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    凜太(りんた)

    @Rintango99

    文字書きです。七マリ書いてます。
    桜井兄弟近辺(主にコウちゃん)のとても短い話を上げ始めました。
    よろしくお願いします。

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    凜太(りんた)

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    一応、七マリです。
    出会った当初の七マリさん。マリィさんは名無し子さん。

    心の底から意味が分からない短い話。
    単にマリィさんにもぐもぐでポロポロして欲しかっただけの話。

    もぐもぐ。 最近Nanaである事がバレて、何かにつけ話すようになってきた同級生が中庭に座っていた。
     肉まんかあんまんか……一つの中華まんを両手に持って膝を立てて食べているのが遠くから分かった。
     近づくにつれて、彼女の顔がはっきり見えてきた。
     そして、七ツ森はぎょっとする。
     彼女が泣いているのだ。中華まんをはむはむとしながら。
     七ツ森の足取りが遅くなる。校舎に戻るには彼女の前を通らなくてはいけない。
     つまり、素通りするか声をかけるかどちらかになる。
     彼女の間近に来て、七ツ森は横目で彼女を見やる。
     ずずっと鼻をすすって、彼女は中華まんを見ていた。
     ──気づいてないか?
     少し面倒に感じている自分と、何となくほっとけない自分。
     どっちを優先するかと思ったけれど、彼女が気づいていないのなら素通りでもいいかもしれない。
     そうして、足早に通り過ぎて彼女に背中を向けた時だった。
    「……七ツ森くん」
     七ツ森がびくっとして立ち止まる。恐々と振り返ると彼女と目が合う。
     ──気づかれてたし。
    「……」
    「……」
     七ツ森はため息をついて彼女の方へと近寄った。
     沈黙。
    「あんた、何で泣いてんの」
    「……肉まんが冷めちゃって」
    「え?」
     七ツ森の片眉が上げられる。怪訝な表情を隠しはしない。
    「小説、読んでたの」
     そう言って彼女は自分の傍らに置いてある文庫本にちらりと視線を向けて、七ツ森を見てから再び肉まんに視線を落とす。
    「……はぁ」
     七ツ森の口から曖昧な音が出てくる。
    「そしたら、肉まん冷めちゃって」
     七ツ森は思わず天を仰ぐ。彼女に出会ってからもう癖みたいになっている仕草だった。
     これを不思議ちゃんというのか。でも、普段はそんな事はない。天然なところも多々あるみたいだけれど、別に不思議ちゃんというほど理解不能ではない気がする。……と思っていたけれど、出会って間もないのだ、実はそんな事もないのかもしれない。
     このやり取りを冷静に見る限り、彼女はやっぱり不思議系なのかもしれないと七ツ森は彼女に視線を戻した。
    「で?冷めて悲しくなったのか」
    「……え?なんで?」
     意味が分からないというように瞬く彼女。その拍子に涙がぽたぽたと彼女の手を濡らす。
    「……」
     ──これは、不思議系決定かもしれない。もう、意味わかんないし。
    「小説でね、出てくる優しい子がね、死んじゃったの……それで、元々貧乏でね、ご飯もろくに食べられなくて……」
     彼女の両目からボロボロと涙が溢れてくる。
    「あー、なる……」
     七ツ森はある程度察した。
     なぜ、それを最初から言わないのか。
     肉まんが冷めたのとどう関係があるのか。
     その小説の登場人物が食べられないのに、自分がこんなものを食べちゃっていいのだろうかと思うならまだわかる。
    「で、冷めた肉まん食べたのか」
    「……読む前に食べようと思ったんだけど、続きが気になって読んじゃったら」
    「止まんなくなったってコト」
    「うん……でもね、冷めた肉まんはあまりおいしくないなって思ったの。そしたら、すごい罪悪感が出てきてね、冷めた肉まんだって食べたら死ななかったかもしれないのに」
     七ツ森がポカンとする。
     ゆっくり瞬いて、彼女を見やる。
     もしかしたら不思議系ではないかもしれないが、七ツ森にとっては少なくとも意味が分からない生き物ではあるかもしれない。
     泣きながらもぐもぐと冷めた肉まんを頬張る彼女。
     それを立ったまま見下ろす七ツ森。
     それはとても奇妙な絵面で、遠巻きに二人を見ている生徒もいる。
    「あんた、シアワセだな」
     嫌味のつもりはなかったけれど、もしかしたら嫌味に取られるかもしれないと、言ってから七ツ森は気づく。
     けれど、彼女は大きな目を瞠って肉まんから口を離して七ツ森を見上げた。
     そして、すくっと立ち上がって七ツ森の前に立つ。
    「な、何」
     突然の彼女の動きに、驚いたように少しだけ後ろに身を引いた。
    「……わたし、幸せ者だよね」
    「……え?」
    「うん、わたし、ちゃんとご飯食べて勉強して、こうやってお友だちとお話しできて」
     そう言いながら、彼女は片手に持っている肉まんの残りを口に放り込んだ。
     一口分くらいとは言え、咀嚼するのにそれなりにかかる。
     七ツ森は、もう訳が分からないというようにただ黙って彼女を見下ろしていた。
     その間、彼女は肉まんの包み紙をくしゃくしゃ丸め込んで、ポケットに入れ、涙をハンカチで拭いている。そして──
    「ありがとう!七ツ森くん」
    「え……あ、いや、……まぁ」
    「ふふ、七ツ森くん、優しいね。それじゃあ、またね」
     そう微笑んで彼女は、小説を芝生から拾い上げて立ち去っていく。
    「…………は?」
     残された七ツ森はただただ彼女の小さくなっていく背中を見送っていた。
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    Replies from the creator

    凜太(りんた)

    DOODLE人を好きになる経緯、色々。
    これはそのひとつの形。
    バ〇オとかのマップに落ちてる日記や手記、メモとかそれ系な感じのもの。それを拾って読んでいく感覚でお楽しみ頂ければ。七氏の心情の変化を感じてみてください。

    出会った頃の七氏の冷たさ、嫌いじゃないぜ。
    卒業前、普通から友好あたりまで。
    最後の「???」はオマケのエクストラステージ(?)
    七ツ森氏視点、マリィさんは元気いっぱい名無し子さん。
    移ろいと確信。SCENE1

    「な、な、つ、も、り、くーん!!」
     どこからともなく自分を呼ぶ声がする。それも、遠くから。
     マジで勘弁して……。
    「な、な、つ……あ!おーい!」
     校舎を見上げると、窓の一つから手を振る人物が目に入る。
     俺が見上げていると、彼女は笑顔で大きく手を振っている。
     トテモゲンキデスネ……。目立つようなコトをしないでもらいたいんですが?
     俺は手を振り返さずに、無視するコトにした。


    SCENE2

    「七ツ森くん!今日もかっこいいね」
    「……それはドーモ」
    「そういえば、昨日ね、七ツ森くんがはばチャで……」
    「待て」
    「え?……あっ」
     彼女は慌てて自分の口を押さえる。
     時々ポロッと出てくるから困る。バレたらどうすんだ。ホント、マジで勘弁して。最近、俺をNanaって呼ばなくなったと思ったら今度はこうだよ、勘弁してくれ……。
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