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    Ruztie_Rusty

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    Ruztie_Rusty

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    🧡のわくわく大冒険!(仮)なタイムトリップもののプロローグから冒頭まで。
    多少拙いところは校正中なので許してね!はやく完成させたい……

    思うに、人は生まれながらにして、その世界で果たすべき役割を持っているのだ。
    アダムとイヴが禁忌の林檎を齧ったように。ノアが約束の虹を見たように。
    それは運命という形を持って、僕らの人生に透明な道を敷く。
    また、それは秩序という形を持って、僕らは大いなる流れの一雫となる。

    それじゃあ、世の理から外れた僕らはどこへ行けばいいのだろう?
    常識も日常も飛び越えて、遥かなる未来へ誘われた僕たちは、かつて持ち得た役割の果てを見届けぬまま、どうしようもなく掌の上で持て余している。真っ暗闇の不安定な綱渡りに投げ出されてなお、ただ一歩でも進むため必死にしがみついているのだ……目にすることもなかったはずの、数多の光を浴びながら。

    もしや、この世界の賽を転がす神々は、それすらも運命と秩序の寵児であると宣うのか。
    ならば、それはきっと——





    「MystaとLucaがいない?」

    Ikeによって緊急招集をかけられたLuxiemのボイスチャット。すぐに参加したShuとVoxを見るなり、ああ全員揃ったね、と微かな苦しさを滲ませた彼の声を聞いて何も察さないほど、ここに来た2人は愚かではなかった。
    オウム返しとして洩れたのが冒頭の一言だった。
    依然として渦中の2人は姿を現す気配がない。Ikeは詰まった息を重たそうに吐き出してから、こう続ける。

    「Lucaと少し打ち合わせをする予定があったから、約束の時間にコールしたんだけど応答する気配がなくてね。
    少し不安になって数人に確認してみたら、やっぱり数時間前から誰も連絡がついてないみたいなんだ。そうやって確認していくうち、Mystaも同じように連絡が取れなくなっていることが分かって」

    (もうちょいやりとりに厚み持たせたい)

    「それに、2人とも同じくらいの時間に予定してたストリームを今も連絡なくすっぽかしているようだから……」
    「うーん、2人は物理的にかなり距離があるし、関連性があるかは分からないけど……同じタイミングでっていうのは、ちょっと気になるね。何か良くないことに巻き込まれていたりして」
    「Shu、お前の呪術で何とかならないのか?」
    「もう、呪術は魔法じゃないんだから!何でも屋さんじゃないの!
    ……仮に何とかできる方法があったとしても、どのみち2人とも僕から離れすぎてる。そのうえ連絡も取れないとなったら、今すぐには術の掛けようがないってのが本音だよ」

    でも、と続けようとして、Shuは反射的に続きを飲み込む。それが解決策とは断言できないから。
    彼のその気配を察して、VoxとIkeは静かに続きを待った。良い意味で過度な期待のないその空気に幾分か安堵しもう一度口を開く、だけどね。

    「祈ること、願うことならできるんだよ。この3人でなら、きっと。
    ……まあ、こんな状況じゃ気休めにしかならないか、ごめんね」
    あはは、と誤魔化すように残響する笑い声。それはどうにもカラカラに乾いていて、隠し切れない動揺を孕んでいた。

    ただの寝坊や体調不良なら、良いんだけれど。
    そう呟いて不安そうに揺らぐIkeの視線の先には、依然としてオフライン表示のまま動かない、2人分のアイコンが並んでいた。





    「な、何だよここ……!」
    見慣れているが、明らかに違う街並み。
    何度思考を巡らせても変わらない、現状置かれている状況から導き出された結論。無意識に、ひゅっと喉が鳴った。
    「これ……オレの時代、か?!」


    遡るのは少し前。
    ストリーム開始の予定時刻まで30分を切って、オレはいつも通り、今日のストリーム内容と機材やツールの最終確認をしていた。
    「This city’s chaotic at night, DA DA DA BI DA DO~」
    それらも問題ないことを一通り確認し終えて、PCの前にそわそわと座る。オレのストリーム開始を待ち望むリスナーと同じように、オレだってストリームが本当に楽しみなんだ。
    「どうしようもなく、ボクの側にいたいー♪」
    特に今日は、朝起きたときから何故だかとても調子が良い。こんな清々しい朝には、新鮮な空気を吸い込みながら近所を3周くらいランニングするのも良いとさえ思っちゃう。しないけど。
    そうしてデビュー曲をご機嫌に口ずさんでいた、そのとき。

    後方、キッチンスペースとこちら側のリビングスペースを仕切る扉の向こうから、隙間風のような呻き声のような、形容しがたい唸る音を聞いた。

    「えっ……何?マジでクソ怖いんだけど」
    先ほどまで最高潮に上がっていたテンションが、一瞬にして地に落ちる。
    しかし当の怪音は、オレが注視しはじめた途端、厭に鳴りを潜めて静まり返りやがった。

    このまま気にせず放っておこうか。根本的な解決にはならないけれど、こういうことは無関心が一番だと相場が決まっている。
    そう思い込もうとしても、視線は扉から外せないまま。

    ま、まあ、静かになったから何もないでしょ。でも、何かの気配は感じるんだよな。いや、これはきっと急な音にビビって気にしすぎてるだけで、ああでも……。

    「……うん、ストリーム中に何か起きるのはもっと怖い」

    ううぅ、と唸って椅子にへばりついていたが、このままではあの怪音の正体は扉の向こうに居座り続けてしまう。ああ、もうどうにでもなれ!と半ばヤケになって、床を蹴り上げるように立ち上がった。

    大丈夫、隙間風に違いない。それをちょっと確認しに行くだけ。テープか何かで軽く塞いでやればきっと止まるはずだ。第一、ここ数日はずっと家にいたから、不法侵入なんかされようものならすぐ気付くし。オバケはもっとありえない。そう、オバケなわけがない!オバケは絶対に違うし!!ここは訳あり物件じゃない!!!

    そう自分を鼓舞しながら、ゆっくりと扉に近づく。
    2ヤード、1ヤード、10インチ。
    丸腰にストローだけ手にしているお前を外から見ればさぞ滑稽だろうな、との妙に客観的な内心の声に中指を立てる。こっちは必死なんだよ。
    3インチ、2、1……、ゼロ。
    ばくばくと鳴る心臓を何とか宥めながら、深呼吸をひとつ。強張って震える指先をそっとドアノブに掛ける。
    心なしか、扉の向こうから禍々しい気配がするような。いいや思い込みに違いないと、いやな考えを吹き飛ばすように頭を振る。
    そうして意を決し、全力で扉を開け飛び込んだ先には。

    「……クソッ!何もないじゃんバーカ!!」

    口では思いつく限りの罵倒を絶え間なく吐きつつ、やっぱり隙間風じゃないかと安堵する。それじゃあとっとと音の元を探しに行こう、と軽く振り返って……。
    「……え?」

    忘れもしない、あのネオンパープル。オレをこの時代に連れ込んだ元凶が、大口を開けて待っていた。

    「っ、ダメだ!離れないと——」
    その判断が一寸遅れたオレは、再び前後不覚の奈落へと、なす術なく吸い込まれてしまったのだった。





    「ハーイ、Mysta!今日の推理の調子はどう?」
    「ああMysta、今度依頼したいことがあるんだが」
    「Mysta?こんな朝早くに君が外を出歩くなんて珍しいね。何かの調査かい」
    「ねえ、あの人ってそんなに有名なの?」
    「ハッ!そりゃあこの街に住んでたら誰もが知ってるね。キツネのキャスケットにオレンジサングラス、天才名探偵Mysta Riasさ!」

    ああ……こっちの社交性バッテリー残量なんてお構いなしに構い倒されるこの感じ。これが日常だったときのオレは本当に頑張っていたと思う。

    押しつけられる話題をうまく躱しながら、何とか基本的な情報は集めきれた。
    やはり、どういうわけかオレはあの日の朝——未来に飛ばされたその日の、早朝に戻ってきてしまったようだった。



    つづく
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