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    ogya_ru

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    ogya_ru

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    募集したイメソンリクでしたー!クリピのパッと咲いて散って灰に、強すぎてヤバすぎて結果これです。リクエストあざしたナイスセンス🔥

    パッと咲いて散ってhighに 面倒を押しつけられた。
     左馬刻はその事実に眉間に皴を寄せ、なだめるように煙草を喫いながら入り組んだ路地を歩く。蹴飛ばせば簡単に崩れてしまいそうな雑居ビルに挟まれた空は、夜に入る支度を整えた。
     あのシバンムシどもが。見つけたら二度と湧かねぇようにブチ殺す。ついでにクソうさぎもぶっ飛ばす。絶対だ。
     頭上の朱色の道を睨みつけ、ゴキゴキ首の骨を鳴らした。
     ――あなた、今日組の用事でイケブクロに行くと言っていましたよね。
     やたらと丁寧な口調に電話に出たのを後悔したが、銃兎は構わずに続けた。ヨコハマでヤクを捌いていた半グレ共を摘発したが肝心の頭は思いのほか勘がよく、数人を連れて逃げた。ただ警察の捜査を舐めてもらっては困る。ツテを頼りにイケブクロに潜伏していると、尻尾を捕まえたのは翌日である今日だ。
    「だから何だってんだよ」
    「時間を無駄にしないために協力してほしいんですよ。分かるでしょう? 火貂組若頭のあなたとっても、彼らは目障りな存在だと思いますが」
     言葉の端々に棘を感じる。こめかみや目の下をひくひくさせている、作った笑みが脳裡に浮かんだ。銃兎の言っていることは間違っていない。そりゃ左馬刻からしても半グレ共は邪魔だ。
    「お願いしますぐれぇ言えねぇのか」
    「くだらないこと言ってないでさっさとしてください。ぼさっとしてると逃げられますよ」
     それで通話は切れた。潜伏しているだろうエリアと、半グレを纏めているガキの写真が送られて、左馬刻はリダイヤルした。しかし銃兎は出なかった。
     そんな短い記憶は頭の中でループを続けて、左馬刻の怒りを加熱するのをやめない。
     今すぐに、相手が誰であろうと構わない。バチバチ音を立てる火花を業火へ変えて燃やし尽くしたい。そうじゃないと脳が溶けそうだ。口から煙をたっぷり吐いて短くなった煙草は汚らしい壁に投げつけた。
     面倒を押しつけられた。銃兎の舐めた態度が気に入らない。そうなる前から燃焼不良に苛まれていた。
     小さな火に腹を焦がされるなんて、不快以外のなんでもない。
     静かだった路地に遠くからの声が響いた。怒声。数人いる。次いでマイクの起動音。耳で捕らえた獲物に向かって左馬刻は足を速めた。気持ちが逸る。街中よりも一足早く夜になった路地で、赤い双眸が夏の日差しのようにギラギラ光った。迷路のような路地の深くへ潜り、口を開けていた廃病院の前で立ち止まる。
     ここだ。
     騒音が無かったとしても、きっと分かった。害虫の好む場所なんてお見通しだ。思う存分に暴れられると思うと銜えた煙草が旨くなり、形の整った唇は不穏に歪む。足を踏み入れるのに躊躇は当然なかった。
     だが、奥行きのある病院の中を歩むにつれ、左馬刻は笑みを消した。ひとり、またひとりと白目を剥いたガキが転がっている。ずいぶんでかいパン屑が、左馬刻の行先を示した。
     死んだ病院に、力任せの声が轟く。足元を見ていた目がカッと開いた。
     心音は走るのに脚は重しを引きずるように重たい。低い声は腹を殴るように響き、燻ぶりに息を吹きかける。左前方に見えたひび割れたガラス戸は、ふらついた男を受け止められず口を開けた。
     フィルターの焦げた煙草を指先から落とし、目を細めた左馬刻は静かに近づく。
     壁が朽ちて支柱が辛うじて天井を支える開けた場所で、一郎は十人ばかりに囲まれていた。
     ガキどものリリックに大した威力はない。程度の知れたガキ相手に一郎がやられる訳がない――そう思うのに険しい表情がそよ風のような不安を起こす。
    「何してんだあの馬鹿」
     思わず口をつく。
     こんな雑魚相手にどうして余裕の欠片も無いのか。
     声に焦りがある。言葉に戸惑いがある。それでも必死になって我武者羅に、皮膚と肉を引き裂いて心臓を投げつけるように一郎はマイクに声を通した。痛々しい。同情も通り越して反吐が出そうだった。
     支離滅裂。アンサーになってない。力任せにぶん殴っている。
    「馬鹿のくせに物分かり良すぎんだろ」
     こいつ、ぶっ飛ばす。
    「あんな声で呼ぶんじゃねぇっ」
     どんな声だっつーんだバァカ。
    「いまさら前みてぇに呼べっかよ!」
     つべこべ言わずに呼びゃいいんだ。
    「急に謝んなっ」
     知るかボケ。筋は通すもんだ。
    「忘れるって、どうやって――」
     最後のひとりが崩れ落ちた。叫んだ一郎も膝をついて肩で息をする。左馬刻の耳にまで響く息遣いは、きっと一郎の耳を溺れさせた。地面に手をついて大きな背中は苦しみ喘ぐように荒い呼吸に揺れている。きっと腹の中が焦げて堪らないだろう。
     それに気を取られているから一郎は気づかない。
     しぶとい小物がそれらしく、凶器を持ってにじり寄るのを。
     頭だけがいやに冷たくなるのを感じた。鼓膜は嵐の前の静けさみたいな静寂を捏造して、左馬刻は邪魔者にまっすぐ向かう。真後ろに立ってマイクを起動すると、一郎とガキが一緒に振り返った。
    「すっこんでろ娑婆増が」
     しっかり握ったマイクスタンドをフルスイングして、ガキの頭をかっ飛ばした。放物線を描く頭を見て、一郎は唖然とした。目に映るすべての時間がスローモーションで、ぽかりと開く口が穴みたいだった。頭と地面がぶつかり合って、時間は元通りになった。
    「おま……何してんだよ」
     尻すぼみになる声に視線を落とした。
    「こいつがマイクじゃねぇもん使うから、俺様もそうしたまでだ」
     当たり前のことを言うと一郎は眉を顰めた。パチパチ瞬きするのがうざったい。
    「いや、そうじゃなくて」
    「テメェこそ何してんだ」
    「何って、別に――」
     閉口して一郎は左右違う色の視線を泳がせた。「関係ねえだろ」と苦々しく呟いた。忘れようと言った時と同じだ。目を見ない。左馬刻は舌打ちした。これだけ分かりやすいくせに、口を閉じるなんて馬鹿馬鹿しいと分からないのだろうか。意地を張ってかわいいと思えるのは十七までだ。
    「おいコラ」
     持ち上がった顔に戸惑いがへばりついている。左馬刻は一瞬の迷いもなく、思いっきりぶん殴った。火花が拳に飛び火する。
    「ってーな! いきなり何すんだクソヤクザ!」
     激昂に打ち上げられた一郎は勢いよく立ち上がり視線がピタッと合う。
    「こっちが訊いてんだよ。何してんだって。耳詰まってんのか?」
    「だからお前に関係――」
    「関係ねえ奴に喚いてんのはテメェだろ」
     見開いた両目の奥の方が陽炎のように揺らいでいる。今にも噴き出しそうな灼熱を、この期に及んで鎮めようとする愚かさに「偽善者」という言葉が浮かんだ。そして沈む。
    「言いてえことがあんなら聞いてやる。言ってみろ」
     また外された目にカッとなってもう一度、今度は体重を乗せて殴った。業火では生ぬるい。もっと派手に、それこそ花火みたいに。
     左頬に硬いものが叩きつけられた。
     胸倉が乱暴に掴まれる。
     殴られても左馬刻は凪いだ海のように感情が揺れなかった。怒りは深いところに沈んで、けれどもいつでも水面を突き破ることができる。静かに目をやった。歪んだ目元に溜息ついた。こいつは思ったよりも強情だ。いや、昔からか?
    「お前どうしてぇんだよ」
     胸倉を掴む手は震えていた。唇を噛んで一郎は俯いた。黒い頭が胸元にぶつかったと同時に「知るかよ」と微かに聞こえた。何故だかひどく耳に馴染むセリフだとふと思い、フッと網膜を染めた記憶に自嘲した。
     あと何発殴ったら、こいつの導火線に火がつけられるだろうか。やってみなければ分からなかった。
    「おい一郎、歯ぁ食い縛れや」
     近づくサイレンの音は左馬刻の背中を突き飛ばす。苦悶に歪む双眸に同情や罪悪感のたぐいは湧いてこない。やるべきことをやるだけで、やはり筋は通さなければならないものだ。手抜かりはしない。俺は間違ってない。

     再生の前に壊すのが先だわな。

     十七の影が濃い、一郎を見据えて左馬刻は振りかぶった。身体の中でドン、と音がした。花火が打ち上がった時の振動が胸を熱くする。
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