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    #いちごさくら

     ●

    「〇〇〇〇ナ! 〇〇〇〇ヤ、セヤロ? 〇〇〇〇ネン、アンナ、オレ〇〇〜〜――」

     サクラが日本語を喋っている。メッセージアプリの無料通話で、日本のクラスメイトと。ジェラードの家のソファに腰かけ、脚まで偉そうに組んで背もたれに片腕を預けて、文字通りの『我が物』だ。
     聞こえてくるのは、日本語の独特のイントネーション、少し高く聞こえるトーン、リズミカルで抑揚が大きく、弾むような喋り方、部分的に分かる単語。――ジェラードがじっと見る先には、サクラの後頭部がある。黒檀の髪と肌の色のコントラスト。なめらかな曲線を描く耳の形。
    「なはははは ホンデナ〇〇〇〇――」
     ご機嫌な様子を眺めつつ、ふっと、ジェラードはサクラの後頭部の刈り上がった部分に手を触れた。じょり、と短髪のしっかりした心地が掌に返ってくる。
    「ウン、ウン、セヤナ、〇〇〇〇――」
     ちょっと振り返るサクラの目が、「待ってろもう少しで終わるから」を示している。「ん」とジェラードは頷きを返すものの、撫でる手はそのままだった。

     つまるところ暇で――かまって欲しいのだ。

    「〇〇〇〇ナ、〇〇――」
     サクラはまだ電話をしている。ジェラードには一秒がやけに長く感じて……しばらく後頭部を撫でていたものの、そこに額を寄せた。サクラがよくスリスリと額を寄せて甘えてくるから、その仕草が知らぬ間にうつっていた。
     じょりじょりとした心地が、ジェラードの額の薄い皮膚をくすぐる。高い鼻を寄せれば、活発な少年の日向のような香りがした。大人の男とは明らかに違うにおいだ。「あはは」とサクラが笑うと、その振動がジェラードにも伝わった。
     そんな心地に閉じていた目を、ふっと開くと。瑞々しく温かいうなじがすぐ目の前に見えた。筋肉のある、しなやかな、しかしどこか少年らしさがかすかに残った、誘うような――思わず――「美味そうに見えた」から――
    「んっ、」
     うなじをジェラードに噛まれて、サクラの通話が一瞬詰まった。
    「あーー……ウン、〇〇〇〇、」
     通話相手に「なんでもない」と言わんばかりに会話を続けているが、サクラのうなじはやわやわと男に噛まれ食まれていた。時折、びく、と肩や手が震える。
    「っ…… ジェリー、アホこら、 あーナンデモナイ、ゴメンゴメン、ナンヤッタッケ――」
     サクラは声が変なことにならないよう必死に我慢している。堪えているから耳や首がほんのり紅潮している。それが男の心を唆した。だから少しだけ――強めに首筋を噛んだのだ。
    「ッ!」
     少年は思わずスマホを自分の顔からグッと離した。いつも情事の時、絶頂の度、『それぐらい』の力で首筋を噛まれているから、もう『それぐらい』で急所を噛まれるのが『きもちいいもの』だと身体が認識するようになっていた。
    「あっ、ぅ、ジェラード、っだめ、」
     首後ろを噛まれた子猫のように大人しい、抵抗をしない。ただサクラはぞくぞくと身を竦ませている。更に一ミリ、歯列が首筋に沈んで、少年はかほそく啼いた。
     と。『オーイ? サクラ? モシモーシ』――少し離れたスマホから、サクラのクラスメイトの声がして。
    「っ……ゴメンボチボチキルワ! ホナマタガッコウデ、ウンアリガト、ウン! ホナノ!」
     サクラは慌てて取り繕って、通話を切って。
    「ジェリー! おまえっ――」
     振り返った、瞬間だった。顎を掴んだ彼の口付けがそれ以上の言葉を塞ぐ。
    「ッぅ……ん、ンン゙〜〜……」
     サクラはちょっと抗議の唸りを漏らすものの――口付けを返しながら、ジェラードに腕を回して甘えはじめた。
     スリープ状態のスマホの真っ黒なディスプレイが、接吻の音を背景に、天井の景色を映している。平和な午後だった。


    『了』
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