Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    Xpekeponpon

    @Xpekeponpon

    @Xpekeponpon
    主にTRPG関連の絵をぶっこむ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍀 🈁 👉 🌍
    POIPOI 156

    Xpekeponpon

    ☆quiet follow

    正月🍓🌸 ネタお借りしました

    #いちごさくら

    新年

    「ジェリー、ジェリー、起きて起きて起きて」
     ゆさゆさこねこね。いつものようにサクラが身体を揺さぶってくる。
    「起きて〜〜ねえ〜〜〜」
     鼻にかかった甘えた声。頬にすりすり頬擦りして、ちゅうちゅう食んで吸ってくる感触。
    「ん゙……今何時……」
     起こされたジェラードは薄目を開けた。安い狭い古い日本のアパート、安い薄い布団から見えた世界は、ほぼ暗闇で。
    「夜じゃねえか……」
    「6時半」
    「だあ〜……」
     ド早朝すぎる。なんでうちのこはこんな朝早いし朝強いんだ。つーか寒い。内心で色んな文句を並べ、ジェラードは布団を被り直す。サクラと体温を分かち合わないと眠れないせんべい布団。なのに当のサクラは、ジェラードが被った布団をめくってくる。
    「初詣行こうやぁ〜」
    「ハツモウデってなんだよ、ねみぃしさみぃよ……」
    「初日の出も見たい〜」
    「ハツヒノデってなんだよ……」
    「起きて? ねえ〜……」
    「んん゙〜〜……」
    「折角日本に来てんから、日本式のニューイヤーしようやぁ、ジェリぃ〜〜〜」
    「っ…… たく、しょ〜がね〜〜〜な〜〜〜〜も〜〜〜〜」

     で。

     くっそ寒い部屋の中で拷問のように着替えをして。
    「こっちこっち」とサクラに手を引かれるまま、ジェラードは1月1日の日本の町を歩いた。ぶっちゃけ、眠くて全然覚えていない。気付いたら高台の公園に居た。
    「さっ……みいよ……」
     地面には霜が降りているし、吐く息は白いし。上着のポケットに両手を突っ込み、ジェラードは肩を竦ませる。
    「ほら! 東の方、明るなってきたで!」
     一方のサクラは元気いっぱいで、寒気に頬を赤くして、笑って、あったかい息を吐いて、東の空を指さした。黒は青に、青は橙に、橙は赤に、空の色が移り変わる。街の景色と山の向こう、太陽が昇らんとしている。
    「もうじきやで!」
    「日の出の何がそんなに珍しいんだよ……」
     年末を祝う文化のジェラードにとって、年始を祝うサクラたち日本人の文化的価値観はよく分からない。「アリガタイモン、エンギエエモン」とサクラは言うが、日本語だから分からない。「Precious & lucky」と翻訳されたが、それでもいまいちピンとこない。日の出なんていつ見ても同じでは?
    (そういや国旗が太陽だし……太陽信仰でもしてんのか日本人は……?)
     寒い眠いの中でそんな事を考えている。ぶっちゃけ早く帰りたい。だが――
    「あ! 来た来た来た! わあ〜〜! すっげ〜〜〜〜! ねぇ見た 見てる 起きてる めっちゃ綺麗〜〜〜〜」
     こんなド早朝に、隣でずっとはしゃいで日の出を指さしているサクラを――日の出を背景に、その輪郭を黄金色にキラキラさせているその子を見ていると。……日の出を見に来たって言うのに、ジェラードの方ばかり見ている恋人を見ていると。
     まあ、早起きしてよかったかもな、なんて、ジェラードは思うのだ。

     この後、二人は近所の神社へ初詣へ行く。
     信心薄いサクラがそんなことをするなんて意外だとジェラードが伝えたら、「折角日本に来てるんやから、日本の正月てのを見せたろと思てん」と彼は答えた。普段はこんなことしない、と。
     その言葉通り、他の人間が賽銭を投げ込む中、ドケチのサクラはビタ一文投げ寄越すことはなかった。そのくせ、神には「大金持ちになりたい」なんて祈ったとか。


    『了』
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works