まだ足りないん、という声とともに差し出された手には綺麗にラッピングされたブラウニーが包まれていて思わず「え」と声が出た。恐らく手作りだろう、それを差し出した当人は「受け取れよ」と俺の中途半端に伸びた手に軽く置く。恋人になってから初めて迎えるバレンタインに正直期待してたのは勿論そうなんだけど、
「お前…これもしかして作ったの?」
「ん?うん。あ、手作り苦手だった?それなら全然捨てていいから」
事前に聞けば良かったな、とユーゴは軽く笑い俺の手に置かれたブラウニーに手を伸ばす。その勘違いを訂正する間も惜しくてブラウニーを胸で抱えた。
「おい、」
「違う、そうじゃなくて。手作りめっちゃ嬉しい。ありがと」
「あぁ、どういたしまして?」
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