Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kmchi78

    @kmchi78

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    kmchi78

    ☆quiet follow

    片想いの郁弥の話。
    ・FSのネタバレしかない、と言っても過言ではないくらいFSの話です。
    ・この旭郁は必ず両思いになりますが、今回は片想いでおわってます
    ・この後、大した苦労もなくくっつくしラブラブになります

    だけだよ みんなに優しくてみんな好き。僕もその中のひとり、なんてことはわかってた。
     だから、思いがけない言葉にびっくりしてつい油断してしまった。
     水泳に向けられたものなんだってわかってるけど、旭の中に僕を特別に思うなにかがあることが嬉しかったから。
     ポロっとこぼれ落ちた本音のかけらには、たぶん気づかれてない。いつも素直じゃない態度をとっていることが功を奏したみたいだった。それもどうかと思うけど、今はバレずに済んだことの方が大事だから。

     旭にだけだよ、ひねくれたような言い方をしちゃうのも。すぐからかうような態度を取っちゃうのも。許してくれるってわかってるから。
     旭にだけだよ、友達じゃなくてもっと特別な、絶対に素直に言えない好きって気持ちを抱いてるのも。

     再会して、話をして、色んなわだかまりが解けて。会えないことがあたり前だったのが一転して、急に手の届く距離にいつでもいるようになっちゃったから、なんだか意識する機会も増えて。気づけば思いを寄せるようになっていた。
     でも、この気持ちをどうにかするつもりはなかった。どうにかの方法がよくわからなかった、が正しいかもしれない。
     ただ、好きだなって思ってた。思ってただけだったのに、たまにどうしようもなく苦しくなって暴れ出しそうになるなにかを必死に抑えていた。なんとかそれをやり過ごした後はちょっとだけムカムカした。なんで僕ばっかりこんな気持ちにならなきゃいけないのかって。
     そういうことを何度も何度もひとりでひそかに繰り返してたときに、特別なんて言われたら気が緩んでもしかたない。
     大切なことを決意する後押しにもなったし、旭にはちゃんとお礼をして自分から進路について伝えたいと思ってた。

     年末の実家への帰省。最寄り駅で旭と一緒に電車を降りて、閑散とした田舎道を少しだけゆっくりとした歩調で並んで歩く。
     ぽつぽつと続いた会話が途切れた隙を狙って、なるべく今まで同じようなテンションで話し始める。
    「僕、プロを目指すことにしたから」
     さりげない会話を装ったつもりだけど、うまくできたかわからなくて旭の方をみれず視線は道の先に向けたままだった。
    「すげーじゃねーか! がんばれよ!」
     ほんの少しの嫌味も含まれていない、いつもの明るい声がすぐに返ってきたことにホッと胸を撫でおろす。
    「うん、がんばる」
    「ま、俺も負けねーけどな!」
     プロかぁ、いいよなぁプロ、なんて本気でうらやましがりながらも祝福する気持ちは全く嘘じゃないなんて、旭ってバカなのかすごいのかよくわからない。
    「ありがとう」
    「突然なんだよ」
     確かに唐突だったなって口にしてから自分でも思ったけど仕方なく続ける。
    「旭っていつも希望にあふれてるから」
    「んだよ、それ。能天気なバカって言いたいのか?」
    「そうかも」
    「おい」
     ポンポンとテンポよく進んでいく会話が心地よくてつい、いつもに流れになりかけたけど思い直して小さく咳払いをして一拍おく。
    「知らないところに飛び込むのは怖いけど、僕らしくやってみようと思って」
     足を止めて、左隣にいる旭の顔をまっすぐにとらえる。
    「いつもキラキラしてる旭が、そのお手本なのかも」
     なんか、うまく言えないなって思ったけど目の前でじわじわと頬が赤く染まっていく様をみるに感謝の気持ちは伝わったみたいだった。
    「照れてる?」
    「からかうなよ!」
     言いながら顔を背けた旭の前髪がふわっ揺れたとき、いつも堪えてるなにかが突然ブワッとせりあがってきた。
    「好きだよ」
     それは言葉という形になって、ついにあふれでてしまった。
     旭はちょっと顔をしかめながら、不思議そうに首をかしげている。
    「こんなに好きなの、旭だけだよ」
     一言でたら、もうなんかいいかなって気分になって、どうせなら一緒に苦しんでもらおうみたいなちょっと投げやりな気持ちも混じりながら、伝わるかもわからない言葉を続けた。
    「じゃあ、また来年」
     固まっている旭を置きざりにして、本来の別れ道とは違う一番手前の曲がり角を進む。後ろから追ってくる気配はなかった。

     やっちゃったな、という後悔はなく不思議とスッキリした気分だった。
     きっと旭は一生懸命あの言葉の意味を考えてくれて、なんかしらの答えをだしてくる。
     どんな結論になってもきっと友達でいてくれるし、応えられなくても好きでいることを許してくれる。
     そうなるってなんとなくわかってたから今まで言えなかったんだな、とこれまでも頭の片隅にあっただろうことをはっきりと自覚した。
     優しさに甘えてばっかりで自分勝手で、人を振り回す。たしかにそういう人間なんだな僕って。
    「ごめんね」
     誰もいない道端でのひっそりとしたつぶやきなんて当然相手には届かないけど、言わずにいられなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭💞💗
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    kmchi78

    DONE2023/12/17 Dozen Rose FES.2023内で開催される、旭郁オンリー『朝昼幾夜重ねても♡DR2023』に参加します

    スペース:南1ホール エ49b きむち鍋

    「友達と恋人になる100の方法」
    文庫サイズ・フランス製本/64P/500円(イベント頒布価格)

    両思いからはじまる大学生旭郁
    恋人になりたい旭と友達が減るのが嫌だから恋人になりたくない郁弥による三ヶ月の茶番劇
    友達と恋人になる100の方/『朝昼幾夜重ねても♡DR2023』新刊サンプル 合同練習終わりの帰り道、珍しく郁弥と二人きりになった。他愛のない話をしながらいつもより少しゆっくりと歩いて最寄り駅まで向かう。帰宅ラッシュの時間ではないものの、それなりに人通りの多い道だからわざとペースを落としていても気づきにくいはずだ。
     普段通りに歩けばちょうど電車の到着時刻に間に合い、すぐに別れることになる。その前に話がしたかった。
    (中略)
     意味が分からないんだけど? とでも言いたげな不信感のにじむ視線をまっすぐに捉えてから口を開く。
    「郁弥のことが好きだ。俺と付き合ってほしい」
     ポカンと軽く口を開けた間抜け面すら、可愛いと思えてしまうから重症だ。
     ずっと友達だと思ってた。いまも表面上はそうしてるけど本当は違う感情を抱いてしまっている。
    1579

    kmchi78

    INFO2023/3/25 pictSQUARE内で開催される旭郁webオンリー『朝日のあわいに幾夜を想う2』に参加します
    スペース:え5

    「おやすみの前にいいたいこと」
    A5正方形/28P/580円(BOOTH頒布価格)

    初夜を大成功させた二人が、二度目をどう誘うかでそれぞれ悩む話
    ※全年齢/直接的な表現はありません

    BOOTH匿名配送を利用します。商品ページは当日スペースでご確認ください
    【3/25 朝日のあわいに幾夜を想う2】旭郁新刊サンプル どうしてこんなことで悩まないといけないんだろう。 
     せっかく好きな人と両想いになれたのに。心だけじゃなくて体も通じ合えたのに。
     頭の片隅をよぎる初めての夜のことを打ち消すように、ハァァとわざとらしく大きなため息をついてみる。
     自室だし、ひとりだし、別にいいんだけど。どうしてもだらしなくポーっとした表情を浮かべてしまう自分が嫌でブンブンと大きく頭を振ったところでもう遅かった。だって、すごくうれしくて幸せだったから。ここに至るまでの苦労とか、ギリギリのところで我慢し続けた日々とか、いろんなことを思い出して感極まって繋がってからはほとんどずっと泣いてた気がする。
    『わかったから、もう泣くなって』
     最初で最後じゃないんだから、と言いながらやさしく目元を親指で拭ってくれた旭の瞳は潤んでなかったけど、同じ気持ちでいてくれることが表情だけじゃなくて体中から伝わってきて、さらに涙があふれてきてしまった。
    1721

    recommended works