慧は妙案を思いついた。
「いいのか理解?起きねーと…好きにしちまうけど?なぁ。いいのか?」
起きないなら寝たままやってしまおう。慧はそんなことを考えついたのだ。
着衣のまま、腰だけ理解の身体にあてる。やっちまうぞー、と声をかけながら、ゆさゆさ腰を揺らす。冗談ではなく、かなりガチで。
「くぅ…くぅ…」
「………はぁ」
しかし、起きるどころか反応ひとつ見せない理解の寝顔は、何も知らないように穏やかだった。慧はなんとなく、やる気が失せた。
そんなに興奮してなかった自分は意外でもなかったし、眠る理解のことも期待してなかった。できればいいな、程度にしか思ってなかった。
「ったく…バカがよー…」
なのにどうして、こんなに残念なのだろう。
もしかしたら、起きた理解が誘ってきてくれたかもしれない。
もしかしたら、そのままやってしまえたかもしれない。
もしもはこんなに思いつくのに、現実は非情である。
互いに、性行為をするためだけの関係ではない。だが性行為を全くしない関係でもない。期待したっていいだろう。男なんだから。
「ッ〜〜チッ!!あ"ああ"もうバカがよ!!死ね!!」
どうしようもない怒りを覚えながら、慧はなんとか眠った。