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    くり:kurikuritoo

    @kurikuritoo
    ぷらいべったーや新書メーカーには置かない短い小話たちの置き場所です

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    二四六さんの「不良にはキョーミない保健体育のベジータ先生」が素敵すぎてギュンギュンして、ついウッカリ書いちゃった話😂 カカベジです。
    ベジータ先生の水泳の授業とか👶がウンヌンの保健の授業とかどうするんでしょうワクワクします。

    #カカベジ
    Kakarot/Vegeta

    『保健体育のベジータ先生』---------------------------------



    ガキの頃から元気が良すぎるくらい元気だしヤンチャではあったけど、悪いことは別に好きではなかった。
    でも、まあ、土方の現場で働く父ちゃんは荒っぽくて、ウチによくメシを食いに来る仲間たちも含めて決してガラがいいとは言えなかった。「根はいいヤツだけど乱暴でガサツ」を絵に描いたような人たちばかりが、ガキの頃から周りにいたんだ。二つ上のターレス先輩(不良)と同級生で、よく一緒につるんでいた兄ちゃんも品行方正とは言い難かった。

    腕っ節が強かったオラは喧嘩の助っ人に呼ばれることも多くて、相手中学の不良連中十数人を一人で倒したりしてたら、気がつけば地元でオラを知らねえヤツはいねえくらいの有名人になっていた。……たぶん、あんまり良くない方の意味で。
    噂には尾鰭がついて、十数人の不良のはずが100人を一人で倒したみたいになって、クラスメイトからは次第に遠巻きに見られるようになった。注意されていちいち説明するのも全部面倒になったから、高校に入ると同時に髪を金髪に染めて逆立ててみた。すると余計なことを言ってくる連中や無駄に絡んでくるような奴らは誰もいなくなって、視界がスッキリした。
    オラが怖いだって? ならそれでいーよ。
    ムシャクシャしたら、呼ばれた喧嘩で拳を振り回してれば、気が晴れたから。

    でも高校ってつまらねえな……
    辞めたら母ちゃんが泣くから辞めねえけどさ。そんな毎日が続いた。


    二年生の四月のことだった。
    教師も異動やら新卒やらで入れ替わりの多くなる時期で、学校も見知らぬ顔が増えた。屋上で昼飯を食い終えてゴロリと寝転び空を見上げていると、一緒にいたクリリンが「なあ悟空、知ってるか? ウワサになってる新しい先生の話」と話しかけてきた。
    クリリンっていうのは幼稚園からの付き合いの幼馴染だ。オラのことをよく知っていて、オラが「不良だ」とか言われるようになっても、ずっと離れずそばにいてくれた一番の親友だ。

    「新しい先生?」
    「うん。保体の先生。すげえ厳しいんだってさ。3年のヤムチャ先輩が言ってた」
    「ふーん……」

    それがどうしたというのだろう。全校でウワサになるほど厳しいのだろうか。たとえばゴリゴリのマッチョで腕っ節も強くて見た目もおっかねえオッサンとか?

    「ヤムチャ先輩が言うには、おっかねえけど、すげえスタイルが良くて美人だって」
    「美人? 女なのか?」
    「ちょっと気になるよな。オレたちのクラス、今日の6時間目が今学期の初めての授業だろ」

    体育なんて面倒くせえからサボってやろうと思っていたけど、俄然興味が湧いてきてしまった。べつに美人が好きってわけじゃないけど、学校中でウワサになるくらいだ。顔くらい見てみたい。
    そうこうしているうちにキンコーンと昼休みを終える予鈴が鳴る。「教室戻ろうぜ」と言うクリリンの声にムクリと身体を起こし、屋上を後にした。

    「やべえ、急がねえと」とクリリンは小走りになる。「オラ、トイレ寄っていくから先戻っていいよ」と言うと、クリリンは「早くしろよ! 次の授業、ナッパ先生だから遅れるとうるせえぞ」と言って先に教室に戻っていった。
    小便を終え、人の気配が消えた静かな廊下をポケットに手を突っ込んだままゆっくりと歩く。昼下がりの太陽は眩しくて暖かく、眠気を誘う。青い空を流れる白い雲を見ているとクアアと思わず欠伸が出る。5時間目、かったるいな……このまま帰っちまおうか。
    美人でスタイル抜群の体育教師ってのは気になるけど、なんかもうどうでもいいや。
    そう思ってもう一度欠伸をした、その時だった。

    「おい、そこのお前」

    後ろから呼びかけられて振り向く。するとそこにいたのは。

    「もう5時間目、始まってるぞ。早く教室に戻れ」

    オラより10cmは低いだろうか、小柄で細身な身体。でもピタリとした薄い白シャツの下の筋肉は盛り上がっていて、よく鍛えられているのがわかる。細く括れた腰、ジャージのズボンに運動靴を履いた姿。黒い髪はツンツンと逆立っている。切れ長の黒い瞳は吸い込まれそうな程に真っ黒で、真っ直ぐにオラを見つめていた。

    「……あんた、誰? 先生……だよな……?」
    「保護者に見えるか」
    「いや、若ぇし可愛い顔してっからさ。転校生かなって」
    「バカにしてるのか! お前は!」

    その人は舌打ちをしてオラをジロリと睨む。そして手にしていた黒いバインダーを振りかざす。そのまま殴られる……! と思いきや、オラの頭をポンと軽く撫でるように叩いた。オラはぱちぱちと目を瞬く。高校に入学して以来、教師までオラを遠巻きに見ていて、こんな風に触れてくる先生なんていなかったからだ。
    頭からどかされたバインダーの向こう側、その小柄な先生はオラの顔を見てニッと笑った。

    「金色なんかに染めやがって。校則違反だな」
    「…………」
    「お前、2年3組の孫悟空だろ。早く教室に戻れ」
    「…………」
    「せめてオレの授業には出ろ。6時間目だ」

    そう言って先生はオラの横を通り過ぎていく。その時フワリと漂ったいい匂いに、オラの目の中にはチカチカと星が散った。同時にバクバクと心臓が鳴り始める。
    なんだ、なんだ……!? 何十人もの不良を前にしても、こんな風に心臓が鳴ったことなんてなかったのに!

    「せ、先生!」
    「なんだ」
    「先生、名前なんていうんだ!? 今月入ってきた先生だろ!?」
    「……ベジータ。教師の顔と名前くらい覚えておけ」
    「ベ、ベジータ先生!! オラ、ベジータ先生が好きだ!!」

    気がつけばそう叫んでいて、自分の声を聞いてから告白してしまった事実に気づいた。
    何言ってんだオラ!? いや、でもこの胸の高鳴りは間違いなく恋だ。一目惚れだ。
    ベジータ先生は僅かに振り返り、肩越しにオラをジロリと睨む。その黒い瞳に見つめられるだけでキューンと胸が苦しくなって、思わず胸元のシャツをギュウと掴んだ。
    これが恋ってやつか! 本当に心臓が苦しくなるんだ。恋ってすげえ!

    「先生! オラ先生が好きだ! だから……っ」
    「生憎だが、不良にはキョーミないんでな」
    「…………は…………」
    「その金髪を染め直してから出直してこい」
    「…………」
    「あと、オレの授業には遅れるなよ」

    そう告げて、ベジータ先生は去っていく。告白して10秒でフラれてしまった。
    その後ろ姿を見送った後、昼下がりの太陽が燦々と射す廊下にオラはヘニャリとしゃがみ込む。
    人避けのために金に染めた髪を、クシャリと掴んだ。

    「学校中でウワサの……美人でスタイル抜群の……保健体育の先生……」
    「……ホントだった……」

    ヤムチャ先輩の言っていたことを思い出す。
    女じゃなかった。でも確かにとびきりの美人で、後ろ姿のキュッと上を向いた小尻が目に焼きつく程の、スタイル抜群の先生だった。
    オラは恋の痛みで苦しい胸を押さえながら、「は───…」と深い深い溜息をつくのだった。



    その後、6時間目。
    オラが誰よりも早く体操着に着替えて、クラスで一番に校庭に向かってクラスメイトの度肝を抜いたのは、言うまでもない。


    end.



    ※ちなみにこのサイヤン高校は男子校である
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